成功作と変化
主人公の性質は、正直まだ決めかねてます。どうしようかな。
私はいつ起き上がってもおかしくはない『魔術師』と『その仲間たち』を見つめながら、菱銀さんに彼女たちの名前を聞いた。『魔術師』の名が『長村 魔実』といい、その名の通り彼女たちの住む集落の長の家の娘だそうだ。その仲間であり付き人は、それぞれ『二藤 鉄郎』と『三浦 真弓』という名で、二藤が鍛冶師の家の長男、三浦が狩人の家の長女だそうだ。
そういえば、菱銀さんも大分私の姿になれたのだろう。今では焚火を挟んで私の正面に腰掛けながら、摘んでいた山菜などの類を持参のすり鉢で摺り、濡らした手拭いと防火布で包んで蒸らした粘度が異常に高い芋とその摺ってできた緑色の液体を練って、団子のようなものを作っている。それは何度と聞くと、草餅だと菱銀さんは答えた。彼女は練りたての温かいであろう餅を一つくれた。温度を感じられなかったのは残念だが、幸いなことに味覚はあるのだ。
そして悲しいことに、私は自分の最初の焼き草が誤った食べ方であったと知った。本当にあの膨大な時間は何だったのだろうか。この草餅に混ぜ込んだ草汁も同じ草から取ったものなのだが、あの『雑草しい』まるで大地の香りという名の拳で腹に強烈なアッパーをかまされたかのような後味は完全に消え去っており、代わりに若々しい茶葉のような甘味が芋の甘みと調和しており、それでいて僅かに鼻を抜けるような清涼感と舌奥を少しだけ掠め去っていく苦みがこの芋餅から重たさを奪っている。率直に言えば、とても野外で作られたものとは思えないほどに美味しい。菱銀さん曰く、内部の草汁を空気に触れさせ酸化させることが『肝』だそうだ。
食事中に私はもう一つ大きなことに気づいた。私がこの森で目覚めたころには確かにあった、自らの体から放出される『腐臭』や『死臭』といった不快な匂いがなくなっているのだ。さらに、自分のことながら気持ちの悪い粘性液体をふんだんに含んだスポンジ状の膨れた皮膚は、ふつうの人の指程度になっており、気味の悪い粘液で湿っておらず、硬い革のような質感のものになっていた。有り体に言うのならば、ゾンビなどといった腐乱物から、ミイラなどといった乾燥物になったらしい。菱銀さんに聞けば、目覚めたときには手などの末端部を残して、もうほとんどミイラ状態であったという。
この状態であるならば、恐怖を感じないといえばウソではあるが絶望的に恐ろしいわけではない程度だそうだ。
そんな食事のひと時を、筆談しながら過ごしていると、後方から大きく息を吸う音と共に誰かが動き出す気配が感じられた。誰かが起きたようである。




