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英雄


赤子を抱えたパンプは、シナモンを見下ろし睨んでいる。

「お、おいパンプ…何やってんだ?」

間髪入れずにシナモンが問う。

「……」

「てか、何処にいたんだ?」

「……」

「なんでニッキは倒れてるんだ?」

「……馬鹿だなぁ、お前らは」

いつも温厚で礼儀正しいパンプとは思えない口調でシナモンに語る。

「…裏切ったのか?」

低い声でシナモンが尋ねる。

「見られちまったからには仕方ない…

それにどーせ最後だから教えてやる。

俺は帝国からの使者だ、つまりスパイって事」

状況から予想はしていたがシナモンはその事実を受け入れられなかった。

「ずっと、騙してたんだな」

「…あぁ」

パンプは低い声で肯定した。

「何が目的だ、」

「お前ら反乱分子を全部潰すんだよ」

「その赤子をどうする?」

「俺は元々コイツ目的でお前らと行動していたんだよ」

ブルース達もシナモンの方へ集まってきた。

「おい、パンプ…何してる」

「ブルースとカルツはお手柄だったな、

聖母の肉体以外にコイツを持ってきてくれたんだから!」

ブルース達は信じられいと言った表情で固まっていた。

「じゃあ!この背中の機械もあのブルースの薬も全部嘘ってことか!?」

「……」

「なんとか言えよ!」

突然光を放ち、パンプが消える。

「これ以上話しても時間の無駄だ。

それにお前らが帝国に負けるのは確定事項だからな」

どこからともなくパンプが言い捨て、それから何も聞こえなくなった。

しばらく誰も何も言えなかった。

一番温厚でスパイとは思えない人物がスパイで皆、空いた口が塞がらなかった。

「あ!ニッキ!」

シナモン達はニッキに駆け寄る。

ニッキは息はある様だが、足と手の腱が切られて酷い状態だった。

「ブルース、お前の魔法で運んでやれ」

ブルースは何も言わずに頷き、基地の中へ連れて行った。

「信じられない…あのパンプが裏切るなんて」

「裏切るどころか最初っからずっと騙されてたなんてな」

ダニエルはホワイトスカートに入って日が浅いので話にはついていけなかったが、事の重大さは理解していた。

「パンプさんの事も大事だが、「赤子」が取られちまったんだ。

戦争での「希望」がなくなったんだ」

その場の全員がおし黙る

「ちょっと待てよ!その前にアイツ、武器工場に居たよな…まずいんじゃないか?」

パンプがほとんどの武器を作っていた、つまりこっちに不利になる細工がされている可能性が高いということ。

急いで武器工場へ向かう。

「おい!工場長!パンプが作った武器を持ってこい!」

いきなり怒鳴られびっくりした工場長だったが剣幕に押されて、急いで武器を持ってきた。

どれもこれも見た目は精度の良いライフルだ。

「分解してみよう」シナモンが銃に手をかけると工場長が止める。

「待てよ!なんで作ったものを壊すんだ!」

「うるさい!今は緊急なんだよ!」

幸いにも銃は粗悪品でも、爆弾も入ってない精度のいい銃だった。

「悪かった、この銃たちは弁償す…?」

シナモンがいいかけた時、パンプが作業用に作ったカボチャロボットが目に入った。

「ちょっと、あの機械を連れてきてくれるか?」

「おいおい、ウチの従業員まで壊す気か!」

「いいから、持ってきてくれ!」

渋々工場長はカボチャロボットを持ってきてくれた。

「!?」

カボチャロボットを解体してみると、見たこともないような気持ちの悪い肉塊が入っていた。

「おい工場長!なんなんだこれ!」

工場長は口がポカンと空いていた。

「こ、コイツは見たことがねぇ、でもこんなものでどうやって機械を動かすんだ…

動力源らしきものは見当たらねぇし」

ニッキを療養施設に置いてきたブルースが帰ってきた。

「あ、ブルースこの物体何かわかるか?」

「ん?…これって…」

ブルースが興味深く観察する。

「これって「傀儡の元」じゃないか?」

「知ってるのか!?」

「あぁ、コイツは魔力を詰めると家事とか色々やってくれる傀儡の心臓だ。

最近は魔法使いも減ってあんまり見なかったがまだ残ってたんだな」

ブルースに何か悪い予感が走る。

「ちょっと待てよ…レズ、聞こえるか?」

「レズ?」

ダニエルが首を傾げる。

「あぁお前は知らなかったな、ブルースは兄弟のレズと目と耳が共有できるんだ」

へぇ〜とダニエルが返した。

ブルースはレズの視界を共有したのか、シナモン達には目もくれずに集中している。

「…」

ブルースは怒りと憎悪の混じった顔をした。

「お、おいブルース?どうした」

「おかしいと思ったんだ、魔法使いしか使えない傀儡をカボチャが使うなんて」

「レ、レズはどうしたんだ?」

「レズ…いやゲルストの魔法使いは全員、帝国の奴隷になった…」

その言葉にシナモンは固まる。

ゲルストは昔、猫とパンプとブルース兄弟が

教祖アカロフを倒して解放したはずだったのに次は帝国に囚われていた。

「もしかして、パンプはあの時から裏切ってたのか!?」

パンプはゲルストに行った後、アカロフのいなくなったフリーのゲルストを帝国に売ったかもしれないという確信に近い疑問がシナモンの頭によぎる。

「帝国はブルースカート教の一軍ではあるが、

ほぼ孤立した存在だ。そして多分ゲルストの魔法使いを狙っていた…だが本軍のアカロフを攻撃したら元も子もない」

シナモンは何か不安があった。

「もし俺たちを仕向けさせて、アカロフを殺させようとしたなら…そういえば!ジャックも

俺の事裏切ったな…

もしかして、ブルースの杖を折ったのって「ジャック」だったんじゃないか?」

カルツとダニエルは話にあまりついていけなかったが、ダニエルは「ジャック」という言葉に引っかかっていた。

「おい、話の途中にすまないが、その…「ジャック」って…」

しまった、とシナモンは口を手で覆う仕草をした。

ブルースが口を開く。

「ジャック・トマソンは元ホワイトスカートのメンバーだ」

そしてシナモンも口を開く。

「そして「ブロ共和国」で俺たちを裏切り…

死んだ…」

ダニエルは悔しさの満ちた表情を出した。

「なんとなくジャックは、この世界で生きていないと思っていた…だが、死んだ理由がお前らなのか…」

ダニエルはそれ以上は何も言わなかった。

「本当にジャックの事は残念だと思っている」

シナモンは付け足すがダニエルの耳には入らなかったようだ。

「とにかく…今は赤子を取り返して、レズを救う事が優先だ。俺は帝国に乗り込むつもりだが、お前らはどうする」

ブルースはもちろん、カルツも行く意思を見せた。

「俺は行かない」ダニエルは冷たく言い切った。

「俺はこの基地で待機…いやレッドスカートに入る事にする。

ホワイトスカートには…弟を殺した奴らとは行動は共に出来ない」

誰も反対はしない、ダニエルは基地の中へ戻って行った。

「仕方ない事だ…俺たちは俺たちのできる仕事をしよう」カルツが二人の肩を持つ。

「明日には出発しよう…今日は休んで」

みんな賛成し基地へ戻った。


宿舎にて…

カルツは二人と比べて精神的ダメージは少なく落ち着いていた。

「ニッキさん大丈夫かな〜」

カルツが俯いて準備する二人に独り言で縋った。

「アイツには俺の血を少し分けてあるから、手足の腱が切れたくらいならすぐに再生する」

シナモンが答えた後に何か違和感に気づく。

「手足の腱が切れただけで気絶するはずがない

もしかしたらもっと体の内部に損傷があるのかもしれない…ちょっと行ってくる」

宿舎からニッキがいる療養施設まで足を運んだ。

療養施設はざっと五階はある大きな市民病院のようですぐに見つけられた。


受付らしき人間の男にニッキの居場所を訊ねると最上階で手術してると言われた。

シナモンは急いで最上階へ行き、手術中の部屋を蹴破った。

「おい医者!容態はどうだ!」

焦っているからかシナモンは荒い口調で医者に問い詰めた。

医者はいきなり詰められ思考が停止していたがすぐ持ち直してシナモンに目を合わした。

「手足の腱は何故か治ってますが体の内部の損傷が酷く、まるで体の中で「爆弾」が爆発したような酷い状態でした。今は生きてる事さえ奇跡と言えます」

「治せるか?」

医者は暗い顔になった。

「私は正規の医師ではなくここでできるのも民間治療です。なので…」

それ以上は医者は言えなさそうだった。

「ちょっと退け」

シナモンが医者と複数の手伝いを退けて、ニッキの呼吸器を外す。

「ちょっと!ないやってんだ!それがあるから

息してんだぞ!」

手伝いの一人が声を荒げるがシナモンは無視して手首をニッキの口の上に上げた。

「切るものは〜これでいっか」

シナモンは近くに落ちていたメスで手首の血管を切り、ドバドバと大量の血がニッキの口に溢れていった。

周りの医者達はえげつなく理解できない状況に耐え切れず部屋から逃げて行った。

「これぐらい入れれば三日で完全に戻る、

ニッキ…お前は残酷だが、お前のおかげで希望を持って明日を生きている奴もいるし、お前の為に死のうとする奴もいる。

だから、今は生きてやるべき事をやれ」

シナモンはニッキの手を握り、手を離した。

シナモンが手術室から出ると、数人の患者が

シナモンに集まってきた。

「あの!総長のご友人の方!ニッキ総長は…

その、どうなりましたか?」

心配そうにシナモンへ訊ねる。

「心配ない、今は息がないがあと三日も経てば

確実に生き返る」

大丈夫なのか大丈夫じゃないのかわからない返しに患者達は戸惑ったが、生き返るという

単語から笑顔になった。

「ありがとうございます!それが聞けて本当に

嬉しいで」

突然、遠くから何かが崩れるような音が響く

「何が起こった?」

シナモンと近くの患者で窓に近づく。

「何してる!屈め!」

近くの兵士がシナモンへ忠告する。

「撃たれるぞ!「ブルースカート」が攻めてきたんだ!」



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