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新しいスキルを覚えたが……

「なあ、本当に大丈夫なのかよ? ダンジョンって絶対危ないところだろ?」


俺のその言葉に、あっけらかんとしたふうにリリーがこう言う。


「んー? あー、はいはいそうね。そりゃ、危ないところに決まってるでしょうよ」


なんかノリがすげえ軽いのだが。

コイツ……もしかしてふざけてるんじゃないだろうか。


リリーは、さもありなんにこう言った。


「ま、普通なら危ないところでしょうね……」


……。

まあ、いいや。

リリーにはきっと何か考えがあるんだろう。



――俺たち二人は今、ダンジョンに来ている。


このダンジョンはS級ダンジョンといって、そんじょそこらの冒険者ではとてもじゃないが危険すぎるところだ。

と、リリーが言っていた。

凶悪なモンスターがうじゃうじゃいるからだとのこと。


なんでそんなところに来てしまったんだろう……。

何も起きなければ良いが。

我ながら先が思いやられる。


暗がりのダンジョン内の道を進み、その先の階段を俺たちは降りて進んでいく。

松明の明かりを頼りにさらに先を急ぐ。


すると、リリーが嬉しそうにこう言った。


「いやー、やっぱりアタシの思ったとうりだったわー! 順調にダンジョンの下層まで進んでるわー」


「言われてみれば確かに。今のところモンスターとかに襲われたりしてないな」


「そりゃそうでしょうよ。アンタのスキル≪威圧≫のおかげで、この辺のモンスターはアタシたちにビビッて危害は加えられないわよ」


「リリー、お前……そういうことだったのかよ。どうりで無警戒にスタスタと先を行ってたわけだ」


「そういうこと」


俺はダンジョン内を見回してみた。

すると、暗がりから遠巻きにモンスターの目と思われるものが、ギロッと光って見えた。

モンスターたちはパっと見、凶悪そうでヤバそうな雰囲気を放っていた。

だがその目は心なしか怯えているようにも見える。



なるほど。

つまり、俺たちがここまで何事もなくダンジョンを探索出来ているのも、俺の持つスキル《威圧》のおかげってわけなのだ。

これがなければ今頃俺たちは、モンスターの胃袋の中に入っていたに違いない。


このとんでもスキルにこんな使い方があったとは。

考えたもんだな。

なんとかとハサミは使いようってわけだ。


「アタシだけじゃ、このダンジョンを進むのは危険すぎて出来なかったわ。普通ならモンスターに襲われるところなのに。今はこうしてモンスターに襲われたりしないから、あとはトラップだけに集中すればいいし。時短になるから効率的にダンジョンを探索出来るって寸法よ。これもアンタのスキルのおかげよ、ヒビト」


「お、おう。役に立てならよかった――」


――二人でそうしゃべりながら道を進んでいた、その時。

リリーの足元からカチっという音が鳴り、その音のした方を見るとボタンがあった。


あ。

俺は嫌な予感に襲われた。


「あのー、リリーさん……もしかしてそのボタンってトラップを作動させるやつだったりしませんか?」


「あら、奇遇ねヒビト……アタシも同じこと思ってたところよ……」



どこからかゴー、という大きな音が鳴り響く。

どうやら傾斜になっているらしい前方から、巨大な球体が現れ、俺たちの方にそれが転がり落ちてくる。


「言ったそばからこれかよー!」


「とにかく走って逃げるわよヒビト!」


俺たちは巨大な球体を背に、一心不乱に走り逃げた。


死ぬ死ぬ死ぬ!


とにかくめちゃくちゃ走った。


すると前方に、下水道のようなものが見えてきた。


しめた!


リリーも俺と同じことを考えたのだろう。

下水道に出たところの入口横にあった脇道に、俺たちは走って避ける。

俺たちの後を追って転がってきた球体は、真っすぐに進み、下水道の水にサバーンと落ちていった。


ふうー、なんとか躱すことが出来た。


「いやー、危なかったわねー」


「誰のせいでこうなったと思ってるんだ!」


「あははー、めんごめんご。ドンマイドンマイ」


コイツ……一発ぶん殴ってやりたい。



「あ! そうだったそうだった。アタシ、≪トラップ感知≫スキル発動しとくのすっかり忘れてたー」


そう言うとリリーは、自身のステータス画面を開いて画面を操作する。


そうして「≪トラップ感知≫スキルを発動したから、これでもうトラップには安心よ!」と。


何事もなかったかのように親指を立て、リリーはグッジョブポーズを取る。


「そういうのは最初から使っとけよ!!!」


「てへっ」リリーはわざとらしく舌を出す。



俺はこの時思った。

この先、リリーと一緒にいても果たして大丈夫なのだろうか、

と。


「さあさあ、じゃんじゃんダンジョン攻略をしていくわよー!」


そう言うリリーは、呑気な足取りでどこかへ歩いていくのだった。



はあ、先が思いやられる……。


俺も先へ歩こうとした矢先のこと。

ピコンという音が鳴り、スタータス画面が勝手に開いた。


「なんだ急に?」


ステータス画面を覗くと「新しく習得したスキルがあります」の文字が目に入った。


「なあ、リリーちょっと待ってくれ」


「ん? どったの?」


「いやそれがさ、なんか新しいスキルを覚えたみたいなんだよ」


「へえ、どんなの?」


そう言われて俺は、ステータス画面のスキルの欄に目を通した。

スキル≪俊足≫の文字がそこにあった。


「≪俊足≫ってスキルみたいだ」


「初めて聞くわね」


「そうなのか」


「効果は?」


≪俊足≫の文字を押して、スキルの概要を見てみる。


――ユニークスキルに分類。走るスピードが上がる。常時発動。


とのこと。

いやにざっくりな説明だな、オイ。


「ユニークスキルらしい。んで走るスピードが上がるみたいだ」


「へえ、そうなの」


「なあ、なんで急にスキルを覚えたんだ?」


「ああ、稀に何かの拍子にスキルを覚えることがあるのよ。今だったら多分、罠から走って逃げたからでしょうね」


「なるほどな。でも、それならリリーも覚えるはずだよな? 一緒に走ったわけだし。なんで覚えないんだ?」


「その人によって覚えられるスキルの適正が違うからよ。スキルって要はその人の才能だったり個性だったりが≪スキル≫っていう形で具現化されたものなのよ。で、稀に発芽したりするものが≪ユニークスキル≫ってわけ。この説明でオケ?」


「おっけ。大体分かった。そういえば他にスキルを入手する方法って、スキルを交換するだけなのか?」


「基本的にはそう。ちなみに交換する場合、スキル同士が同等の価値になるようにしなきゃダメなの。例えばユニークスキルだったらユニークスキル同士でなきゃだめ。でも普通のスキルを交換するのに必要なのは、スキルじゃなくも金銭とかでも良いの。片方はスキルで片方はそれと同等の価値のお金とか食べ物でも良いし。なんならタダで交換できなくもないけど、まあする人はいないわね。誰も損をしたくないわけだし」


「なるほどな。了解したぜ」


この世界のことが少しづつだが分かってきた。

ちょっと安心。


この先もこの世界で生きていくなら、こういうことは知っておいたほうが良いだろう。


話しが終わったところで、俺たちはダンジョン進んでいく。


はてさて、この新しく習得したスキル≪俊足≫をどう使ったもんかなと考えながら……。

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