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ソイトゲ   作者: もはや
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ソイトゲ 最終回「ハッピーエンドの向こう側」

曲がりなりにもミシェルと和解?したケイ。


秘密を受け入れた上でありすとの新生活を始めるが…。



「平凡な会社員」桂木ケイに起きた日常の中の非日常な出来事。


ありすへの愛を貫き、無事に添い遂げることが出来るか?


ただのメイド萌えに終わらない恋愛小説の最終回をどうぞお読みくださいませ。

「行ってらっしゃいませ、ご主人様!

あ~、やっぱりこの台詞を言わないとボクの一日は始まらないよ~」


再びありすとの生活が始まった。違うのは…


「恋人としての同棲だ。」


僕達の葛藤と関係なく一日は始まり、電車は動き、会社は機能する。

全てが当たり前だ。


「おはよー桂木くん。いつもこの電車なの?ねぇ聞いてよ、私、彼と別れてさー…」


同じ課の下薗さん。明るく元気な社内の人気者だ。

僕がありすに出会わなければ、きっとこんな普通の女の子と付き合って、結婚して、子育てしてたのかなって思う。

でも僕はありすを選んだ。どんな未来よりも僕はありすとの輝かしい日常を選んだことを後悔していない。


昼休み。社員食堂でありすの愛妻弁当を食べていると、見慣れない男が、


「隣いいですか?」


と言ってきた。

転勤組か?中途採用かな?絵に描いた様な長身インテリメガネだった。


「どこの課ですか?」


と僕が言えば、

男は静かに…。


「アリストテレス計画」


と言った。

僕の反応を見て男が不敵な笑みを浮かべる。


「ミシェル久我山…。

まさか本当に科学者を引退されて勤め人をされてるとは驚きです。

勿体無い!私は貴方の頭脳を高く評価しているのに…。」


ウソだろ?僕の会社にまでミシェルと対立する組織の連中が来るなんて!しかも完全に人違いしている。

確かに僕とミシェルはそっくりだけど…。


「君には関係ない。帰ってくれ。」


冷静に、取りあえず焦ってることを悟られないように…。


「ご安心を。私は貴方の味方ですよ。

私も組織に不満を持つ一人でね。

私は貴方と『ネオ・アリストテレス』を立ち上げたいと思っています。」


「どうぞお一人様でお好きにどーぞ。」


席を立とうとした時、男は静かに…。


「貴方はご自分を守れるでしょう。ですが大切な人はどうですかな?」


それだけ言って消えていった。

まさか…!?


「ありす?ありすか?」


急いで携帯に電話する。

どうか無事であってくれ!


「もしもし、ケイさ~ん?

お昼休みにまでコールしてくれるなんて新婚さんみたいですよ~。嬉しいですぅ。」


「ガチャ。ツーツー。」


良かった。やっぱりただのハッタリだ。

ありすに何かしてみろ!ただじゃ済まないぞって思ったけど…。実際に何が出来る?

まあいい、何もないならそれでいい。

安心して職場に戻ると課長を中心に皆が深刻な顔をしていた。


「おお、桂木くん!実は下薗さんがお昼休みに食事に出たきりまだ戻らないんだ。行き先を知らないかい?」


まさか…!?奴らは朝の僕とのやり取りを勘違いして…?

例の男が来た。


「港の第二倉庫19:0」


「貴様、どうゆうつもりだ!?」


勢いに任せて男を殴ろうとしたが、


「おっと、私に手を出せば彼女は戻りませんよ。取引をしようじゃありませんか?」

奴の言う通りだ。今は下薗さんの安全が第一だ。

ちくしょう、日常なんて簡単に壊される!関係ない下薗さんにまで被害が…。

イヤ今はとにかく現状への対処だ。

僕に何が出来る?

奴らは裏の世界の人間。ただの会社員の僕に出来るのは…。

そうか、裏には裏だ!取りあえず出来るのはそれしかない。

僕はとにかく指定の場所に行く。

あとはあいつ頼みだ。


「言われた通りに来たぞ。

さぁ彼女を離せ。」


サングラスの男二人が下薗さんを縛ってた。そしてあの男も居た。彼女は僕を見つけて騒ぎだした。


「ちょっと桂木くん、これ何の冗談?午後の仕事サボっちゃったじゃない!」


「元気そうで安心しましたよ。もう少しだけ待って下さいね。

さぁ彼女を離せ!新薬のデータの入ったディスクがある。君が発表して大儲けするがいい!」


ここまでがミシェルの指示だ。ディスクが偽物でも揺さぶりにはなるそうだ。


「わかった。彼女と交換だ。」


え~とこの先は聞いてないぞ。渡していいのか?何かどっち選んでも危険な気が…。

取りあえずディスクを渡した。奴らも下薗さんを返した途端に銃を構えた。

はい、やっぱり刑事ドラマやスパイものの犯人の黄金パターンですね。


その時…


「ズキューン!」


突然の銃声が響き奴らの銃が手から弾かれる!

次に奴らのサングラス、そしてベルトを破壊する。


「狙撃されてるぞー!逃げろ、逃げろ!」


事態は一瞬で解決した。


「どうやら間に合ったみたいだな。高い始末屋を頼んだんだ。感謝しろよ。」


ミシェルも現場に来た。

全てはミシェル頼みだった。まさかこんな強引な策に出るとは思わなかったが、今回はこいつの財力に感謝してる。


「まさか君まで現場に来るとは思わなかったよ。」


「御子神くんの狙撃が失敗したらオレが身代わりになるつもりだった。責任を取る覚悟は常にあるさ…。」


「御子神です。下薗さんですね。無事で良かったです。」


ん?何か…。この殺し屋さん私情で働いてませんか?


「そっか、ヤクザ屋さんが、桂木くんにそっくりの彼と人違いしてたのか。うわぁ~こりゃ間違うわな。

あっ、御子神さん、下薗です。ありがと、ヨロシクね。」


けっこう大物?意外と動じない彼女でした。

(終)


「終りじゃないですぅ。朝の出勤前に、何を話したんですか?奴らが恋人同士だと誤解する様なケイさんの態度が悪いんですぅ。僕というモノがありながら非道いですぅ。あ~ん!」


意外に嫉妬深いありすでした。


****

「私、神様って居るって思うんです。」

「どうしたんだ?急に。」


演技でない自然な女言葉が身についてきた。

時の流れからしたら当然なのだろうか?


「だってね、ケイとミシェルが似ているのって何の理由もなかったんですよ。

そんな二人が偶然バーで出会ったって、凄い奇跡ですよ。それに…何とか今日この日までやってこれましたぁ」


朝のテレビニュースを観る。

昨夜も観たが何度観ても気持ちがいい。科学者ミシェルの晴れ舞台だ。

新薬が未承認薬ながら画期的な発明だ。と、海外メディアが取り上げた事を日本のマスコミも取り上げた。


「今度こそあの組織も終りだな。

新薬の特許で得た金で奴らの資金源を断てば、奴らは自然に内部崩壊するさ。」


「ミシェル本当に凄いですぅ。」


「僕もこれで、会社で何人かに『桂木さんてテレビに出てたミシェル久我山に似てますよね?』って言われるかもな?」


何気ない会話が楽しい。全てに解放された彼女は明るくのびのびしている。

ただ…。


「なっ…。その口調は女ですよねぇ?貴方と言う人は何で!私と言う者が、ありながら!他のメス猫を相手にするんですか~!あ~ん、御子神さん狙撃して~!」


とこんな風に解放された彼女は異常なほど嫉妬心が強い(笑)。


「おい、時間無いぞ!今日は早番なんだろ?」


「あ~もう、またはぐらかされたですぅ。

続きは夜ですからね。『行ってきます。ご主人様』」


彼女はミシェルの研究所で『働いて』いる。三人で提案した彼女の社会適合の一環だ。

僕やミシェルに依存しない彼女自身の自立を自ら求めたからだ。勿論、全ての問題が解決したわけじゃない。

両性具有者としての壁も、人間としての壁も永遠に立ちはだかるだろう。

だが、困難を持ち合わせていない人間などいない。

多かれ少なかれ人は「不安定なまま安定する」しかないのだ。


何気ない日常の中で泣いて笑って、また明日になる。

絶え間無い努力の先に「普通の明日」があるのだ。



「なぁ、決めたんだけどー。」


「何ー?時間無いよ~」


「君の名前さ。研究所が付けた『ありす』じゃ無く、君を捨てた両親が付けた名前でも無く、愛する僕が君に送る名前。『桂木真琴』。どうだ?」


「まことかぁ、男でも女でも通じる名前で嬉しいですぅ。何だか私らしいかも。」


「君は今日から生まれ変わる。そして明日また生まれ変わる。その都度、僕と添い遂げよう。愛してる。」


「私も、『桂木真琴』は桂木ケイを愛してます。」



以上、どこにでもある?ありふれた?いわゆる一つの恋物語でした。



ソイトゲ(完)

おかげ様で恋愛小説「ソイトゲ」を無事に完結させることが出来ました。


で、この物語のメインテーマは勿論


「添い遂げる困難」

ですが、裏のテーマは


「名前」


です。

ケイの名前が出るのを遅らせ、ミシェルは偽名を使い、ありすは真琴に名前を変える。

これは名前には役割と目的があり、それは全て


「他者との関係性によって成立する」


を伝えたかったのです。

ドイツの哲学者ハイデッカーの


「存在は他の存在者に認められ初めて存在者となる」


ですね。

誘拐編は呆気なく終わらせて緊迫感を台無しにしたかったのです(笑)。

それはケイと真琴の今後の方が遥かに緊迫してる暗示です(笑)。

下薗さんと御子神くんはケイのこれからの日常及び非日常を表現するのに役立ってくれました。

機会があれば


「おおらか過ぎて愛されない下薗さん」


「本能のままに生きすぎるスナイパー御子神くん」


を書いてみたいです。


私は悲しい物語は好きではありません。

涙で物語の幕を降ろせても、涙で人生の幕は降りないからです。

ケイと真琴には途方もない困難が待ち受けてますが、読んでくださった皆様は二人の幸せをどうかお祈り下さいませ。


私の思いのままに書き続けた物語にお付き合い下さりありがとうございました。


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