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第17話 炎の大剣『ブレンガルド』


◇グレイスの視点です

◆神の視点です


 オスヴァルトは翼竜騎士団と敵側の軍勢がせめぎあっていた境界に立ち、近寄りがたいほどの威圧感を放っていた。


 味方側の一般龍兵たちはみんな立ちどまり、攻め入ることができない。

 しかし、オスヴァルトと炎龍(えんりゅう)は自ら動こうとはせず、誰かが来るのを待っているようだった。


「オスヴァルトォ!」


 彼の前にシュフェルが龍に乗って飛んできた。

 シュフェルに続いて、レゼルもやってくる。


「オスヴァルト……!」


 オスヴァルトは自身の胸に腕をかざし、大仰(おおぎょう)に礼をしてみせた。


「おやおやこれはこれは、レゼル様にシュフェル殿。

 思わぬところで再会いたしましたな。

 最後にお会いしたのは……三年前でしたかな?」

「なにを白々(しらじら)しぃことを……!」


 シュフェルが()みつく。

 レゼルも怒りを(にじ)ませた表情を見せている。


「ええ、最後に会ったのは三年前です。

 前に会ったときは、まともに剣を交えることすら(かな)わなかった。

 私たちが弱かったからです。

 ……でも、今は違います。

 この三年間、シュフェルとともに技を(みが)きつづけてきました。

 すべてはあなたを倒し、父の(かたき)をとるために!」


 レゼルとシュフェルは剣を構えた。

 父・レティアスとともに剣の使い方を教えてくれた、かつての師に向かって。


「ふふ、弱い者同士で技を磨いていったい何になるというのか」


 オスヴァルトが背中に担いでいた大剣をにぎり、振りかざした。


「帝国皇帝こそ現人神(あらひとがみ)

 皇帝より授かりしこの剣で、今一度その身を焼かれたいと申すのか!」


 炎の神剣『ブレンガルド』は、大柄なオスヴァルトの背丈を超えるほど長く、幅広の大剣だ。

 炎そのものが凍てついてできあがったような剣であり、赤銅(しゃくどう)色の刀身は内部に炎を秘めているかのように揺らめいている。


 剣が振りかざされた瞬間、周囲に猛烈な熱気が立ちこめた。

 あたかも、小さな太陽がこの島に突然出現したかのようだった。


「あなたたちの狙いは給油庫を焼きはらうことですな。

 私を倒さなければ給油庫にはたどり着けませぬぞ?」

「ならば、あなたをこの場で倒すまで……!」

「ぜってぇアンタをぶった切る!」


 レゼルとシュフェルは目配(めくば)せをし、ともに龍と共鳴すると、ふた手に分かれた。


 レゼルとエウロがオスヴァルトの向かって左手に飛行していき、シュフェルとクラムが右手に高速で駆けぬけていく。

 ふたりはそれぞれ大きな()を描くようにオスヴァルトに接近すると、合図もせずにぴたりと同じ時期(タイミング)で斬りかかった!


突風(ブラシア)』!!

(エクレ)(スペル)』!!


 リーゼリオンから巻きおこされる強烈な風をまとって迫るレゼルと、雷電を身に帯びて突撃するシュフェルがオスヴァルトに襲いかかる。


 しかし、オスヴァルトはその巨躯(きょく)からは想像もできない軽やかな動きで身をよじり、ひとつの刀身で三本の刃を受けとめた!

 刀身が交わりあうのと同時に、衝撃が空間を伝わって島じゅうの兵士たちのからだを震わせた。


 続けざまにレゼルとシュフェルが攻撃を叩きこむが、オスヴァルトは大剣をまるで短剣でも扱っているかのごとく自在に(あやつ)り、すべての攻撃をいなしていく。


 レゼルは双剣、シュフェルは両手持ち、オスヴァルトは片手持ちと両手持ちを自由自在に切り替え、四本の剣が入り乱れる。


 風のように多種多様な軌道(きどう)で次々と繰りだされるレゼルの双剣、雷電のように直線的ではあるが一撃一撃が重いシュフェルの長剣。

 まったく質の異なる太刀筋を、オスヴァルトはいともたやすく(さば)いていく。

 オスヴァルトの剣の技術は、(じゅう)(ごう)の両方を兼ねそなえていたのだ。


 三人のまわりで風と雷と炎がぶつかりあい、噴きあれる。


 龍の御技(みわざ)でひき起こされる風や雷は、あくまで凝集(ぎょうしゅう)された自然素の塊だ。

 一見性質の異なる自然現象でも、同じ龍の御技で相殺(そうさい)することができる。


 レゼルとシュフェルは接近したり離れたりしながら風の刃や電撃を織りまぜているが、すべて機先を制して発生される炎にうち消され、オスヴァルトや炎龍の身には届かない。


 ――いまだに、これほどのちからの差があるなんて……!


 レゼルは懸命(けんめい)に剣を振るいながら、動揺(どうよう)を隠せなかった。


 シュフェルとともに猛攻を仕掛けているというのに、オスヴァルトにはまったく崩れる気配がない。

 崩れるどころか、激しい攻防の合間を()ってオスヴァルトから繰りだされる反撃は強烈で、押されているのはむしろ彼女たちのほうだった。

 ふたりがかりでなければ、とっくに斬り伏せられている。


 そして、ふたりの攻撃が同時に途切れた刹那(せつな)にオスヴァルトが技を発動した。

 レゼルとシュフェルが自分たちが失敗(ミス)をおかしたことに気づいたときには、もう遅かった。


(フオ・)(ヴィアイベル)


 オスヴァルトが下方から斜め上に剣を振るうとともにブレンガルドから灼熱の炎が噴きだし、巨大な炎の渦がとぐろを巻く。

 オスヴァルトをとり囲むようにして発生した炎の渦が、黒煙(こくえん)をあげてレゼルとシュフェルに襲いかかった。

 ふたりとも剣を振りきった直後を狙われ、回避することができない!


「くっ!」

「あぅ!」


 レゼルはとっさに自身の周りに風を巻きおこして炎の直撃を回避したが、シュフェルは利き手側の右腕をもろに焼かれてしまっていた。


 直撃は回避したものの、レゼルも全身のいたるところに火傷(やけど)を負ってしまったようだった。

 衣服もところどころ焦げている。


 レゼルはオスヴァルトからいったん距離(きょり)をとり、シュフェルを乗せたクラムに指示を出す。


「クラム、シュフェルを退避(たいひ)させて!」


 クラムは承諾(しょうだく)したことを示すようにひと声吠えると、戦線(せんせん)を離れた。


「ばかっ!

 アタシはまだ戦えるのに!!」


 シュフェルは左手でぽかぽかとクラムの頭を叩いて抵抗するが、剣もろくににぎれなくなっていたのは明らかだった。

 クラムは悲しそうな顔をしながらも、味方の陣営へと駆けもどっていった。


 クラムが無事にシュフェルを連れもどしたのを確認すると、レゼルは再びオスヴァルトに向かって剣を構えたのであった――。




 でてきた神剣まとめ


①風の双剣リーゼリオン:


 風を自由自在に操る双剣。


 緩やかな曲線を描く刀身はエメラルドのような輝きを放つが、貴石でも金属でもない、この世の物ではない材質でできている。

 取っ手には流れる風のように複雑で繊細な細工が施されており、持つと二本とも羽根のように軽い。


 ちからを最大限に引きだすと大気の流れを自在に操ることができるようになる。


 二本で左手持ち、右手持ちの違いはあり、レゼルは左腰に右手剣を、右腰に左手剣を差している。


②炎の大剣ブレンガルド:


 炎を自由自在に操る大剣。


 大柄なオスヴァルトの背丈ほどもある幅広の大剣。

 赤銅色の刀身は内部に炎や溶岩が秘めれているかのように揺らめいており、炎そのものが凍てついてできたような剣。


 ちからを最大限に引きだすとすべてを燃やしつくす劫火を自在に放つことができるようになる。



 もちろん、これからほかの神剣も登場していき、戦いの中心をしめていくようになります。


 次回は2022/3/13の19時以降にアップ予定です。何とぞよろしくお願いいたします。

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