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新しい出会い

今日の分の仕事をある程度終え、凝り固まった体をほぐす。


思っていたよりも早く仕事が進んだため、当初考えていた計画を修正してもよいかもしれない。


昨夜の内に爺様にも連絡を送ったからそのうち赴けるだろうし…

となるとこの後は仕事終わりの夕方に行くつもりだった予定を前倒しにしても構わないだろう。そう考えを纏めて席を立つ。



「シルヴィア、何処かへ行くのか?」


「ええ団長。思ったよりも仕事が早く進んだので、ディラスの大森林へ魔道具の材料を採りに行ってきます」



シルヴィアの目の前で話しているのはシルヴィアの兄弟子、且つ魔術師達の仕事場である塔の一番の実力者であり最高権力者のラドルフ・ラフィレーヤその人である。


陽の光を溶かし込んだような淡い金糸に優しげな翠の目を持つ顔の整っている背の高い美青年だ。

まあ、その容貌に騙され腹に何か抱えているのに気付いていない人が大半だが…



「早いな。それにまた新しい魔道具か。これで一体幾つ目だ?」



「さあ?そんなに気にしてないですからねぇ。大体50くらいはいってるんじゃないですか?」



「本当にお前は凄いな。是非ともこの席を譲り渡したい」



「お断りです。そもそも副団長でさえ拒否してたのを無理矢理押し付けられてるんですから…」



本当なら熨斗つけて返したい所なんだから…



「まあ、あれだ。権力欲のある奴程、実力は伴わんからなぁ。魔導師の名を持つ者までとなるとそんなものより自身の研究であるし…


今塔にいる者で最も実力があるのは俺達でまともにこういうもの(書類仕事)が出来るのも俺達だけだからな」



「その上ラドは要らないことにまで手を出して仕事増やしてるんですからどうしようもないですね」



お疲れ様ですと言いたげに呆れの色を目に乗せラドルフを見た。



「相手の弱味を俺は握れて、相手は厄介事が片付く。互いに良い事づくしじゃないか」



「…私本当貴方に夢見てるご令嬢方に現実をお見せしたいです」



「夢見てたい奴には見せておけばいいさ。俺が欲するのはそのような者ではないからな。


表面上に騙されて本質も見抜けぬ者が我がラフィレーヤ家に嫁ぐには役不足だ」



確かに公爵家であるラフィレーヤ家に嫁ぐにあたって求められる能力は高いのだろうが…この人に未だに婚約者がいないのがよく分かる。



「はぁ…本当に外見と内面が合わない方ですこと。っと、そんなことを話してる場合じゃなかったですね。


それでは行ってきます。凡そ3時間程度で戻ってきますので」



「その程度で間に合うか?」



「材料の場所は把握してますし、移動は転移を使えば短縮出来るので」



「了解した。気を付けろよシルヴィ」



「ええ」




────────────


30分程度馬車に揺られ郊外に出た後転移を行う。瞬きの間に映る景色は変わり、目の前に広がるのは豊かな森林だった。


森林へと踏み出し森の中を歩き始める。



「気持ち良いね、ねぇシュー」



話しかけるのは隠れていたローブの中から出てきた自身の腕に巻き付く小柄な蛇である。名をシュミーと言い、シルヴィアの従魔の一匹だ。



『気持ちが良いですね主様。木々の間から漏れる木漏れ日も美しいです』



「人の手が入っていない場所には自然の美しさがあるからね」



こう考えるのは私がかつて日本に生きていた記憶を持つせいかもしれないが…



『人が作った物も美しきとは思いますが…』



「考え方次第だろうね」



『そうですか。本日は話を聞いていると魔道具の材料採取とのことですが、何を必要としているのですか?』



「ん、魔力華をね」



『ディラスの魔力華というと…必要な性質は〈風〉ですか』



「魔道具を浮かせるのに術式を魔石に刻むよりも低コストなんだよね。刻む陣が増えるとそれなりに腕の良い魔術師が必要になるし…


どうなるかは別としても量産出来ないのは困るからね」



『成程、それに此処の浅い所でも此処以外にも魔力華はありますしね。余程の馬鹿でなければわざわざディラス深部までは行かないでしょうし』



「まあ質が良い物はやっぱり深部だけど、それに此処は来慣れた狩場だからね。少し行って帰って来るのも簡単だから」



『それは数人だけですよ主様…深部まで進んでも大丈夫なのは主様と同じくらいの実力を持つ者だけです』



「まあ、仮にも国の上層部で魔導師名乗ってるしねぇ」



シュミーと言葉を交わしながら目的地までの通りすがら使えそうな薬草の採取をしたり、襲ってきた魔物を討伐する。


足早に進み目の前が開けて沢山の浮かんだ華の群生地が目に入った。



「沢山咲いてるねぇ。流石ディラスの大森林の中でも上位にある魔力が強い場所だ」



『此処の魔力は心地が良いです』



「そうだね。さて、そんなに多くはいらないから数本頂いていこうか。


あぁ、それと貴方達の嗜好品は必要?」



『いいえ、此処に来る途中で手に入れた物だけで十分ですよ』



「それじゃあ、帰ろうか」



『はい』



踵を返し元来た道を戻ろうとした時一際強い風が吹いた。風に乗って幾つかの魔力華が空高く飛んでいく。


ふと、シュミーが固くなる。



『…主様、血の匂いがします。それも恐らく人間の…』



「え…?こんな深部で?」



『先程の風に乗って奥から匂いが…私の目にはまだ感知出来ませんが…』



「そう…先行して匂いを辿って、生きてるなら助ける必要があるし、亡くなっているなら遺品だけでも持ち帰らないと」



『分かりました』



シュミーが地面へと降り、私の前を進む。私やラドルフ、爺様のように慣れているならこの森は問題ない。


この森は魔物の強さが段階分けされている。極たまに縄張り争いに負けた魔物が浅い場所へ出てくる以外は予想外の強さを持つ魔物と当たることはないけれど…


今いる場所は上から数えて3番目程度


慣れていなければ危うい場所だ。ちゃんと段階を踏んでいけば安全にとは言えないけれど、それなりに損害なく狩れる狩場にもなるからシュミーが反応する程の出血のある怪我をすることはないはず…なんだけど…



『見つけました主様!まだ生きてます!』



「分かった!」



今までよりも明らかに早くなったシュミーの後を付いて行き、そして木に寄りかかる人影を見つけ駆け出した。 

ヒーロー登場回

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