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魔法薬の正体

「お、いたいた、なるほど…」


昨晩の襲撃者は深い草にうずもれて眠っていた。


「でっかい鳩…美脚…?」


脚部が変異し飛行能力と引き換えに瞬発力を手に入れた、犬程の大きさもある鳩は覗き込むリィルに気づく素振りもなく眠りこけている。鳩が動かないのを確認するとその場にしゃがみ込み、昨日折れた釘を取り出す。


針になれ(ナデラーデ)


杖で浮かして呪文をかけると釘は空中で細く鋭い3本の針になり、リィルが杖先を振ると浮いた針は鳩の脳天・頸動脈・心臓を静かに貫いた。


・・・


死んだ鳩を枝に吊るし、羽や皮を剥いで血液を抜く。抜いた血液はそのまま地面に垂れ流しにせず、穴を掘って、血が抜けたら土をかぶせて埋めておく。本来なら抜いた血液も小瓶に詰めて特性を調べて薬にしたいところだが、口惜しいことに今回はそれができない。昨晩リィルが放った魔法薬はフルニトロという植物から作った揮発性睡眠薬。睡眠薬というよりも麻酔薬に近い程強力な催眠効果を持ち、吸い込まずとも皮膚から吸収され、一瞬で昏睡状態に陥ってしまう危険な薬だ。


「…内臓も薬には使えないなぁ…いや、火で炙って消毒すれば大丈夫か…」


杖を一振りすると鳩の肉が炎に包まれる。直ぐに火は消え、そこには干物のようになった鳩の肉があった。それをそのまま袋に詰めてバックパックにしまう。

本当は時間かけた方が保存も効くんだけどなぁ…今は時間がないし…

昨晩リィルが飲んだのは、大陸を渡る船の上で発明した『寝ずに働いてやる!3週間効く!超滋養強壮薬』だ。これを飲めば三週間の間、何があっても眠ることはないし、眠る必要もない。ただし、その副作用として──


あぁ…だめだ…何かに集中してないと落ち着かない!


集中しないと落ち着かないというある種矛盾した精神状態を引き起こす。


お片付け(アフロイメ)


朝まで魔法薬を調合し続けて何とか集中を保ったが、一度集中が途切れてしまうと薬の副作用でもう一度集中し直すのが難しい。ポーションテーブルを閉じ、バックパックや鞄を身に着けて歩き出す。何をするにも集中できないなら何も考えずに歩くしかない。幸運にも森の中は瘴気が薄く、焼けつくような喉の痛みこそどうにもならないが、呼気は安定し咳もしばらく出ていない。獣の鳴き声が響く森の中をテクテクと歩いていく。


薬が効いている三週間のうちに森を抜けて大陸の中央まで行ければいいけど…


昨日までとは一転して薬草には目もくれない。でかい鳩に襲われてようやく、自分の置かれた環境を自覚できた。呑気に魔法薬を作り、頼もしい仲間のいる旅はもう終わった。ただここから生きて帰る事だけを意識する。旅に必要な魔法薬はすべて昨日の夜から作っておいた。力も魔力も技もないリィルにとって、魔法薬は唯一の生命線である。


幽玄のローブは無敵じゃない…あの鳩もそうだけど、魔力感知能力が高い相手には見つかる場合があるんだ…だから見つからない努力だけじゃ意味がない。戦闘にならないように生息地を避けつつ、それでもだめなら魔法薬を使う。ケチってたらこっちがやられる。


麻酔薬。即死の劇毒。幻覚薬。覚醒薬。人間領なら法で禁じられているような薬でもリィルは容赦なく相手に盛る。それが王都を発った時のリィルの覚悟である。


「ここから三週間…休みなしか…肉体よりも精神的にきついかも」


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