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第4話「何故と謎」

アンコはマロンとツインの顔を交互に見た後、下を向いた。

 元帥のやっている事は狂っている。人は物。こんな考え方をする奴が政治をしているとは、たまったもんじゃない。

 場にいる全員が沈黙する。そして、マロンが口を開く。


「今、俺たちがやろうとしている事は危険な事だ……。それでも、ここに住んで良いのか?」


 国民を巻き込みたくないマロンは、もう一回忠告をする。それでもアンコは頷く。


「背に腹はかえられない。助けると言ったら助ける。

 正直、君たちの事情は察していた。私が元帥だったら薬を使って支配した方が手っ取り早いからね。」

「そうか……。良い人に出会った。どう感謝したら」

「ありがとう。それだけで私は十分」

「……ああ、ありがとう……」


 信用できる人が1人増えた。マロンの冷え切った心に少し暖かい光が灯る。


「そう言えば君の名前を聞いていなかったな。名前は?」

「アンコ」


 名前だけを言う。足りない気がするが赤の他人同士なら、十分な情報だ。これから相手の事を知れば良い。

 アンコはツインを立たせ、2階へ連れて行く。

「マロンも来いよ。服とか必要だろ?」

「女性1人なんだから、俺に合う服なんてないだろ。ツインのだけでいいよ」

「なら、ツインとお風呂に入ってからマロンの服買ってくる」


 そう言って、2階へ消えて行く。しばらくマロンは1人で居たが気になってしまい2階へ上がる。


「あ、結局来たんだな」


 扉からアンコが顔だけ出す。何やら困っているようだ。

「どうしたんだよ」

「服選びに困ってて……今、シャツとパーカーしかないんだよ」

「気にしなくてもツインはよく部屋着にパーカーを着ていたからな。そうだな……赤とかどうだ?」

「あ!いいかも!!この白のシャツと短パンを着てみよう!」


 バスタオルと選んだ服を素早く取り、アンコは走って1階の風呂場に向かった。

「騒がしい奴」


 クスリと笑い。マロンも1階へ降りて行く。

 外はオレンジ色の光でいっぱいになっていた。

 ある部屋の机の上。夕日を浴びる銀色のドックタグがクルクルと回る。



 チャプンと水の音が反響する風呂場。ツインとアンコは湯船に浸かりながら会話をする。

 話しかけても答えが返ってこない、中身の無い会話だがアンコは根気よく話しかける。


「ツインの好きな物や嫌いな物は!」

「……」

「じゃ、君の趣味は!」

「……」

「本とか読むか?今度、読んで欲しい本とか教えるよ!!」

「……」

「その、君の事がもっと知りたいんだ……うざかったら止めてくれ」

「……」


 ずっとずっと話しかける。少し話題を変えようと、ツインが付けてる赤いピンに触る。

 すると、急に手首を掴まれる。おまけに睨まれる始末。それだけ大切な物なんだろう。


「すまなかった……」

「……どうして」

「ぁツイン……今話しかけて」

「どうしてほっといてくれないの……」

 

 今すぐにでもほっといて欲しい。ツインはそう言っている。


「ほっとけない。たったそれだけ。

 あまり深い事は考えないよ。

 でもね、不思議と思うんだ……2人が私の兄妹のようだなって」

「……何故?」

「ほら、こうやって敬語を使ってない所だよ。何故か自然と溶け込んでいる。おかしいよね。赤の他人なのに」

「そう……」

「敢えて距離を置かせる返事……。

 もしかしてツインってさ……こうやって自暴自棄になるのって、また大切な人を作らないようにするためなんじゃないの?

 だからマロンに反応しないんじゃない……かなって」


 ツインがじっとアンコを見る。まるで合っていると目で言っているようだ。


「そうですか。じゃ、出ますかね。

 ツインの服から赤黒いリボンを見つけたんだ。これも大切な物なんだろ?せっかくだから髪、縛ってあげる。君はツインテールが似合いそうだ」


 2人で手を繋いで湯船から出て、体を拭く。

 その時ツインは少しだけアンコの体を見た。古い傷と火傷がたくさんある。ツインの中でアンコについて知りたい事が増える。

 何も言っていないがツインの疑問に気付いたアンコはこう答えた。


「そう驚かなくても君も火傷や傷はあるでしょ?

 昔、やんちゃな事してこうなったんだーあははー。……マロンには秘密ね」


 そう言って人差し指を口元に近付ける。

 ツインは自分の火傷跡に触る。アンコの火傷跡はツインとよく似ている。何か爆発物や強い火が体に当たったようなそんな跡だ。

 アンコは何か嘘をついている気がする。それでも場の暖かい雰囲気が嘘を付いている事を忘れさせる。

 服を着終わった辺りからツインはあまりアンコの傷跡に関して気にしなくなっていた。そして、髪はいつの間にか2つに縛ってあった。


 ツインが脱衣室のドアを開けると目の前にマロンが立っている。


「あ、ツインって……あれ、2つに縛ったのか?」

「……うん」

「おまけにリボンまで。昔のツインに戻ったみたいだ」

「……うん」


 気付かないぐらいの声で相槌を打つ。

 マロンはニコニコしてる。対してツインは無。後ろで見ていたアンコは、マロンのシスコンさに鳥肌が立つ。

「シスコンかよ……」

「アンコ、全部聞こえてるぞ」

「妹離れしろっつうの」

「無理だ!アンコも大人ならこの若い俺の妹を見て頬を緩ませ!!」

「待て、私は16歳だ」


 マロンが停止する。今、アンコは自分は未成年だとサラリと言った。未成年ならこの家に親がくるのでは?

「……親……」

「良かったな安心しろ。一人暮らしだ」


 未成年で1人暮らし。ますます混乱するマロン。『謎』が頭の中で高速反復横跳びし始める。ついにはオーバーヒート。


「……お兄……ちゃん」

「混乱しておるな。でも、もう1人暮らしじゃなくなった。えーとそうだな……君達、welcome to my home.」


 アンコがマロンに近付き、額へ手を伸ばしてきた。何をするのかと思ったら強烈なデコピンを喰らわしてきた。かなり痛い。タンコブができるぐらいに。

 外は時刻は5時と言うところ。満足したアンコは急いで買い物の支度をする。

 その間兄妹は顔を見合わせ驚く(ツインは無)。かなりインパクトを与えてしまったらしい。

 アンコはドアの前に立ち、元気いっぱいの笑顔を見せてから外に出て行った。

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