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第3話 初恋は幼なじみ

■学校の廊下

  ──ドン!!

  と王子にぶつかるヤンキー少年


王子「あ、すいませ……」


番長「いってーな! 気をつけろよ!!」


王子「あっ……」


番長「…………」


  ──王子の顔を見て逡巡(しゅんじゅん)する


番長「フンッ!」


  ──スタスタ

  と歩いて行ってしまう番長。

  それを呆然と見送る王子


コウ「おい! 今の番長じゃねえか。大丈夫だったか?」


王子「あ、ああ……」


コウ「あいついまだにヤンキーやってるんだってな。いつまで反抗期なんだか」


王子「昔はあんなんじゃなかったんだけどな……」


コウ「昔って、中学1年の時にはすでに番長やってただろ」


王子「中学に入る前の話だよ」


コウ「えっ? そんなに昔からの知り合いなのか?」


王子「幼稚園から小学校を卒業するまでの間は、毎日遊んでたんだ」


コウ「へえー、王子があの番長とね。意外だな」


姫「BL王子と番長さんは幼なじみだったんですか?!」


王子「ふ、藤吉さん。いつの間にそこに……」


姫「BL王子の初恋の相手は、幼なじみのヤンキー少年だったんですね」


王子「えっ」


姫「それが思春期に入ってからは、照れくさくて口も利けなくなってしまった……」


姫「なんて素敵なシチュエーション! 出ちゃう! 鼻血が出ちゃう!」


王子「初恋なんて言ってない。なんでもそっち方面に結びつけるな」


コウ「そうだそうだ! 王子の初恋が番長なんかの訳が無い! 訂正しろ藤吉!!」


王子「なんで俺より怒ってんだよ」


姫「やだなあ責田くんったら。番長さんはBL王子の元カレで、今カレは責田くんじゃないですか」


王子「藤吉さん……? この前生徒会長に、相手の話はよく聞きましょうって言われてなかった?」


姫「わかってますよ! 妄想くらいさせてくれたっていいじゃないですか。それが友達でしょう?」


王子「藤吉さんは友達の定義を、間違って認識しているようだね」


コウ「妄想ってなんだ妄想って! 俺の気持ちは本物だからな、王子?」


王子「お前は俺と友達を辞めたいみたいだな。今までありがとう、コウ」


コウ「ひでえ! ファーストキスの相手をそんな雑に扱ってもいいのかよ!」


王子「ウワーッ!! 忘れようと思ってたのに、思い出させるなあああ!!」


  ──ダッ

  とその場から逃げる王子


姫「あっ、BL王子!」


コウ「忘れようとしてたのか? マジでひどい奴だな」


  ──少し離れた場所から、番長がそのやり取りを見ていた


番長「チッ……」


■放課後、校内の階段


王子(藤吉さんもコウも、悪い人間じゃないんだけどな。もうちょっと暴走を抑えてくれないかな……)


番長「よう、美家」


王子「ぐ、暮男(ぐれお)? お前が話しかけてくるなんて珍しいな」


番長「俺のことは番長と呼べ! 前にも言っただろ!」


王子「あ、ごめん。この学校の番長だもんな」


番長「そういうことじゃねえ! 番長は俺の名字だ!!」


王子「知ってるけどさ、みんなは名字だと思ってないよ」


番長「チッ……。んなこたぁどーでもいいんだよ。ちょっと体育倉庫までツラ貸せ」


王子「えっ、ヤダよ。話があるならここでもいいだろ?」


  ──ギロッ

  と王子を睨みつける番長


番長「テメー……。俺に逆らう気か?」


王子(怖っ)


王子「わかったよ……。行けばいいんだろ」


■体育倉庫


  ──バンッ ガチャッ

  と番長が体育倉庫に入ったとたんにドアに鍵をかける


王子「なんで体育倉庫に入るなり鍵をかける!」


番長「邪魔が入らないようにだよ」


王子「なあ、俺……。お前に何かしたか?」


番長「なんでだよ」


王子「だって助けを呼べない状況にして、俺を蹴ったり殴ったりする気なんだろ?」


番長「アホか。んなこたぁしねーよ」


番長「まあ、テメーが俺に何かしたっていうのは大当たりだけどな」


王子「や、やっぱりそうだったのか」


王子「中学に入ってから急に俺を避けるようになったから、おかしいと思ったんだ」


番長「本当に覚えてないのか? 自分がやったこと」


王子「俺が何をやったって言うんだよ」


番長「…………」


王子「なあ、教えてくれよ。お前を傷つけたなら謝りたいんだ」


番長「お前が謝ったからどうなるってんだよ」


王子「また昔みたいに暮男と仲良くやりたいんだよ」


番長「じゃあ、あの時のお願い……もう一回聞いてくれるか?」


王子「あの時のお願い? 何のことだっけ?」


番長「キスさせろよ」


王子「ああ、そんなことならお安い御用……」


王子「……ん?」


  ──ガシッ

  と番長が王子の肩をつかむ


番長「本当にいいんだな?」


王子「ストップ! ストーップ!!」


番長「あのツンツン頭とはキスしたくせに、なんで俺は駄目なんだよ!」


王子(ツンツン頭って、コウのことか)


王子「聞いてたのか……。あれは強引にされたんだよ」


番長「どっちだって同じだ!」


王子「っていうか、お前にキスさせろなんて言われたことあったか?」


番長「テメー、この野郎……」


  ──ギリ…

  と肩をつかむ手に力を込める番長


王子「痛い痛い!」


番長「本当に覚えてないのか? 小学校の卒業式のこと」


王子「ご、ごめん暮男。覚えてないかも」


番長「俺の初恋は王子、お前なんだよ! だからキスしたいって勇気を出して告白したのに、忘れるなんてひでーじゃねえか!!」


王子「あっ、そういえばそんな事があったかも……」


番長「思い出したか?」


王子「いや、でもさ……。あれはてっきりジョークだと思ってたから」


番長「そう……。王子はそうやってマジ告白を笑い飛ばして、俺の心を深く傷つけた」


番長「だから俺は中学に入ってグレちまったんだよ!」


王子「そ、それは悪かった」


王子「……ん? それって俺が悪いのか?」


番長「テメーが悪いに決まってんだろ! 俺はあれから、人を好きになることができなくなっちまったんだよ!」


王子(よくわかんないけど、面倒くさくなってきたから俺が悪かったことにしておこう)


王子「ごめん、悪かった。謝るよ」


王子「これでもういいだろ? これからは心置きなく彼女を作れるな!」


番長「いや、駄目だ」


王子「何が」


番長「彼女なんか作れねーよ。今でも王子が好きなんだから」


王子(またこのパターンか!)


王子「そっか~。でも、悪いけど俺には好きな女の子がいるから。ごめんな?」


番長「好きな女ってどいつだ」


王子「言うわけないだろ。言ったらその子に危害を加えるだろ?」


番長「テメーぶっ殺す! 俺が女に暴力振るうような、見境の無い男に見えるのかよ!」


王子「だってお前、この学校の番長だし」


番長「俺は番長じゃねえ! いや、俺は番長なんだけど、名字が番長なだけだ!」


王子「ややこしいな」


番長「俺の純情を二度も踏みにじりやがって! こうなったらキスだけじゃ済まさねえぞ……」


  ──じり…

  と王子ににじり寄る番長


王子「え゛っ? それはまさか、キスより先に進むってこと?」


番長「そうだ!」


  ──ドサァッ

  と番長が王子を押し倒す


王子「ギャアアアッ! 誰かあああ!!」


  ──ドンドン

  とドアを叩く音が


姫「BL王子ぃーっ!! そこに居るんですか?」


王子「藤吉さん!」


番長「邪魔が入ったか。でも鍵を閉めてあるから問題無いな」


王子「問題ありまくりだ!」


  ──バンッ

  と姫がドアを開ける


姫「BL王子! 姫が参上つかまつりました!」


王子「鍵、開いたぞ暮男」


番長「ゲッ! なんでだよ!」


姫「BL王子と責田くんを閉じ込めるために、職員室から体育倉庫の鍵を拝借しておきました」


王子「それ、いろんな意味で犯罪だからね藤吉さん?」


姫「ところでBL王子と番長さんは、二人きりで何をしていたんですか?」


王子「相変わらず都合の悪いことはスルーなんだね藤吉さん……」


番長「何してたって……見ればわかるだろ。とっとと出て行けよ」


姫「見ればわかるって? あっ……」


姫「キャーッ!!! 番長さんがBL王子に伸し掛かって制服を脱がそうとしてる! 鼻血が大量に出て出血死しちゃう!!」


番長「鼻血は出さなくていいから、テメーが出て行け」


姫「じゃあ出て行ったという体を装って、跳び箱の中に隠れて見守っています!」


王子「あのね、藤吉さん……。できれば人を呼んで来てくれないかな?」


姫「はい、どうぞ! マットを敷いておきました!」


王子「あ、そうだよね。助けてくれると思った俺が浅はかだったね」


番長「こ、この女……!」


王子「わかってるよ。空気が読めないって言いたいんだろ? でも、根はいい子で……」


番長「ものすごく気が利くな!」


姫「伊達に腐女子はやってませんから」


王子(こうなる予感はしていた)


会長「何をやっているんだキミたちは」


姫「生徒会長さん!」


会長「体育倉庫の鍵が無いと先生に言われて、現場を見に来てみれば……。キミたちが遊んでいたとはな」


番長「下がれよ冷徹! これは遊びじゃねーよ!」


会長「では何をしている」


番長「俺は本気の恋愛してんだ!」


姫「私はBL王子の恋の行く末を見守っています!」


王子「俺は助けて欲しいです……」


会長「お前らの言い分はよくわかった。とりあえず全員倉庫から出ろ」


姫「え~っ」


番長「出て行くのはテメーだ。こうなったら力づくで追い出してやる」


会長「実力行使に及ぶというのなら、生活指導の先生を呼ぶだけだ。早く美家 王子の上からどけろ」


番長「クソッ。しゃあねえな、今回は引き下がってやるよ」


  ──スッ…

  と王子から離れる番長


王子「ありがとうございます。また会長に助けられましたね」


会長「なに、礼は要らないさ。キミが綺麗な身体のままで何よりだ」


  ──会長がひざまずき、王子の手を取り    

  チュッ…と手の甲にキスをする


王子「ちょ、何するんですか!」


会長「慌てて手を引っ込めなくてもいいだろう」


姫「忠誠のキスですね! まさか生徒会長さんもBL要員だったなんて!!」


姫「ああ、どうしよう……。今日は大フィーバーで頭がクラクラしてきちゃった……」


王子「俺も目まいがする。まともな人が居なくて」


番長「てんめえ~っっ!! 俺の王子に何しやがる!!」


会長「いつからキミの所有物になった。美家 王子と俺は口づけを交わした仲だぞ」


王子「あんたは俺の黒歴史を増やしただけでしょうが」


番長「おい、王子! ツンツン頭じゃ飽き足らず、冷徹とまでキスしてたのかよ! とんだアバズレだな!!」


王子「仕方ないだろ! 不意打ちだったんだから!」


会長「フッ……。その割には目を閉じてキス待ち顔だったがな」


王子「あれはつい、条件反射で……」


番長「コノヤロウ……。もう許さねえぞ! 来い、校舎裏で決闘だ!」


会長「いいだろう。俺の持てるスキルをすべて駆使して、貴様を再起不能にしてやる」


  ──スタスタ

  と体育倉庫から出て行っく、会長と番長


  ──シン…

  と静まり返る体育倉庫内


王子「帰ろうか、藤吉さん」


姫「はい! 早くコウくんにこの事を知らせて、三つ巴にしないといけませんね!」


王子「それやったら俺、明日から登校拒否するからね」


  ──こそ…

  と陰から王子たちを見る謎の女の子。


謎の女の子「やっぱり姫は何もわかってない……」


謎の女の子「ここは僕が行くしかないかな」


  ──つづく

【イラスト付きのものが下記のサイトで読めます】

★kakuzoo

https://storie.jp/creator/story/10397

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