美術館デート
うん、これはデートよね、と葉子は思った。可愛くしていかなくちゃだ。
ええと、これはデートなんだよな、と雄介は思った。毎日隣り合わせで通勤してるだけの縁とは言え、縁は縁だ。大事にしなくちゃな。
いつも遅刻しがちな葉子としては、上出来なタイミングで待ち合わせ場所である上野の喫茶店に到着する。やればできるんだわよ、あたしゃ。葉子は自分で自分を誉める。
少し早めに着いておこうと雄介は思った。30分前に到着した。気合い入りすぎかな?
葉子は店の中に雄介を発見する。あれま、待たせちゃったか。でもまあまだ3分くらいしか遅刻してない。店の外から手を振る。あ、気がついた。雄介が軽く手を上げてから、外に行くよというジェスチャーをする。葉子は店の前で待っていた。
雄介は葉子に一応自己紹介をした。
「ええと、改めまして樋口雄介と言います。宜しくお願いいたします」
葉子は雄介に言った。
「こちらこそ宜しくお願いいたします。私は松浦葉子といいます。葉っぱの葉に子供の子で、ようこ、です」
大の大人が、二人して照れてしまった。
一応名前と連絡先は交換していたのだが、あらたまっての自己紹介はしていなかった。
雄介は葉子に言った。
「じゃあ、行きましょうか」
雄介の右側を葉子は歩く。電車の中と同じ並びだ。
なんというか、しっくりくるなと葉子は思った。
葉子の左側を雄介は歩く。電車の中と同じ並びだ。
なんというか、しっくりくるなと雄介は思った。
上野公園に入り、雑談をしつつ東京都美術館に向かう。
天気は良し、デート日和である。
上野動物園の入口前を通過したとき、雄介が言った。
「パンダはね、もともと肉食だったんですよ。それがほんの数ヶ月で竹や笹の葉だけを食べて暮らすようになったと言われてるんです」
へー、そなんだ。博識だなぁと葉子は思った。
私もなんか言わなくちゃ
「パンダは生まれたときは白黒の模様が無いんですよね」
生まれたては、なんかピンク色でキモいよね、と雄介が答えた。
なんか初デートっぽい、と葉子は思った。
東京都美術館前の大きな銀色の球体が見えた。
そんなに混んでいなさそうね。




