表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/330

第12話 嘘みたいなまぐれ

 固定砲台(こていほうだい)巨大機龍(きょだいきりゅう)を続けざまに撃破した勢いはとまらず、翼竜騎士団は勝利を収めつつあった。


 敵兵はあらかた片づき、大勢(たいせい)は決している。

 あとは、まだ戦意を保っている残り少ない敵兵を倒すだけだ。


 しかし、騎士団側にも消耗しきっている者たちがいた。


「ハァッ……ハァッ……ハァッ……!」


 レゼルは大きく肩で息をしていた。

 味方を(まも)るために大技を連発しつづけた結果、心身の疲労が限界へと達していたのだ。


 前線ではシュフェルがまだ戦っているが、彼女ももう龍の御技(みわざ)は繰りださずに、()の剣技で戦っている。


 エウロになんとかまたがりながらもふらついているレゼルの背後で、砕けた機龍の残骸(ざんがい)がわずかに(うごめ)いた。


 残骸に身を潜めていた敵兵が、籠手(こて)に仕込んだクロスボウで矢を撃ちはなつ!

 レゼルは自身に迫る矢に気づき振りむいたが、疲労が強く、反応が遅れてしまった。


姫様(ひめさま)ァ!」


 近くにいたブラウジが危険に気づき叫んだが、レゼルはまだ回避行動をとれずにいる。

 矢は真っすぐに、彼女の左胸へとめがけて飛んでいった!


 ……だが、弓矢はレゼルには刺さらなかった。


 すんでのところで、矢は俺の投げたナイフに空中で当たり、軌道(きどう)を変えたからだった。


 残骸に隠れた敵兵が再度クロスボウを構えていたので、こちらへも再びナイフを投げた。

 ナイフはうまいこと飛んでいき、クロスボウの台座(だいざ)を貫く。


 ……間一髪(かんいっぱつ)、間に合ったようだ。

 ブラウジが駆けつけ、矢を撃った敵兵にとどめを刺す。


「……グレイスさん、ブラウジ、ありがとうございます。感謝します」


 息があがったままふらついているレゼルが、俺とブラウジの助けに気づき、礼を言う。


「もう勝敗は決した。

 あんたは引きさがって、からだを休めたらどうだ」

「いえ、それはなりません。

 皆がまだ戦っているのを残して、私だけ身を隠すわけにはいきません。

 シュフェルも疲弊(ひへい)していますが、まだ(たたか)っています」


 レゼルは首を横に振った。


 決意に満ちた表情だ。

 このまま無理に説得(せっとく)を続けても、彼女はけっして引きさがらないだろう。


「……そうか、わかった。

 偉そうなこと言って悪かったな。

 また援護(えんご)はするけど、あまり無理はしないでくれ」

「ええ、気を付けます。どうもありがとう」


 レゼルはほほえみを見せ、エウロに指示を出してまだ闘っている味方のもとへ向かった。



 俺も飛んでいったレゼルたちを追いかけていこうと思ったのだが、ブラウジがやってきて声をかけてきた。


「姫様を助けてくれて、かたじけないのう」


 ブラウジは笑顔で、両手を広げて礼を述べる。

 彼から感謝(かんしゃ)の意を(ひょう)されたのは、これが初めてかもしれない。


「これはこれはご丁寧(ていねい)に。どういたしまして」


 俺も右手を胸に()えて、丁重(ていちょう)にお返しした。


 だが、(かぶと)の奥でブラウジの眼光(がんこう)が鋭く光る。


「しかし、飛んでいるクロスボウの矢に投げナイフを当てるなど、大した腕前(うでまえ)じゃ。

 一介(いっかい)行商人(ぎょうしょうにん)の技とはとても思えんがのう……?」


 ブラウジの言いがかりに、俺は肩をすくめてみせる。


「こう見えても帝国貴族の(はし)くれだからね。

 護身(ごしん)のために投げナイフの心得(こころえ)があるのさ。

 それに、たまにあるんだよ。思ったとおりにナイフが飛ぶことが。

 偶然(ぐうぜん)だね」

「なるほどのう。

 さすが帝国貴族というわけじゃ。

 ()()()()()、姫様を救ってくれてよかったワイ」


 ブラウジは俺に疑惑(ぎわく)のまなざしを向けていたが、やがて視線を切るとレゼルの後を追って龍で飛んでいった。




 やっぱりちょくちょく怪しさを醸しだしてくるグレイスさんなのでした。

 今回はキリがいいところまで。短めですみません。


 ちなみにレゼルは持久力がないわけではなく、消耗した分だけの戦績をあげています。

 風の双剣(神剣)を使用して出力が大きい分、消費も激しいというイメージです。


 次回は3/1(火)の19時以降にアップする予定です。何とぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] かなり疲弊している様子のレゼルさん、ちょっと心配ですが皆と一緒に戦い続ける姿はとてもカッコイイ……! グレイスさんの投げナイフはもしかしたらすごい技術なのかも……どこかで修業した、とか?…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ