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「ああ、初めてだからね、そう思うのも無理はないさ。さあさ、いらっしゃい。初心者はこっちがいいだろうね。」
彼女の無邪気な、超越的な瞳の中に私の不満は黙殺された。そう、連れて行かれたのは鈍色の(正確には鈍色などない)空間だった。
「あれは、何ですか?」
そう私が聞くと、復た笑って、
「其れは君自身が一番知っているじゃないか。」
と。
そして、訊き返す間もなく、其の鈍色は私の体内に侵入して私の意識を奪った。
***
目が覚めると白い部屋の中にいた。物が無い訳ではないけれど、私を取り囲む白い壁が厭にその存在を主張してきた。妙な夢を見た気がするが、仔細は思い出せない。時刻は8時を過ぎていた。
学校へ行かなくては。そう思い、鈍色の鞄を手に取り、家を出た。
玄関扉を潜り抜けて三歩、私は突然に困惑した。これは一体、私に関係のあることなのだろうか。しかし、この歩を止める訳にもゆかないのだった。
革靴がコンクリートを叩く、叩く、叩く。道端の雑草が妙に生々しい。都市の排気に育まれたそれらは、恐ろしく見えるのだ。同じ空気を吸っている私は。はっとして現在に舞い戻り、目を上げると、マンション三階のベランダに真っ赤な下着だ。エロティックな小部屋と僅かな差異を持つ他の部屋の数々についてのイマージュが湧く。