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何も無かったかの如くその思考を振り払う。しかし、普段なら到底注目に値しない小物体、私の人生に何ら影響し得ない。
思春期に特有と云うべき衝動的思考である。凝り固まったものを丁寧にほぐすように、二、三頭を左右に回し、何事いモノに、何故思索を絡め取られたのだろう。偶然か、巡り合わせか、はたまた。
コンクリートを靴が踏みつける時の、あの独特の感触を覚えながら、歩を進める。私はそれを知っているのか。私は戸惑った。目覚めてからずっと、妙な気分だ。まるで、現実ではないような。
例えば、そう、幻覚だ。ここは夢の中なのではないか、現実の私はこの世界にいないのではないか、私が見ているものは全て幻で、現実の私は、全く状況に適さないことをしているのではないか。
そう思ってしまう程に、この世界に違和感を覚えていた。私が見ているこの景色は、何なのだろうか。ここが現実という実感はない。しかし、幻にしては、空想の世界だとするには、今の私はこの世界に適応しすぎている。全てが初めての様で、慣れている。
私は、一部の記憶を失ったのだろうか。だから、分からないが、知らないが、生活、生活を、無意識に続けようとしているのだろうか。