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嫌な予感……

俺たちは引き続きS級ダンジョンを攻略中であった。

そして今、俺たちは各階層の部屋をくまなく探索したところ、金銀財宝を見つけてそれらを回収したところだ。


ちなみに金銀財宝は、リリーの持つスキル≪アイテムボックス≫に収納されている。

おかげで辛い荷物持ちはせずに済んだ。


お宝で懐がウハウハに潤う。

こういう場合、普通なら喜ぶところなはず。

だが、リリーはどこか浮かない顔を浮かべている。


「どうしたんだよリリー? 浮かない顔して」


「ん? ああ、そうね。まだ見つけられてないなーって思ってね」


「何を?」


「スキルよ。このダンジョンにあるはずなのよ。レアリティの高いスキルがね」


そっか、リリーはなんちゃってスキルコレクターなんだもんな。

ここへきた目的も、自分の持っていないスキルを探してのことだったのか。


「ふーん。あ、そういえばさ。なんでリリーは俺が≪威圧≫スキルを持ってることが分かったんだ?」


「別に分かってた訳じゃないわよ」


「でも、確かほら。俺と出会った時『アンタ面白そうなスキル持ってるみたいね』って言ってただろ?」


「ああ、そういうことね」


リリーはそう言うと、何やらステータス画面を開き始めた。


「この≪スキルレーダー≫っていうスキルのおかげよ」


俺はリリーのステータス画面を覗いてみる。

その画面にはGPSの地図のようなものが写っていた

そしてそこに赤い点の模様がまばらに点在していた。


なるほど。


これが某作品でいうところの、なんとかレーダーって訳だな。


「つまりこのスキルのおかげで、俺がスキルを持っていたのが分かったと?」


「そそ。でもこのスキルの欠点は、そのスキルがどんなスキルなのかの具体的な概要が分からないことなの。分かることといえば、そのスキルのおおざっぱな位置とレアリティだけ。だから、ヒビトのスキルが固有スキルだってことまではわからなくて、結局交換出来ずに無駄足に終わったってことなの」


「そっか。なんかごめんな」


「いえ、別に良いのよ。こういうことはよくあることだしね。とはいえレアリティがトリプルSのスキルがゲット出来なかったのは、残念ではあるけどね……」


「マジか。俺のスキルそんなにレアリティが高いのか」


「まあね。そのスキル上手く使いなさいよヒビト」


「お、おう……そうだな」


なんだか急に肩の荷が重く感じる。

そんな大層なスキルを俺なんかが使ってても良いんだろうか?


それに上手く使うといったって、このあまりにも極端すぎるスキルを使いこなすのは至難の業。

どうしたもんかな……。


俺たちがしばらく歩いていると、大きな扉のある部屋の前に来ていた。


リリーはそこでピタッと足を止めると、「ふーむ。アタシの長年のスキルコレクターとしての勘が言ってるわ。どうやらここに目当てのスキルがあるようね」と呟いた。


「なあ、またさっきみたいにトラップがあったりしないよな?」


「大丈夫よ。≪トラップ感知≫スキルには何も反応がないから」


「なら良かった」


俺たちは、恐る恐るその部屋に入ってみた。


中はだだっ広く、中央には腰あたりくらいまでの高さの四角い石碑があった。


さらにその石碑には、光る画面らしきものが写っていた。


「ビンゴ! これよこれよ、アタシが探し求めていたものは!」


そう言うなり、リリーは慣れた手つきで画面を操作する。

ピッピという音を立てながら。


次にリリーは自身のステータス画面を開く。


多分だが、一連のこれらの動作によって、リリーはスキルコードを取得しているのであろう。


おほっほー! 

とか、

ちょ、これマジヤバいんですけど! 

とかテンション高めな声を出している。


そうしてリリーは、一通り作業を終わらせると「お待たせ―」と言ってきた。


「なあ、これって一体なんなんだ?」


俺は石碑の方を指さしながら聞く。


「これはね、『スキルパネル』っていうものでね、よくダンジョンとかにあるの。これには強力なスキルだったり、凄くレアなスキルのコードが内臓されていることが多いわ。

つまりこれはスキルコード保管庫ってところかしら」


なるほど。

さしずめスキルコードを保存しているハードディスクといったところか。

リリーはこれを探していたと。


「なるほど。概ね分かった。で、今回はそのスキルパネルでどんなスキルが手に入ったんだ?」


「ふっふっふー。それがねー、今回は≪テレポート≫スキルが手に入ったのよー! しかもレアリティSのスキルよ! さすがS級のダンジョンなだけあるわー」


「それって名前からしてアレか? 瞬間移動的なのが出来るやつか? すげえじゃん」


「そうなのよ。このスキルを使えば、移動が楽になって今より更に効率的にスキルを集められるし、スキルコレクターとしてはこの上のない悦びだわー!」


ハアハアと、リリーは興奮させている。


お、おう……。

それは良かったね。

なにか見てはいけないものを見てしまった気がするが。


そんなになるまで嬉しいもんなのか。

さすがは『スキルコレクター』様といったところなのだろう……。

俺とリリーの温度差が遠く感じられた。


「なあ、俺にもそこの石碑からスキルをゲット出来たりするのか?」


「ええ、可能よ。でもねスキルの習得はちゃんと考えた方が良いわよ」


「どうしてだ?」


「人が一度に習得出来るスキルの数は、三つまでと決まっているからよ。」


「えっ、それマジか! それは確かに考えものだな……。ん? でもリリーはスキルコレクターなんだよな? ってことはたくさんスキルを持ってるってことだろ。なんでそんなこと出来るんだ?」


「ああ、アタシの場合は特殊でね。文字通り≪スキルコレクター≫っていうスキルのおかげで、際限なくスキルの習得が出来るってわけなの」 


「なんかややこしいが。つまり、スキルをたくさん習得することが出来るスキルってことか?」


「そゆこと」


「それってめっちゃすげえことじゃん!」


俺のその賞賛の言葉とは裏腹に、リリーは顔を俯かせてこう言った。


「全然。そんな凄いことなんかじゃないわよ……」


その言葉にはそれ以上立ち入っていけないような。

そんな暗い雰囲気を纏っていた。


「ま、まあ。何はともあれ目当てのスキルは手に入ったことだし、そろそろ帰らないか? 腹も減ったし、晩飯の時間ってことで」


「そうね。そうするとしますかー。今日の夜はなに食べようかなー!」


良かった。

元の明るいリリーに戻ったようだ。


「でも帰りはどうする? リリーはテレポートで帰るつもりだろ? 俺はそのスキル使えないしなあ……」


「ああ、それならアタシとパーティーを組みましょう。そうすれば同じパーティーメンバーに、アタシのスキルの効果を一時的に付与することが出来るから。それでアタシと一緒にテレポートしましょ」


「そんなこと出来るんだ。なんか至れり尽くせりって感じだな」


「そうね。アタシも、ヒビトのおかげで安全にダンジョンを探索出来たしね」


そういう彼女の顔は微かに笑っていた。


俺たちは互いにステータス画面を開く。

そうしてパーティーになるための操作をする。


一通り終わらせると「それじゃ、とりあえず近くの町に行きましょう」と、リリーが言う。


「おう、頼むぜ」


「それじゃ、レッツテレポート!」


彼女がステータス画面を操作しながら、そう叫ぶ。


すると、辺りが光に包まれる。

次の瞬間には町の景色へと変わっていた。



「おお! 本当にテレポートした……」


そう言い終わると同時。

町中から「ギャー!」とか「キャー」という、聞きなれた声が聞こえてきた。


リリーといることですっかり忘れてしまっていたのだが……。

普通の人からしたら、俺のことは当然恐怖の対象でしかない。


「あはは。アンタ本当に怖がられてるみたいね」


そうなんです。

本当悲しいことに。


「しょうがないわね。とりあえず一旦ここから離れましょう」


「そうするしかないな」



――俺たちは町を出てすぐの平野に向かった。


その平野の適当な場所で野宿をすることとなった。



そこで、苦労して起こした焚火をぼーっと眺めていると、「はいコレ」と、横から手が差し出された。


見れば、その手には肉じゃがに似た料理があった。


「おお、うまそう! サンキュ、リリー」


俺はその料理を受け取ると、ムシャムシャとあっという間にたいらげた。


「ふうー美味かった」


横でみていたリリーが「ふふふ。そう言って貰えると、作り甲斐があるってもんだわ」と。


「これリリーが作ったのかよ」


「ええ、そうよ。こう見えて料理は得意なんだから。まあ、料理スキルのおかげなんですけどね」


この人、神や。


ていうかもうスキルコレクターなんて辞めて、普通に主婦とかやれば良いじゃね?


家庭的な奥さんになりそう。

おまけに美少女の。


うむ。

想像すると悪くない。


「ぷっ! さっきのヒビトの怖がられようったら思い出すだけでもう……ぷふふ。まるで魔王さながらね」


「笑うなよ。俺だって好きで怖がられてるわけじゃないんだから」


「ごめんごめん。つい可笑しくってさ……ん? 魔王……? はっ、そうだわ!」


「どうしたリリー?」


「良いこと思い付いちゃったぞ、と」


彼女は見覚えのある、ニヤリとした笑みを浮かべたのだった。


嫌な予感しかない……。

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