ベアーの秘密
次の朝、寝坊して遅く起きて来たベアーは、私の作った目玉焼きを食べながら言うのです。
「僕は魔法使いの男の子みたい」
「ベアーが!? でも、じゃあなぜ今はベアーなの?」
「それは……理由がいろいろあって、ここに魔法使いが住んでる話しを聞いてやって来たはいいけれど」
「ベアー、うちに来るつもりだったの?」
「うん、おじゃまするつもりだったの」
ベアーは、何度もうなずきました。
「なんで?」
「なんで? サラは、お買い物してました。魔法使いの家がありました。って事になったら行くよね?」
「行くかも? 魔法使いの家だものね。知識の宝庫。行くね! 絶対行く!」
「えっ? 僕は紅茶をご馳走様して貰ったり、おやつ食べに行くんだけど? サラはご馳走してもらわないの?」
ベアーは私の事を不思議そうに見ますが、とんでもない! 知らないお家におやつ目当てで行くだなんて!?
私は首をぶんぶん横にふりました。
「サラ、大丈夫だよ! 僕はとびっきりのお菓子を持っておじゃまするし、断られたらちゃんと帰るよ」
「なら、いいか……」
魔法使いは、変わり者が多いのでまぁ、そんな感じでOKなのです。
「えっと、何の話しをしてたっけ?」
「なぜ、ベアーなのか? って話しだってば」
「何だか哲学的な言い方素敵! あぁ!? サラちゃん、ちゃと言うから、ほっぺをふくらますのはやめて! ええっと、それで……僕は昨日とまったく同じ事をしてなんとか、流れ星を手にしたのはいいけれど、海底に沈む木々に僕のほうきがひっかかり水底から出れなくなってしまったの……」
「だから、今、ベアーの姿なの? 君の体は湖のそこで魔法で眠りについているの? それとも……銀のオノ、金のオノ、それともベアーって事になってしまったの?」
「ううん、なんとかほうきに絡まる木々をはずそとしたけれど、水の中は、冷たいし、寒くて、寒くて死にそうで、ほうきを諦めて地上になんとかもどったの、でも……その時には何にも持って無かったの。僕は失敗しちゃったみたい。恥ずかしい――」
そう言ってベアーは、顔を隠しながら足を踏み、踏みしました。今は巻き毛の茶色の熊のねいぐるみだけど、魔法使いの男の子なら顔が真っ赤になっているはずです。
「でも、君はまだ熊のぬいぐるみになってないよ?」
「うーん、そうなの。あの日、やっぱり頑張り疲れて、寒くて、ここへ来たらこの家にすごくあったかくて美味しいそうな魔法の鍋があったから、それをお皿に入れて一口味見するためたくさんお皿によそったら、何か足りない、だから棚からコショウ、木苺……後、いろいろ入れて忘れちゃった。たくさんいれて僕好みの味にとっても美味しくなったけど、手がどんどん可愛くて、素敵な熊の手になって……」
「なって?」
「今は、サラちゃんちのベアーだよ」
ベアーはクルッと回って、右手をあげて、左手は腰に、そして右足をあげてポーズをとっている。
「ベアー、口にたまごが付いているよ。後、食事中に立ってクルッとは禁止ね」
「はーい」
ベアーは、キャッキャ言いながら、私に口元を拭かれています。
「でも、思い出せて良かった! でも、流れ星はやっぱり欲しいかもしれない。うん。欲しいと思うからサラちゃん一緒に頑張ろ」
そんなベアーを見て、正直同じ魔法使いとして呆れましたが、私と同じ時をいきる魔法使いだったと聞いて、少し安心しまった。
でも、ベアーが魔法使いになったら、ぬいぐるみのベアーは居なくなるの? でも、この調子なら変わらず居座りそうです。
安心なような、大変なような……。
でも、全然知らない男の子になったら、今まで通りではなくなるかもしれない。でも、記憶を思い出したベアーは呆れるほとベアーなのです。
☆
ベアーの流れ星を湖から拾いあげるため、二人はいろいろ考えました。
そして夕食の後、一度作戦会議をおこないます。
「じゃあこれは? 湖の水を全部吸い上げちゃおう!」
ベアーは、両方をあげてそう言いました。
「そのお水はどうするの? 魚は?」
「お水は街で使って貰えば? 魚は水族館かな?」
「全部禁止!」私は両腕をバツにして言いました。
「これはすごく難しい問題だね。とりあえずはサラちゃんに潜れるとこまで潜って貰って、そこから僕が飛びだすよ! 名付けてロケット作戦!」
そう答えたベアーは、ロッドさんがくれた焼き芋の包んでいる新聞紙の記事を見ながら言いました。
私もその記事を見ながら――。
「それはとってもいい考えかもね」と言いました。
「よし! 決まりだね。流れ星の事も決まっし、焼き芋食べ物ようか?」
そうを夕食を食べたばかりのベアーが言うので、焼き芋に魔法をかけ戸棚にしまったのでした。
つづく
見ていただきありがとうございます。
また、どこかで!