戻りたい、戻れない、戻れる(三人用 男2 女1)
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三人用台本
山本 大吾(18):明るい性格で、みんなから慕われている。二人からは、大吾と呼ばれている。
野田 哲夫(17):性格は暗い。大吾と静香とは、幼稚園からの幼馴染でずっと静香のことをすいている。二人からは、てっちゃんと呼ばれている。
中 静香(18):かわいく、優しい子。大吾からは、静香。野田からは、中さんと呼ばれている。哲夫と昔のように友達として、仲良くしたいと思っている。
※台本のセリフは、言いやすいように改変していただいて結構ですが内容が変わることは決してないようにしてください。
大吾「おはよっ!てっちゃん」
野田「あ、ああ。おはよう」
大吾「てっちゃんに教えてもらったあのバーストソードってゲーム全クリしたんだけどさ、めっちゃよかったよ!」
野田「…バスターソード?」
大吾「あー、ほらてっちゃんに中学のころ教えてもらったさ」
野田「(少し思い出すようなそぶりの後)あ、ああ。あれね」
大吾「ん、でさ。主人公が最後に言う【明日をただ待つものに、本当の明日などやってこない。ただちっぽけな太陽がやってくるだけさ】ってセリフ、超かっこよくなかった?」
野田「うん」
大吾「ええと、あのさ、時間或る時でいいから遊ばない?ほら、前みたいにさ、今日とか課題ない日だからいいじゃん!また静香も誘ってさ…」
野田「(少し食い気味で)あ、ごめん。授業はじまるし、ごめん」
大吾「てっちゃん…」
野田(いつからだろうか。大吾とも静香ともまともにはなせなくなったのは…
小学生のころまでは、普通に話せていた。けど、中学にはいってあいつらとは違うクラスになって。なんだか別の世界に取り残されてしまった気がした。そして、中二の夏。あの出来事を見てしまってから、俺は更に話せなくなってしまった)
【回想】
静香「好きだよ」
大吾「俺もだよ(静かなトーンで)」
(間を開けて)
野田「え…」
野田(訳もなくがむしゃらに走った。流れてくる涙も、夏の暑い湿気た空気のせいで気にならなかった。
なぜ泣いていたのかわからなかった。ただ、胸を締め付ける痛みが、よくわからない感情とが身体中を駆け巡った。それに気づかないように、自らに気づかせないようにただ走った。その感情が静香への恋心による憎悪にもよく似た嫉妬心だと気付いたのは、心臓の鼓動がゆっくりになって、感情にごまかしのきかなくなったお風呂場だった。)
【回想終わり】
静香「ね、大吾。ちょっといい?」
大吾「あ、ああ。静香。もう帰る時間か」
静香「大丈夫?」
大吾「帰りながらでいいか?」
静香「いいよ」
(少し間を開ける)
静香「雨だねえ」
大吾「そだな。まあでもそろそろ、梅雨も明けて暑い夏が始まるよ」
静香「そういえば、野球はどうなの?最後の夏でしょ?」
大吾「あー、まあレギュラーは確実だけどいっても地区大会2勝とかだな」
静香「えー、大吾様の力でどうにかならないの?小さい頃は、ここらへんで敵なしだったじゃない?」
大吾「まあ、小さい頃はなあ。変わったな、俺らも」
静香「(少し黙り込んだ後に)私は変わってないよ。小さい時からずっと」
大吾「そっか…。」
(お互い沈黙)
大吾「あのさ」
静香「(かぶせるように)あのさ!…あ」
大吾「多分同じことだろう?」
静香「うん。絶対。てっちゃんのことでしょ?」
大吾「やっぱりな」
静香「(ため息をついて)なんでこうなっちゃたのかな?」
大吾「わかんねえよ。今日だって勇気出して誘ったのに断られるしさ。もう親友じゃねえのかな…。もしかしたら友達とも思われてねえのかも…」
静香「私なんて、目も合わせてくれないの。しかも、中さんなんてよんでさ…(泣きそうになりながら)私たち。もう戻れないのかな」
大吾「……明日を待つものに本当の明日などやってこない。ただちっぽけな太陽がやってくるだけさ。か」
静香「(少し泣きながら)なにそれ?」
大吾「いや、てっちゃんに昔教えてもらったゲームでさ。昨日ストーリーを全クリしたんだけど、勇者が魔王を倒して、故郷に帰って昔なじみの人たちにそう言うんだ」
静香「本当の明日って何だろうね」
大吾「なんなんだろうな。でもなんだか心に残っててさ」
静香「でも、なんか、大吾が好きそうな言葉だね」
大吾「どゆこと?」
静香「んー、わかんないけど好きそうだなって」
大吾「なにそれ。」
静香「幼なじみの勘?」
大吾「だとしたら納得」
静香「そういえば、マネージャーの亜美ちゃんにはいつ告白するの?」
大吾「(ぽかんとした感じで)は?」
静香「え?だって、大吾好きでしょ?」
大吾「え、ちょ、それ、え?」
静香「幼なじみの勘よ」
大吾「こわあ…」
静香「何か言った?」
大吾「ああ、いや。あ、明日てっちゃんと話してみようかなって」
静香「そっかあ…。うん、うん。ここは大吾に任せるよ」
大吾「おう。困ったときの俺だからな!」
(どちらも笑う)
間を開ける
野田(家に帰る途中で、毎回のように大吾と静香の家の前を通る。それもそのはずで、俺と大吾と静香
の三人の家は並んでいるため、通らざるを得ないのだ)
野田家にて、
野田「バスターソードね」
野田(プレイするのが、二度目だったせいか2時間ほどでストーリーをクリアしてしまった)
野田「ここか…【明日をただ待つものに本当の明日などなどやってこない。ただちっぽけな太陽がやってくるだけさ】…なんか、いかにも大吾が好きそうなセリフだな」
野田(だからこれをお勧めしたんだっけか。中一で、二人と少し疎遠になったけど、まだ普通に話してて。その時に教えたんだっけ。あいつ今頃クリアしたのか。)
野田「相変わらずだなあ。あー、戻りたい。無理だけど。…もう戻れないよな」
野田(その日は夢を見た。俺と大吾と静香が、みんなスーツ着てて、二人とも少し大人になっていて。
何話しているかはわからなかったけど、みんな笑顔だった。)
間を開ける
野田(次の朝は、雲一つない快晴だった)
大吾「おはよう。てっちゃん(真剣な感じで)」
野田「あ、ああ。おはよう」
大吾「えっとさ、んー。あのさ」
野田「うん」
大吾「今日、放課後俺の家集合!わかった?」
野田「え?」
大吾「じゃあ、授業だから行くわ!こいよ!」
野田「え、いや、ちょっと!…はあ。変わんないな、こういう強引なところ」
大吾「よっ。まあ入れよ。突っ立てないでさ」
野田「あ、ああ。うん」
野田(来てしまった。本当は来るつもりなんてなかったのに。でも、行かなかったら本当に何もかもが台無しになる気がして。気づいたら、大吾の家の前にいた)
大吾「(咳払い)」
野田「…」
大吾「えっと、あー、最近どう?」
野田「どうって、別に普通だよ」
大吾「お茶飲む?」
野田「いや、いい」
大吾「あー、そっか」
野田「…(なんだよこいつ、呼び出すだけ呼び出しといて)」
大吾「あのさ、えっと、そういえば、数学の小室がな」
野田「(食い気味に)何か言いたいことがあるから、呼んだんじゃないの?」
大吾「いや、まあ、そうなんだけど」
野田「早くいってよ。時間も無駄だし」
大吾「なんだよその言い方」
野田「早く言えばいいだけじゃん」
大吾「あーもー!なんで俺と静香を避けてんの?俺なんかした?」
野田「…避けてないし」
大吾「は?いや、避けてんじゃん!全然、話さなくなったし。静香のこと中さんなんて呼んでるし!」
野田「別に誰をどう呼ぼうと俺の勝手だろ?」
大吾「はいはい出ました。お得意の独りよがりか?」
野田「は?黙れよ。いざとなったら話も切り出せないチキンのくせに。今思えば、告白も向こうからじゃねえか」
大吾「は?ちょ、告白?何言ってんの?まだ俺は、あみちゃんにしてねえし、されてもねえよ!」
野田「あみちゃん?意味わかんねえこと言うなよ!静香だよ!」
大吾「静香?なんでそこで静香が出てくんだよ」
野田「いや知ってるし。お前と静香付き合ってんだろ?中2のころから」
大吾「は?マジで意味わからん。付き合ってないし」
野田「しらばっくれるなよ。見たんだよ。中2の夏に静香がお前に告白してるところを!」
大吾「されてねえよ!」
野田「じゃあ何だったんだよあれ!」
大吾「俺が聞きてえよ!」
(どちらも肩で疲れたように息をする)
野田「(自嘲するように笑う)はは。じゃあどうすればいいんだよ。勘違いだったって。だって、四年間も。俺…馬鹿じゃん」
大吾「てっちゃん」
野田「クラス別々になったじゃん、中学はいって」
大吾「ああ、うん」
野田「俺は部活に入ってなかったから、二人とは違う時間に帰ってさ」
大吾「てっちゃん、ゲームばっかしてたもんな」
野田「うん。運動苦手だしね。それで、なんか話しにくくなってさ」
大吾「うん」
野田「でも一緒にいたくてさ、お前が好きそうなゲーム勧めたりしてさ」
大吾「あー、バスターソードかっこよかったな。あれ。特に最後のセリフの」
野田「(少し笑いながら)一回聞いたからもういいよ。てっちゃん、ああいうの好きだよね」
大吾「それ、静香にも言われたんだけど、なんでわかるの?」
野田「勘?」
大吾「お前ら鋭すぎだろ!」
野田「あーあ。全部勘違いだったのかあ…はーあ、無駄にした」
大吾「気づくのがおせえよ。俺は、お前らみたいに鋭くないんだからよ」
野田「戻りたいな」
大吾「戻ればいいじゃん!戻ろうよ!前みたいに三人で遊んでさ!」
野田「無理だよ」
大吾「なんで!」
野田「俺、静香のこと好きだから」
大吾「え、ちょ、まじ?」
野田「まじ」
大吾「告白しねえの?」
野田「振られるよ絶対。また気まずくなる」
大吾「あー、そっか。振られるかあ」
野田「(少し笑いながら)嘘でもそんなことない。とかいえよ」
大吾「ああ、ごめん。でも、昔みたいに三人で遊びてえよな」
野田「間違いない。あー、どうしようもないな」
大吾「(少しかっこつけた感じで)明日をただ待つものに本当の明日などやってこない。ただ、ちっぽけな太陽がやってくるだけさ」
野田「は?」
大吾「てっちゃん。本当の明日って何だと思う?」
野田「何いきなり?」
大吾「いいから」
野田「強引なんだって、毎回。…本当の明日かあ。昨日までの全部を受け止めたうえでくるものとか?それか、何かに挑戦する今日のことだったり?」
大吾「昨日までを受け止めて、何かに挑戦する今日こそが本当の明日か」
野田「まとめられると恥ずかしいな」
大吾「本当の明日…てっちゃん。今日を本当の明日にしようよ!昨日の自分に本当の明日を教えてやろうよ!」
野田「なにそれ…(少し笑いながら)結構ダサいよそれ。でも、そうだな。変えよう。昨日までの僕を」
大吾「お。てことは、静香に告白するってこと?」
野田「うん。もちろん大吾も、あみちゃん?に告白するんだろ?」
大吾「え?どこでそれを!」
野田「自分で言ってたじゃん」
大吾「嘘…」
野田「ほんと。もちろんするよね?」
大吾「…わかったよ。するよ!」
野田「多分少し気まずくなるとは思う」
大吾「まあな。でも、静香なら大丈夫だろ」
野田「だから、少しはフォローをしろって」
大吾「ああ、ごめん」
野田「じゃ、また明日」
大吾「ああ、また明日!」
次の日
野田「中さん。今日時間ある?」
静香「てっちゃん!えっと、今日は部活ないし、放課後なら」
野田「じゃあ、あの、んーと、久しぶりに一緒に帰らない?」
静香「え…うん!」
野田「じゃあ、また放課後」
静香「またね」
静香(大吾うまくいったんだ…)
野田(あー、誘ってしまった。やばい、吐きそう。無理。かえりたい。…でも、戻りたい)
放課後
静香「あ、てっちゃん」
野田「あ、中さん」
静香「帰ろうか」
野田「うん」
間を開ける
静香「なんか懐かしいね。こうやって一緒に帰るの」
野田「そうだね。うん。大吾と三人でね」
静香「あの頃は楽しかったね。(少し笑いながら)大吾が馬鹿でさ、走るぞー!って急に走り出して転んだりね」
野田「(少し笑いながら)あったねー。それで俺が絆創膏いっつも持っててさ」
静香「私は何にもできずに、おろおろしてね。昔っから、大吾は強引なくせに肝心なところでだめなんだよね」
野田「確かに」
静香「昔みたいに戻りたいね。また、三人で笑ってさ」
野田「そうだね」
静香「…今度三人で遊ばない?」
野田「遊びたいけど」
静香「けど?」
野田「その前に、話したいことがあるんだ」
静香「なあに?」
野田「俺さ、大吾と中さんのこと避けてたんだ。中二からずっと」
静香「(少し言葉を詰まらせながら)うん、気づいてた」
野田「俺、ずっと中さんと大吾が付き合ってるって思っててさ」
静香「え、付き合ってないよ!」
野田「知ってる。昨日大吾から聞いた。それで、二人ともクラスも帰る時間も違うしで、なんか勝手にはぶられたような気持になっててさ」
静香「でも、勘違いだってわかったんでしょ?なら、また昔みたいに」
野田「好きなんだ。ずっと、静香のこと。多分、あったときから」
静香「え」
野田「さっき言ったことも避けてた理由に一つなんだけど、こっちのほうが本題でさ。だから、ふたりが、付き合ってるって勘違いした時、ものすごい嫉妬して。頭がおかしくなりそうなくらいに憎んだ。そのくらい好きだった。というか、今も好き」
静香「えっと。それは。えっと」
野田「あー。回りくどくいったけど。俺は、(だんだん声が小さくなる)ずっと静香のことが好きで今も好きです…(蚊の鳴くような声で)ってことです」
静香「告白ってこと、だよね」
野田「うん。そう。告白」
静香「えっと。その、私は、てっちゃんのことは嫌いじゃないけど、それは友達としての好きというか。だから、あのね。(泣きそうになりながら)でもね、また一緒に遊びたいの!違うの。だからね、ごめんなさい」
野田「うん、うん。わかってた。ありがと。いうと気まずくなるだろうなってわかってて。でも、言わなきゃ前に進めない気がしてさ。俺のエゴなんだけど」
静香「(泣きながら)でもね、私、また三人で遊びたいし、たくさん話したくて。でも、告白されるなんて思ってなくてそれで」
野田「うん。ごめん。たぶんまた、話せなくなるんだろうなって」
静香「話せなくなるの?」
野田「(少し微笑んで)さすがに振られてるのに当たり前には話せないなあ」
静香「そんな…やっと話せるようになったと思ったのに」
野田「本当の明日が見たくてさ」
静香「大吾みたいなこと言っちゃてさ」
野田「あいつは、相変わらずだよなあ」
静香「ふふ。確かにね。全然センスないしさ」
野田「変なところで強引だし」
静香「なのに、急にチキンになるしね」
野田「あいつも、告白するらしいよ」
静香「え?あみちゃんに?」
野田「うん」
静香「振られなかったらいいね」
野田「振った静香が言うの?」
静香「ごめんって」
野田「じゃあ、また」
静香「うん。また話せるようになったら」
野田「4年間は待たせないようにするよ」
静香「ふふ。うんまたね」
fin
後日談(ここからは、演じても演じなくてもよいです)
野田「久しぶり」
大吾「そうでもねえだろ。ああ、でも、そうか。半年ぶりくらいか。4年間疎遠だった時期があったから、あっという間だったな」
静香「また、馬鹿言って。変わらないね大吾は」
野田「ほんと。変わんないな。そういうバカみたいなところとかな」
大吾「うっせ。あー。俺たちもいよいよ成人かあ」
野田「何か月か前に誕生日は来てただろ?」
静香「もう飲んできたの?」
大吾「前のメンバーと少しな」
野田「あいかわらず、人気者だな」
大吾「まあな!」
静香「女の子にはもてないみたいだけど」
野田「そうなのか?」
大吾「あ、いや、その」
静香「地元の友達に聞く限りでは、高校卒業してから一人も…。高校卒業するまでもいなかったしね」
野田「そいえば、亜美ちゃんにも振られたんだろ?」
大吾「う…それを言うならてっちゃんも静香に振られてんじゃねえかよ」
野田「いや、別に、それは、振られたとかそういう次元の話じゃないし。てか、今俺、同じ大学に彼女いるし!」
大吾「は?嘘だろ?」
野田「ほんと」
静香「はいはい。馬鹿な話はいったん終わり」
大吾「はいはい」
野田「でも、20歳になっても昔みたいに遊んでるなんてね」
静香「まさか、戻れるとはね」
大吾「あの後は結局、三日くらいでてっちゃんが吹っ切れてな」
野田「んー。なんか好きって感情を表に出さな過ぎてこじれちゃってたみたいでさ」
静香「今の彼女さんには、言ってあげないとだね」
大吾「なあんで、てっちゃんにできたのに俺には…」
野田「たまに臭いセリフいうところが嫌だって言われてたじゃん」
大吾「いってねえよ。ただ俺は、俺の思うままに。自分の生を確認しながらいきてるんだからよ」
静香「そういうところ」
野田「まあ何はともあれ、無事に成人したわけだし。これからもよろしく」
大吾「もちろん」
静香「よろしくね2人とも」
大吾「静香も俺みたいに売れ残らないようにしなくちゃな」
静香「なにかいった?」
大吾「い、いや。か、かんぱい!」
(三人とも笑う)
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