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ソイトゲ   作者: もはや
3/5

第三話 「双方向の片想い」

裏があるとは思いながらも、押し掛けメイド「ありす」に惹かれる主人公の桂木ケイ。


ありすから申し出た動物園デートを楽しむ二人。

しかし「檻の中」の動物と自分を重ねるありすに、ケイは深い闇を感じ取る。


夕食後の夜にアパートに誘われても断らず、自分もケイに惹かれはじめていることをありすは告げる。


文字通り「生まれたままの自分」をさらけ出すことにより、ありすはケイに全てを委ねる覚悟をしたのだが…。


物語の核となる、ありすの秘密に迫る第三話です!

そこには僕が見たがっていたモノと、僕が見慣れたモノの二つがあった。確かに二つがあるのだ。


「驚いたよ…ね?これが私の…。ううん、ボクの正体。

アンドロギュロス(半陰陽)って言ってね、両性具有者は五万人に一人で産まれる先天的な『病気』ってされてる。

思春期になるとホルモンバランスの乱れから男か女かを選ぶ手術を受けるんだけど、ボクみたいに完全な中間で産まれて、今なお両方を持ち合わせているのは世界にボクだけだ。

ボクはね…物心付く前にお金に困った両親に売られたんだ。

研究所にとって、遺伝学、生物学の立場からボクは無限の可能性があるんだ…。

わからないでしょう?不自由なく親の愛に恵まれて学校に行かせてもらった『ケイさん』には。でもボクは居るんだよ。

確かにこんなボクは存在してるんだよ!」


僕は何も言えなかった。何を言ってもありすを傷つけるだけなのはわかっていた。

ただ、僕を「さん」で呼んでくれたことに、演技でないありすに安堵していた。


「あいつも…その研究所と関係あるのか?」


僕はそう聞くので精一杯だった。


「多いに関係あるよ。『アリストテレス計画』って言ってね、狂信的な研究所の連中は『万学の祖アリストテレス』を越える存在になるんだとボクを実験台にした。

『ありす』は研究所が付けたボクのコードネームだ。

何年も『檻の中』でボクは非人道的に扱われてきたけどさ…。でも、そんなボクを見兼ねて、普通の人間と同じ生活を与えてくれた人がいた。

『テレス久我山くがやま』研究所の職員の一人であの人のお父さんだ。そしてボクにとってもお父さんの様な存在だった。」


「あいつが…遺伝子研究の職員の息子ってことか?」


「そう、お父さんとあの人は研究所からボクを連れ出し、離れた山奥で初めてボクを人間として扱ってくれた。

初めてスカートを履かしてくれて、初めてテーブルでの食事を教えてくれた。

…家族の温もりを与えてくれたんだよ…。

でも、お父さんは研究所から横取りした研究成果を発表する前に他界した。

だからあの人は必死にお父さんの研究を引き継ぎ、奴らの研究を先に発表することで、一夜にして巨万の富を得たの。

そして正式にボクを『買い戻した』の。だからあの人にとってお金が力の象徴であり、正義ってのはこういう理由なの」


重すぎる現実に僕の心は潰されそうだった。

だから、せめて


「君の本当の名前は?」


と、問うのが精一杯だった。


「聞いてどうするの?でも…貴方には全てを話したいな…。

男なら幸二、女なら愛。」


言い終わると僕らはどちらからと言うでもなく、口唇を重ねた。

****

流れる涙と震えるボクの身体。

それはこのキスが永遠ではないことと、「愛してる」のキスでないことを告げた。

そう、このキスは

「今までありがとうのキス」

なんだよね。


「もう…帰らないと…。」


ボクは脱ぎ捨てたショーツを拾いながら、精一杯、甘美な世界から抜け出そうとした。

ケイさんの顔を見ないように支度しようとした。決心が鈍らないように。

これは夢。

今日までのことは全部夢。

明日になればきっと…。

でも…悪夢じゃない。だって絶対に忘れたくないから…。


ふいに肩に暖かいモノが被さった。ケイさんが背中ごしに毛布をかけて、毛布ごとボクを抱きしめて言った。


「朝までいいだろ」


ウソ?引き留めてくれてるの?

あの話を聞いてボクと一緒に居たいはずないよね?

こんな重すぎる女(女だもん!)駄目ですよ!

ケイさんにはちゃんと幸せになってほしいから…。


「僕にだって『添い遂げる』ことは出来る。

過去は消せないけど、未来は保証出来ないけど、今現在を添い遂げて一緒に泣いて笑うことは出来るから!」


「ボクも…あの人の身代わりなんかじゃない貴方を好きになってしまったの!

でも…駄目だよ!ボクなかんか…。

お嫁さんになれないよ?

ご家族や会社に何て言うの?

女の人がその…する様な…そういうこととか出来ないよ!」

ケイさんはボクの質問には答えず、


「一緒に朝を迎えることは出来るだろ…。」


とだけ言った。

わかってしまった。「朝まで」なんだってことが…。

非道い人ですねぇ。一夜限りの女ってやつ?

でも少しくらい嫌いなトコがないと諦めれないよね。ねっ?

うん、ボクを背負えるわけがないからそれは妥当な選択だよ。

いいよ…今夜だけ。

最高の夜にしてね。



それは信じられないほど安らかな眠りでした。

手を繋いで抱きしめられ、頭を撫でられ…。ケイさんの体温を身体中に感じて幸せの絶頂でした。

「紳士的過ぎて」ちょっと不満もあったけど、決心が鈍らなくて丁度いい。


最後の朝食を終えて「じゃあね」

でドアを閉める。

ケイさんはどこまでもクールだった。


…わかってた。最初から無理だって…。わかってた。最後はこうなるって。


こらえても涙は溢れ、太陽さえも容赦なくボクを責める。


下を向きながらタクシーを止めた。


…帰らないと…。


「○○町××通りまで。」


これで…ケイさんとも、この町とも、お別れ…。


「へぇ~そんな所に住んでたんだ。けっこう近いね。」


ボクの隣に何喰わぬ顔でケイさんが座り込んできた!!?


「あいつに会いにいくぞ!」


その語気を強めた態度にボクはまた心を奪われた。

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