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〜私の恋は妖精の魔法と少しのドジで始まりました〜  作者: 石田あやね
第1章【少女、妖精と出会う】
15/24

15話 友達として

「短い間お世話になりました!」

「またいつでも遊びに来いよ」

「ありがとうございます!」

 翌朝、恭太は朝食を摂り、理人の手作り弁当をしっかり持って早めに家から出て行った。

「大丈夫かな?」

「弟のことか?」

「それもそうだし……家族も恭太くんにあんな感じだって思ったら、ちょっと心配かな」

 それは同情でもあったが、葉月には恭太の置かれている状況を深く理解できたからこそ案じていた。

「何かあれば頼るようにも言ってるし大丈夫だろう」

「うん」

 不安そうにする葉月を安心させるように理人は優しく頭をポンっと叩く。

「葉月は恭太のいい理解者になれる。だから学校で助けてあげればいい」

「そうだね。そうする」

「さあ、葉月も学校へ行く準備しろよ」

「あ! お兄ちゃん、今日……入れ替わりでごめんなんだけど、柚子を今日家に泊めてもいいかな?」

 葉月のお願いに理人は笑顔で返す。

「いいよ。気にせず連れておいで」

「ありがとう! じゃあ、行ってきます!!」

「行ってらっしゃい」

 学校へと走っていく葉月の後ろ姿を理人は微笑ましく見送った。


 教室へと着くと、何やら騒がしいことに葉月は気付く。どうやら、遅刻もせずに続けて登校してきた恭太にまたも注目が注がれているらしい。しかし、周りがいくらヒソヒソと噂話をしようと、恭太はまるで聞こえていないかのように堂々と自分の席に座っていた。しかも、机の上には既に一限目の教科書とノートが用意されいる。いきなり学校へ来るようになり、真面目に授業を受けようとしている姿勢の恭太が皆物珍しくて仕方がないのだ。

 葉月は不意にある光景を思い出した。

 昨夜、理人が恭太に勉強を教え出したのだがあまりの飲み込みの良さに葉月はかなり驚かされた。柚子が前に恭太は頭が良かったとは言っていたが、どこか半信半疑であった。しかし、あの恭太の理解力を見れば嘘ではないと一目で分かる。それに、恭太は学校へ来てない間も独学で勉強は続けていたに違いない。

 恭太という人間を知れば知るほど、どういう経緯があって今のような状態になったのか葉月は気になって仕方がなかった。

「おはよう、恭太くん」

「え……お、おはよう」

 いきなり挨拶してきた葉月に恭太は意外だと言いたそうに目を瞬く。

「おい、いいのか? 俺に話し掛けたら周りに噂されるぞ?」

 小声で言う恭太に、葉月はそっと周りに目を向ける。恭太の言う通り、クラスの誰もが恭太に話し掛ける葉月に視線を注ぎ、新たな話のネタに口を動かしていた。葉月は軽く溜息をついてから恭太へと目線を戻す。

「私たち友達になったんでしょ? だったら周りの目なんて気にしなくてもいいじゃない……お昼も一緒に食べよう。柚子のことも知ってるんでしょ?」

「え? 柚子って……岸谷のことか? 葉月って岸谷と仲良いんだ」

「幼馴染なんだ」

「へぇ〜、世間って狭いな」

「じゃ、私は席に戻るね」

 葉月が席へ戻ろうとすると、恭太が引き止めるように腕を掴む。

「どうしたの?」

「ありがとう……葉月のおかげで学校に来るのが憂鬱じゃなくなったよ」

 あまりにも素直にお礼を言うものだから、葉月は言葉に詰まる。席に戻ると、珍しくアモールがポンっと姿を現した。

「葉月さん、なんだかんだと恭太さんとはいい感じじゃないですか〜。もしかして僕の恋のお手伝いは成功したってことですか〜?」

 相変わらずのお気楽な姿に葉月は思わずアモールを睨みつける。

「冗談はやめて……恭太くんはそんなんじゃないから」

 人に聞こえないように小声で返すと、アモールは残念そうに肩を落とす。

「葉月さんの恋のお手伝いはなかなか難しいですね。では、新しい恋のヒントになるものを見つけてきます」

「余計な魔法はもう使わないでよ」

「はい。今度はちゃんと葉月さんの意見を聞いてから魔法を使います!」

 そう言い残し、アモールはパッと姿を消した。


 昼休みになり、空き教室で理人手作りのお弁当を開く。

「今日もお兄さんのお弁当うまそー! 葉月はいつもあんな美味しい料理が食えるなんて羨ましいよ」

 向かいの席に座った恭太が早々に唐揚げを口に頬張る。

「家では何を食べてるの?」

 自然とそんな質問が口から零れた。だが、いいタイミングで教室の扉が勢い良く開け放たれた。

「うわ! 本当に恭太がいるー!!」

「柚子、遅かったね」

「購買がめっちゃ混んでてさ、遅くなっちゃった」

 葉月と恭太の間の席に座り、買ってきたパンとジュースを広げる。

「え? てかさ、なんで葉月と恭太……お弁当お揃いなの?」

「いろいろ事情があってね。後で説明するよ」

「おけー」と、深く考えていない様子で返事をした柚子は恭太に目を向けた。

「岸谷、久しぶり」

 少々気まづそうに恭太が挨拶をすると、柚子は満面の笑顔で返す。

「なんでそんな他人行儀なのー!? てか、昨日も会ったのに気付かなかったし、忘れられてるかと思ちゃったよ」

「昨日?」

「えっ!? もしかして気付いてなかったの!?」

「ごめん」

 そんなやり取りをしながら時間は過ぎ、お弁当箱の中身はすっかり綺麗になくなっていた。

「そういえば、葉月って意外と肝が据わってるんだな。見た目大人しそうなのに度胸があるっていうか」

 今朝の光景を思い出したのか、恭太が急にそんな話題を口にする。

「葉月は強い子だよ。もし葉月が男の子だったら絶対に私の彼氏にしたもん」

「岸谷は相変わらずなんだな」

 恭太がおかしそうに微笑んだ。

「あ、ねぇ! 今日の放課後さ、恭太も一緒に遊ぼうよ」

「いや、男の俺がいたら迷惑じゃね? 岸谷だって彼氏いるだろ? 俺と一緒に行動するのはまずくないか?」

「今は彼氏いないもん!」

 子供のように両頬を膨らます柚子に、恭太も葉月も思わず笑ってしまう。

「二人がいいなら、俺は構わないけど」

「なら決まり! 葉月もいいでしょ?」

「うん、いいよ」

 こうして、妙な三人の関係が始まった。

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