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第1話「いつもの日常 新たな遭遇」

「痛ったたた……」

 爽やかな朝の中、ベッドの上で黒のメッシュが特徴的な茶髪の少女───アンコが起き上がる。

 ベッド近くの時計を掴み、時間を確認する。針は午前6時30分を指している。

 どうやらいつもの起床時刻より早く起きてしまったようだ。しかも、二度寝をする気分じゃない。

 原因は昨晩に見た、あの不思議な悪夢のせいかもしれない。

「なんだろうなあの夢。思い出したくもないな、特に序盤の部分は」


 時計を元の位置に戻す。その時、ぴちょんと何やら水滴が落ちたような音がした。

「大量の冷や汗かくぐらいの事だったかな」


 下を向いてみる。そこには、赤黒くて水っぽい……。

「うん、血ね。……なんで」


 咄嗟に自分の手を見てみる。ここから血が出ているようだ。しかも、宝石のようにキラキラと赤く光るガラス片付き。

 次は鏡を見てみる。見事に赤く粉々に割れている。

 アンコは少し考える。次に息を吸う。最後にお腹から声を出してさけんだ。


「包帯ぃぃぃぃぃぃ!!」


 そんなこんなでアンコの一日がスタートする。



 なんとか応急処置を終えたアンコは、洗面台の前で身支度をする。

 茶髪を緑のシュシュで、可愛らしい2つ結びにする。いつまでも変わらないお気に入りの髪型。

 結び終わったら、真っ黒なTシャツの上に濃い抹茶色のパーカーを着る。そして、いつも通りのアンコとなる。

「よし、完璧っ」


 誰もいない空間で1人、ドヤ顔と決めポーズをしていた。寂しいものだ。

 早足にリビングに向かい、椅子に座り時計を見る。

 時刻は7時に近い。いつもならまだ寝ている時間と、新聞が来ている時間だ。今日は新聞を待ってみよう。

 その間、夢について考えてみる。その中で気になる点があった。


「白い人型……」


 謎の人物。女性的なフォルムと声をしていたため、女性なのは確定だろう。だがそんな事よりも気になるのは人型が発した言葉だった。


「確か『わたしと一緒にこの国を変えて』だっけ」


 どの記憶にも聞いたことの無い台詞だった。ただ、昨晩に初めて言われたと言う記憶だけだ。

 一般人が国を敵に回すような事は絶対にしない。

「私、なにかしたのか?」


 思い返してみても、心当たりがない。

「ま、夢だからって言うのが結論かな。以上解散」


 同時にガコンッと外のポストに新聞が入る音がする。待ってましたと思いながらドアを開ける。

 その瞬間……アンコの目の前で銀色の尖ったものを向けられる。ナイフだ。


「止まれ」


 この一言だけでも威圧感は充分にあった。確実に、相手はアンコを殺すつもりだ。

 咄嗟に両手を上げると同時に、相手の体と顔を瞬時に見て把握する。そして、暴れても無駄だと悟る。相手は筋肉のある男性だからだ。

「要求は一体何」


 強盗だと思い要求を聞いてみる。すると意外な事を言ってきた。


「ここに俺たちが来たという事を秘密にしてくれないか」


 と……。そしてアンコは


「どうして?」


 と咄嗟に返してしまった。殺される。

 でも相手はナイフを降ろし、悲しそうな顔でこういった。


「新聞を見ればわかる」


 男がポストへと歩き、中の新聞を取る。そして最初の一面をアンコに見せる。一番目のつく所にある事が取り上げられている。


『軍から2人の脱走兵が出る 見つけ次第連絡を』


 その下には顔写真付きの詳細が長文で書かれている。

 顔写真は2枚あり、赤と緑の瞳を持つ筋肉質な男性『マロン』と、赤の瞳を持つ黒く長い髪の女性『ツイン』と言う人物が記事に載っている。


「もしかして君がこの記事に載っている、マロンと言う人か?」


 そうだと言うように首を縦に動かす。この女性はマロンが『俺たち』と言っているから近くにいるのだろう。

 マロンがアンコに新聞を返す。

 「こう言う事だ。俺達はもう行く。この事は忘れてくれ」

 そう言うと片足を引きずりながらフラフラと引き返していく。


「待ってくれ!!」


 アンコは叫ぶ。マロンは止まると真っ直ぐこちらに振り返る。

「腹減ってないか?」

 なんて変な事を聞いているんだ。でも、マロンは答えてくれる。


「気にしなくてもいいさ。なんとかする」

「はは、無理だなそれは。ざっと見ると君、足を捻挫して当分は走れないようだね」


 マロンが呆気に取られている。図星のようだ。こんな事はあまりしたくないが、気が変わった。


「近くにいる黒長髪と一緒に、家に入れよ。手当をするし食事も出すよ」

「無理だ、入る事はできない。こんな事俺たちにとっては罠のようなもんさ」

「さーご飯をつくろうではないかー」

「話、聞いてたか!」

「黒長髪の人はどこ?多分君たち一睡もしていないだろうし、布団も用意してあげよーはっはっはー」

 そう言ってマロンの前に立つ。


「初対面だから信用ならないと思うけど、国には言わない。約束する。

 君たちも信用できる人が1人でも増えれば安心だろ?」

 そう言って握手をしようと誘うように手を出す。

「君の家が狙われ、ここが戦場になるかもしれない……それでもいいのか?悲惨なものを見る事になるぞ」

「リスクは承知の上で提案している。だから、一緒に住まないか」

「……わかった」

 握手をする。その後、マロンが黒長髪の子を連れてきた。何故か無気力になっているのが気になるが、話は後。2人を先に家に入れる。

 そして、アンコは遠くに建っている高く黒い建造物を睨みながらドアを閉める。

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