表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/24

發財(ファーツァイ)

その村周辺の森林は薬草の宝庫であった。


この村で日常的に使われている薬草の品質は、「山間連合」に流通している最高級品がまがい物に見えてくるほどに素晴らしいものであった。最近この村に引っ越してきたという、菱銀ひしがねを名乗るこの村の薬師の保存処理能力の高さもその要因の一つであるだろう。それに加えて70年ほど前に飛来した龍の濃い魔力が森に残響しており、その魔力によって豊かな植生が育まれていることも大いに関係しているようだ。


その濃い魔力によって、「山間連合」周辺の獣どころか「大紅山ダーホンサン」の獣ですら相手にならないほど強力な獣が森を支配していることはこの村では厄介事として捉われていたが、それはむしろ大老ダーラオにとっては朗報であった。長旅の中でシャオ達に技術がばれ、隠す必要がなくなった彼は堂々と実践検証ができる相手が増えたことを非常に喜んだ。小馬シャオマー小藍シャオランの二人組も長旅で大老ダーラオに鍛え上げられ、この村近辺の森の獣にも単独で勝利できるほどの実力を備えていたことも薬草採取に大いに役立っていた。


この探検の末に見つけた蕭たちの東方交易拠点は「山間連合」での蕭の借金をあっという間に完済し、蕭の名は「山間連合」薬草取り扱い商人の第一人者へとして広く知られるようになるまでに至る。当然、彼らの後を追って「山間連合」の東の森に入っていく商人や用心棒たちが増えたが、東の森は蕭たち以外には依然として危険地帯であり未帰還者や行方不明者が後を絶たなかった。結局、蕭の商隊以外で東の森を抜けた者は出ず、東方交易拠点を蕭の商隊が独占することとなった。一部商人は大金を手に大老や小馬、小藍を懐柔しようと試みたが、長旅が育んだ彼等の絆を違わせることが出来なかったようだ。


蕭たちは2年おきに長村一家の治める東方交易拠点の村を訪れ、2から3か月ほどその村に滞在し、「山間連合」へ帰るという行商を繰り返す。彼らの滞在期間こそ短いが、蕭たちは村人たちの言葉を学び、その生活や文化を尊重して馴染もうと努めたことから、彼らはその村の一員として扱われるようになった。その信頼から、村人たちに伝わる非常に希少な薬草などの情報を早々に入手したり、時には薬草そのものを彼らの為に採取しておいたと言って渡されたりもしたことで、蕭たちの薬草知識は「山間連合」の薬師組合が発行する最も格式高い草本事典を超えた。蕭は「山間連合」において、最早薬草の権威となっていたが、彼は東方の村では菱銀を師と仰ぎ、その相方で後に菱銀の伴侶となる医術師とも水魚の交わりともいえるような親しい間柄を築いた。もはやそこは、蕭にとってもう一つの故郷のようになっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ