魔石店
メイヘン・ユイとその近侍アイゼン・リクと別れてからメグチはやけにテンション高めにネコを話題にしていた。
ネコの集団を見たせいもあるのか、メグチはかなりの熱量でミズキに話をする。
メグチは屋敷にいるネコの名前を全部知っているようで、その見分け方も性格までもいう。ミズキは相槌交えに聞いていたが、これといって頭の中に入るものではなかった。
ミズキ自身、そこまで前の世界においてもネコはあまり好きな部類ではないためその意識はここにきても変わっていない。
彼女のネコに対する熱量が強くとも、ミズキの意識が変わることはなかった。
ただ一匹一匹名前が告げられその子の容姿や性格が話される中、最後途端にメグチのトーンが弱くなったのを感じた。
心配に思って覗き込むとメグチはいつもの陽気な笑みが鎮沈んでいた。
どうしたの? と声をかける前にメグチは呟くようにそのネコの名前を告げた。
「ニャミ……」
一度止まった声が翻って、どうしたの? と声をかけるとメグチはハッとした顔でブンブンと手を振る。
「いやぁー、次にネコを使役するときはニャミと付けようと思いましてー」
「はぁ、そうなんだ」
適当に返したが、流石のミズキでさえ意味深な彼女の表情は汲み取れた。
明らかに何かあったであろう。それを追求するのはデリカシーがない。彼女の心情を読み取って、ミズキはいう。
「ネコの話もいいけど、さっさと買い物済ませよう」
「はい! そうですね!」
先程の暗かった表情なんてなかったかのようにいつもの笑みで返事をした。
ネコの話題もあり、買い物をする場所へは時間も感じずたどり着いた。
メグチと反対の使用人であるアヤチに頼まれた買い物は魔石だ。
魔石店に入るのは初めてではない。クラクの街にも簡易的な魔石店があり、ヘレナと説明がてら付き添った記憶がある。
この世界は魔石が生活の一部に関わっている。特に、火の魔石、水の魔石などは必需品だと言える。
魔石は魔石鉱のような場所があって、そこから採掘しその魔石に火や水など属性なる魔力や物質を使って加工するようだ。魔石店には加工されたすでに属性が付与された魔石が売っているのである。
ただ王都にもなると、まだ加工前の魔石もあるようで加工前の魔石は加工済みの魔石と比べ高価。それも大きさによって値段が上がっていく。ミズキには用途が不明であるため、その価値はわからなかった。
ミズキが店内を物色しているうちに、メグチは目的の買い物を済ませていた。
「何かめぼしいものでもありました?」
メグチはミズキの様子を見てそういう。
「うんや、ただ見てただけだよ。魔石って色々あるなぁーって」
色々といいつつ、魔石の種類的には属性の数と加工前の七つしかない。
メグチはクスッと笑っていう。
「まあ、生活に使うのは水と火くらいですからねぇ。ほとんどの魔石屋は水と火しか売ってませんし」
そう言われて、確かにクラクの魔石屋にはその二つしかなかったことを思い出す。
「闇とか光って何に使うのさ」
光に関しては街灯に使えるのだろうけど、屋敷にある屋内灯は火の魔石で事足りているため用途が不明だ。闇に関しては全くの意味を理解できない。
「さあ? こういうのは魔法使いさんが使うものらしいですから」
「ふーん」
とりあえず、生活には使わないことはわかった。
「それじゃあ買い物も終えましたし、もう少し王都を見て回りますか?」
メグチの提案に、ミズキはすんなりうなずいて了承した。




