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少女との出会い

「え、あの、俺が怖くないんですか?」


目の前に立つ少女に率直な疑問を投げかける。


「はあ? 怖い? 別に怖いわけないでしょ」


あっけらかんとしたふうに、少女はそう言い放つ。


ウソ、俺のこと怖くないの。

いや、そんなまさか。


「なんか禍々しい感じのオーラとか、怖いなって思うようなもの、俺から出てたりするの見えたりしません?」


再度確認するように聞いてみた。


「ん? 何言ってるのかよく分からないけど、アンタからは何も感じないわよ。むしろ、人畜無害そうな狸顔の男にしか私には見えないわよ」


さっきからずっとため口だし、途中何か悪口を言っていた気がするが、今はよしとしよう。


どういう訳かこの少女は俺が怖くないらしい。

こうして普通に俺と話しが出来てるのが、その証拠だろう。



今はそれより。


「この世界で初めて人とまともに話せたー!」感極まった俺はガッツポーズを上げた。


嬉しさのあまりやったーやったーと、喜びを身体で現わす。


「うーわ、何コイツちょーキモいんですけど。『この世界で初めて人と話せたー』とか言ってんの何? ボッチなの? 今まで誰とも関われなかったコミュ症人生とかだったの?」


辛辣な眼差しを向けながら少女は罵声を浴びせてくる。


いや、そういう意味じゃねえよ。

正しくは、この世界に転移して来て初めて人と話しが出来たって意味だから。

決して友達のいない寂しい人生を送ってきたわけじゃないんだからね!

友達ならもといた世界でもちゃんといましたけど。


多分……。


「ところでアンタ面白そうなスキル持ってるみたいね。そのスキル私と交換しない?」


彼女は、おそらく好奇心からくるものであろう笑顔を向け、俺の方に近づいてきた。


「あの、スキル交換……ってなんです?」


「えっ? なにアンタそんなことも知らないの?」


「いやぁ、実は――」



俺は今までの経緯を彼女に話して聞かせた。

突然、異世界転移したこと。

≪威圧≫とかいうとんでもないスキルを持っていること。

そのとんでもないスキルのせいでいらん苦労をしたこと。


信じて貰えるかは分からなかったが、包み隠さず彼女に話した。

まあ、ダメで元々。

信じて貰えなかった時は、頭の可笑しい変な奴くらいに思われてお終いだ。


だが彼女は「あー、なるほどねー。あなた転移者だったのね」と意外にも納得してくれた。


「信じてくれるんですか?」


「んー? ああ、たまにいるのよ。あなたみたいな転移者って。だから特段めずらしい話でもないの」


「そうなんですね」


なるほど。

この世界には俺以外にも転移者がいるのか。

ぜひ一度会ってみたいものだ。


でも、なんか変な奴だったりしないかな?

チートスキル持ちの俺TUEEEみたいなことしてる絵が頭に浮かんだ。


クソ!

俺のは使い方もよく分からんスキルなのに。

もしかしたら、他の転移者はなんかすげえスキルを持っているのかもと思うと、すごく腹立たしい。


「でさ、話は戻すけど。アンタの持ってるスキル、アタシと交換してくれない?」


「その前にまず、そのスキル交換とやらのやり方を教えてくれ」


「ああ、そうだったわね。じゃあまずステータス画面を開いてみて」


彼女はそう言いながらステータスと叫び、自身のステータス画面を開いた。

俺もそれに続いて自分のステータス画面を開く。


「まず、該当のスキルのボタンを押す。そして画面をスクロールすると、『スキルコード発行』っていうボタンがあるからそれを押すのよ。そしたらスキルコードが発行されるから。そしたら、近くにいるアタシのステータス画面に該当のスキルコードが届くはずよ。それでスキル交換出来るから」


「なるほど」


俺は早速、彼女に言われるがままやってみた。

ステータス画面の≪威圧≫と書かれたところを押す。


が、俺のステータス画面には「スキルコード発行」の文字がなかった。

代わりに、「このスキルによるスキルコードの発行は出来ません」と書かれていた。


「『このスキルによるスキルコードの発行は出来ません』って書いてるんだけど……」


「えー、ウソー!? あー……もしかしてアンタのスキル、固有スキルだったりする?」


「そうだけど」


「かあー、マジかー」


彼女は俺とは反対方向に向き、額に右手を当て落胆の声を上げる。


「あのー、これってつまりどういうこと?」


彼女はこちらに向き直りこう言った。


「えっとね。固有スキルはその人独自のスキルだから交換できない仕組みになってるの」


「あー、そうなんだ」


「しょうがない、アンタとのスキル交換は諦めるとしますか。ねえアンタ名前は?」


「ん? ああ、そういえばまだ名前言ってなかったな。俺はヒビト、よろしく」


「そう。アタシはリリー、よろしく」


そう言いながらリリーは俺に右手を差し出した。

それで俺たちは握手を交わす。


「なあ、なんでリリーは俺と普通に接せられるんだ? 俺のスキルのせいでそんなこと無理なはずだよな」


「ああ、それはね、アタシが≪状態異常耐性≫スキルをもってるからよ。このスキルはね、あらゆる状態異常スキルを、アタシだけには効かないようにすることが出来るものなの」


「へえ、なるほどそんなスキルがあるんだな。この世界のスキルってなんでもありなんだな」


「まあ、そうかもね。ちなみにアタシはこう見えて、『スキルコレクター』っていうのを生業にしてるのよ」


ドヤァ、といった風なポーズを彼女は決めている。

そんなドヤァられても、それが凄いことなのか俺にはさっぱり分からないのだが……。


「そのスキルコレクターってどんなのだ? 具体的に何するんだ?」


「文字通り、ただスキルを集めてコレクションするだけよ。あ、たまに要らないスキルとか重複したスキルは売ったりするか。あとはダンジョンとか潜って、新しいスキルとか探したり、金銀財宝を見つけたらそれを売ったりしてるかなー」


なるほど。

それはつまり異世界ものによくある冒険者的なやつってとこか。

確かめてみよう。


「それって冒険者とは違うのか?」


「え? いや、スキルコレクターっていっても、厳密にはそんな堅苦しいもんじゃないわよ」


「じゃあなんなんだよ」


「アタシのただの趣味よ」


……。

あ、さようですか。

良い趣味をお持ちなようで……。


「アタシ昔からスキルを集めるのが好きでね。なんていうか、まだ見ぬ未知のスキルと出会う喜びみたいなのがすごく快感なのよー!」


リリーは、両手で頬を覆い顔を赤らめながら、体をくねくねさせて変な動きをした。

あー、うん……。

この方は、なんていうかちょっと変態ぎみな方なんだろうな……。



「さてさて……。これから俺、どうしようかな……」


俺のその言葉にはそっちのけの様子で、彼女が端を発した。


「あ! そうだアタシ、良い事思い付いた!」


そういう彼女は、ニヤリとした笑みを浮かべたのだった。

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