彼女のことをずっと中心に考えてた。けど、いつからかは自分のことで頭がいっぱいだった。
ふと、思った。
いつから、彼女を見る前に、彼女の身体を見ていただろう。いつから彼女の笑顔より、自分の欲求解消を求めていただろう。
これは、俺が付き合ったときに起きた話。こんな経験なんてもう、二度とないだろう。いや、ないことが望ましい。
中学時代、好きだった女の子が居た。その子に必死にアピールをはじめたのは中学2年のときだった。最初の頃はすごいいやがられ方をしていた。何を話そうにもあまり興味がなさそうに「あっそ。」で終わっていた。その女の子の名前は、和泉という名前だった。数ヶ月が経つ頃には、和泉とはある程度仲良くなり、どうでもいい雑談や帰りにたまに一緒に帰るなんてこともあった。
でも、毎回集合するのは人目のないところだった。当時はただ周りに言われたくないだけかと思ったが、今思えば好きでもない人と一緒に帰るわけだし、あまり長い時間拘束されたくなかったのかもしれない。
3年生にあがる頃にはメールをするような仲にもなり、夜まで話すみたいなこともあった。多分このときは彼女もまんざらではなかったのではないだろうかと思う。しかし、物事はそう簡単に上手くはいくはずもない。俺と和泉の間には共通の友人、聡が居てその子が和泉に「涼(俺)と付き合ってあげれば?」と連絡をしたらしい。その後は俺は何があったかはわからないが、次の日和泉に普通に話しかけたら、「あんたのせいで聡とけんかした。もううざい」と言われてしまった。俺にとっては、一体何が起きたのかもわからないし、何せそんなこと頼んだ覚えもない。しかし、和泉から完全に拒否されてしまった。
本当にその日から、連絡も全く取れなくなった。和泉から返ってくるのは「用事あるときだけにして」とか冷たい返ししかこなくなり、流石の俺ももう諦めることにした。それでもまだ仲がよかった頃、同じ高校へ行こうと言っていたので、まだ少しの可能性を信じ、俺は高校受験へシフトを切り替えた。塾へ入り、今までのゲーム生活もやめ、すべてを勉強へ送った。
その結果、無事合格することができた。しかし、和泉からは1,2ヶ月前にある連絡が来ていた。
「私は、工業高校やなくて農業高校へ行くね。一応連絡。」という連絡。
これは、彼女なりの優しさだったのだろうか。正直今考えてもわからない。だが、俺は工業高校へ進むことを決め、和泉とはそれっきりとなった。