王都の街並み・3
「わぁー……」
思わず感銘に満ちた無邪気な声が出た。
ミズキの瞳はいつになくキラキラしていて、肢体が踊るように軽々しく浮き立つ。
それは横に立つリリィも面にそれはなくとも身体は今すぐに駆け出しそうなほどうずうずとしていた。
「ここは王都で一番の大通り、時期も相まって出店が出ていて人も多いんですよー」
メグチが嬉々として説明する。
クラクとは違う大通りにミズキとリリィは目を奪われていた。その街並みは活気があって、どこもかしこ店前には人が往来し、店の人は大きな声で呼び込みをしている。
ミズキはこれこそが中世の街並みなのだと感心する。石畳と煉瓦造りの建物、バザーのように立ち並ぶ店々。そこに付け加えて、獣人や耳の長い森人そして身長がほかと比べ異様に高い巨躯な鬼人の亜人たちがファンタジー演出していた。
ミズキは改めて異世界にいることを自覚し、また亜人の人たちまで女性しかいないことを知らされる。
「久しぶりの王都だし、今日くらいしか空いてないからおもっきり楽しまないとねぇー」
ササキが金髪をかきあげ気合いを入れる。
「どこからいくの?」
ミズキはふと我に帰り、ササキに聞く。
「そぉだねー、アクセもいいしアルド雑貨もありだし、うーん、とりま」
と、ササキはメグチに視線を向けて言う。
「美味しいジェラートのお店案内してくれる?」
「そういうことならもちろん!」
メグチは煌びやかな笑顔だ了承した。
そのまま歩き出すメグチについていく中、隣のリリィがぼんやりしてすぐに歩き出さなかった。
それに気づいたミズキは怪訝に手を差し出す。
「ほら、ジェラートのお店に行くって」
そう急かすが、リリィの横顔は少し難しい表情をしてミズキに気づくと微笑を作った。
ミズキは疑問に思ったが、リリィはこの場を名残惜しそうにしていた。
「ねぇミズキ、楽しいね!」
リリィは嬉しそうにいう。
「うん」
ミズキは端的に返事する。
「他の街もこんな感じなのかな?」
「それはわかんないけど……、こんなに活気があるのは王都だけなんじゃないかな」
他を知らないため曖昧に答える。
「ふふ、そうだよね。でも、きっと他の街もこんな感じで楽しいよね」
「? そうかな?」
怪訝なミズキを他所に、リリィはミズキを駆け足で追い抜きながら手を掴んでメグチのほうに走り出した。
「行くよミズキ! 今日は目一杯楽しむんだからちゃんとついてきてよね」
「わかってるよ……まったく……」
と、苦笑が口元に浮かぶ。
まるで幼く無邪気な少女に様変わりした姫様に、当惑を覚えつつも内心に嬉々とした感情を秘める。
王都の街並みは遊園地にも見えた。




