ナピカル
彼女だ!間違いない
×××!
声に出したつもりだが出なかった。そもそも彼女の名前を思い出せなくなっていた事に驚く。こうして目の前にいるのにどうしてだろう
日焼けとは無縁の雪色の肌、大人美た佇まいだが、今すぐにでも消えて居なくなってしまいそうな儚さを感じさせる。瞳は澄んでいて綺麗だが、何処を見ているのか分からない。違和感があるのは横髪を耳元で切り揃え、肩に届かない程のショートヘアーだからか。
「あなたは…」
彼女の瞳か大きく見開いた。まっすぐに俺を見た。まるで困惑したように
そこで初めて俺は、初対面の女性に強く腕を掴んでいた事に気づく。
彼女、じゃない
「…ごめん」
掴んだ腕を離そうとしたら、彼女似の女性は俺の左手を両手で包んだ。
まるで優しく諭すように
「あなたは、ソウタ・トート。」
もしかして俺の事を言っている?
…!?
あれ…俺の名前って何だっけ…
彼女の名前だけでなく、自分の名前も思い出せなくなっている。それに、ここは何処だ?明らかに見覚えのない通り、通学路にこんな洋風で趣きのある道はなかったはずだ。
「あなたの名前は、この世界ではソウタ・トートと言うのね。」
この世界?ここは日本じゃなくて外国なのか?
それにどうしてだろう、声が出ない
「ここはLeafという世界。あなたが居た世界とは違う異世界。」
声も澄んでいて綺麗だった女性は、俺の心を読んでいるようだ。よく見ると、異国風の民族衣装のような服を着ている。
「あなたは異世界に飛ばされた影響でショック状態に陥っています。そのせいで記憶を失い、声も出せないのだと思われます。」
先程までとは違い、静かに淡々と述べてゆく。目線は合わず、表情も翳りがある。
「…私は魔道士として、あなたのように、異世界から飛ばされた人達を保護する役目を与えられています。そして…」
どうにかして、彼女の心の奥を覗きたい
その一心で目を合わせた。
魔道士と言った彼女は、再び困ったような表情をした。自分と同い年位の年相応の仕草だった。
「名前を教えてほしい。」
「な、名前…私のですか?」
表情が変わるごとに色味を帯びてゆく姿に釘付けになってゆく。最初とは別の意味で目が離せなくなっていた。
「わ、私は、ナピカル…ナピカルと言います。」
少し声を震わせながらも、彼女は答えてくれた。
「彼女」に似ている事よりも、枠という枠から溢れんばかりの、色を持った、美しい女の子
ナピカルは緊張した面持ちのまま、まっすぐに俺の目を見た。




