のばら×メルティローゼ、夢の中にあること
あ、あの子。
のばらは思う。
あ、あの方。
メルティローゼも思う。
宇宙の中に漂うようにして。だけど、地球上にある星空の中にあるようにして。
「初めましてでよろしくて?」
「えぇ、初めましてでいいんじゃないかしら?」
もうどちらがどちらとも言えないくらい。彼女たちは別の顔を持ちながら、同じ感覚になっている。
「そうね……尋ねたいことはあるようでないわ」
「そうね……今から戻れるとも思えないわ」
ふたりはすでに相手の人生に深く関わっているのだから。だけど、気になることはある。
「百合菜はどうしていますか?」
「リリーはどうしていますか?」
ふたりはくすくす笑い合う。
「あの可愛らしい反抗期の後、進学先で友達に悩んでいましたけれど、解決策をお教えしましたわ」
「まさか、」
「報復活動はさせておりませんことよ。あれは、身の滅びにつながると実体験で知っておりますから」
「よかった」
「元気なのね」
「とっても。きっと人懐っこさはあなたに似たのね。怠け癖さえ出てこなければ、王妃にだってなれる人材だと思っているわ」
のばらがゆっくり笑う。
「リリーは、私をずっと支えてくれたのよ。記憶が曖昧であの世界に馴染めないこともあったけれど、とても頼りになる人だった」
「まさか……」
「まだ元気に現役」
「よかった」
ローゼもゆっくり笑う。
「今、彼女には支店を任せているの。私、夢を叶えて自分の店を持ったのよ」
「奇遇ね。私も私だけを愛してくれる方と共に生きる。そんな夢を叶えたわ」
「まぁ、『私』なのか『あなた』なのかは分からないけれど」
ふたりの言葉が重なると、寂しい笑顔も合わさった。
「そろそろ戻る時間ね」
「そうね、わがままを叶えた世界に」
またいつか、どこかで、ふたりが重なる、そんな時まで。
「またお会いできるかしらね」
「その時は、あの世になるのかしら」
朝が来る。
すべての夢を飲み込んで。
光のカーテンを掛けてしまう。
また気まぐれに、神さまの風がそのカーテンを翻さない限り、世界は繋がったりはしない。
「さようなら、過去の私」
彼女は、今ある現実に向かい歩きはじめる。扉の向こうには、
「おはよう、リリー。今日もいい一日のはじまりね」
今を輝くための太陽が待っているのだ。




