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親もグーで殴って教育しないとダメ。

 「死ぬことが僕の本望です。」


とある私立高校、2-Bの8月を過ぎた夏の教室にて、

朝のホームルームに”あなたの声を聞かせて”というプリントが配られた。

本来、そのプリントの役目は二学期が始まる際に全校集会で原爆での体験を

体験した60歳のおばあちゃんが学校に訪問し、その話を聞いて、その感想を書き見てもらう役割だった。


 正直に言おう。

僕は疲れた。

僕はもうやっていけないかもしれない。

僕はもうダメだ。

僕はもう頑張れない。

僕は天才が羨ましい。

天才に生まれたかった。

誰か僕と変わってくれないだろうか。

もう人とやっていける自信がない。

生きていても楽しくない。

もう死にたい。


僕の脳内に回る言葉の数々は、いつもそれを自分に自覚させるように、負の言葉を言い聞かせていた。


 僕は小学生の頃から両親の判断で進学校の塾に通わされた。もちろん、僕も親が正しいと思ったし、親のいう通りにすれば、絶対失敗することなんてない。そうだ、頑張って、一生懸命頑張ろう。

けれども、毎週土曜にあるテストの結果が僕を狂わせた。

点数を取れないせいで、親からはすごく怒られ、しっかりしろと暴力も振るわれる。 それの繰り返し…

しかも、僕の周りからは友達、自由時間や我が家の財産が減ってゆく、担任の先生も僕をメンドくさい奴だと決めつけ逃げてゆく。…嫌だった。

その頃から僕の中には自殺願望が生まれた。


 中学校の受験が終わった、入学時、親はあまり喜んでいるようには見えなかったけど…

やっと、楽しい日々が過ごせる。

けれども、私の思い描いた理想とは異なり、地獄は続いた。

学校の教育方針が変わったのだ。

毎週ある夜9時まである特別講座、しかも休んだら呼び出されて課題を渡される。

学習の出来不出来によって変わる先生の態度、両親からの暴言暴力、

そしてクラスの奴らが発した僕のガセ情報によって僕自身気持ち悪がられ、

クラス内から疎外された僕はずっと一人、誰の邪魔にならないように図書室で自習している。

でも、それをやっても無駄だった、点数なんて伸びなかった。

それの繰り返し… 


今日は、特に嫌だった。今日は三者面談がある日だ。

おそらく、夏の初めにあった全国模試のテストについての話し合いだと思う。

僕は、もうほとんど脱力して勉強出来なくて、その点はすごく悪いんだろうな…

どうせ、担任の正見先生は勉強しろって言って、両親はいろいろ言って終わるんだろうな…


宮田「はい、若田君、プリント。」

僕「…」

僕は、それを無言で受け取った。


ちなみに、今、数学のプリントを渡しに来た女子は宮田さんだ。


山口「なに、あいつ感じワル、近づきたくないよね。」

橋本「勉強もできない、運動もできない、おまけに臭いし…嫌だよね。あんなのがいる教室って」

川谷「ほんっと、なんで、学校来ているんだろうね、あいつ」


女子の暴言が飛んでくる、いや、正論というべきか。

本当になんでいるんだろうな…


宮田「そうだよね。なんでいるんだろうね。」


宮田さんが蔑んだ目で僕を見てくる。宮田さん、好きなのに…、

あ…いやいや、ダメだよ、かわいそうじゃないか宮田さんが…

そして、僕は拳で力いっぱい心臓を殴る。

「うわっ、キモッ」

どこからかそんな声が聞こえた。

殴られた心臓は少しだけ心拍数を上げていた。生きてるんだな…

そのまま止まって死んでしまえばいいのに…、

遺書だってもう書いてきたんだよ、僕は地獄に行って痛めつけられたいから骨は焼かないで死んだ肉体そのまま海に捨ててくれってもう書いたんだよ…

ここを出よう…僕は教室が嫌いだった。


あと何分かで三者面談だし、人の居ない所へ行こう

そうだ、男子トイレの個室… ダメだな、数分間、僕と一緒にいる便器がかわいそうだな…


そうしているうちに、三者面談が始まる5分前となった、

僕の場合、一度、母が出席して僕と先生と母の三人で三者面談を行ったのだが、

その際、僕の態度が気に食わなかったのか、反省していないという事で母が僕を床に押し倒し顔面をグーで次々と殴り、その様子を先生が笑いながら観察するという奇妙な現場となって、それからは父親も連れてくるようにと担任から話を勧められた。

ということで、

今日は、父親も一緒なのらしいが無駄である、私に与えるダメージが二倍になっただけだ。


母が大学の偏差値表を見ている

母「ねぇ、慶吾、あんたさ、偏差値何?」

僕「…えっとここぐらいかな?」

僕は、前返却されたプリントの総合した点の偏差値の場所を指した

母「あんた頭大丈夫? こんなにあるわけ無いじゃん、教えてやろうか、あんたなんて所詮ここなのよ。」母は紙から外れた所(何も書いていない壁)の紙の下の部分を指さした。


母「バカ大、夢も希望もないバカ大、世間の人から見られたら生きてて恥ずかしいと思うバカ大、一生人の足に踏まれて踏まれ続けて挙句の果てには自殺したほうがマシだと思うバカ大、」

母は声を荒くして面接室近くの職員室まで響くように声を荒上げた。


父「おい、直子、そこまでにしないか…また慶吾が過呼吸を起こして、近所迷惑にするぞ。」

父が言った。

しかし、すでに職員室内に響き渡っているから近所迷惑なのだが…

ちなみに、僕が過呼吸を起こしたのは首を絞めた父のせいであり…


「すいませーん、遅くなりましたぁ~、こちらの教室へどうぞ~。」

少し問題が発生した…

普通なら、担任の正見が指示をして僕と両親とを教室へ招き入れて討論をする

しかし、その教室から顔を出したのは、太った、まんまる顔でニキビが顔に出来ている髪の毛のスタイルが金八先生のような老け顔の先生だったのだ。

もはや担任じゃない、ダルマさんだ、いや、秋葉系にいそうなおじさんだ。


あれっ教室間違えたか? どうしよう…、ついに行くのが嫌になって教室すらも記憶しなかったか…

すると…

「あれぇ~、若田慶吾君だよね。あと、その御両親?」

合っている、でも知らないよ…こんなおじさん…


「はい、…よろしくお願いします。」

そう言うと、僕と両親は、その教室へ足を踏み入れた。


僕は先生が正面に来るように座った。

そして、親も僕の左右にそれぞれ座った。この状態なら左右から同時にグーパンが来るぞ。


母「ねぇ、慶吾、誰この人?」

母がヒソヒソと聞いてきた、聞きたいのはこっちのほうだ。誰だ、このおじさん。

するとそのおじさんは、パラパラとテスト結果の紙を探り始めた。


僕「あの、すいません、僕がすごくダメな人間だからかもしれませんが、初対面ですよね?」

理屈が通っているかどうか不安だったが、質問の意図は通っているだろう。


おじさん「あっ、ごめんごめん、うっかりしてたわ。」

そう言うと、今度は、おじさんの机の上の近くにある所有物であろうラジカセのカセットをいれる部分を探り始めた。

…えっ、ラジカセ?

「(/ω\)イヤン」

あれっ? 今、ラジカセ喋らなかった?

おじさん「はいっ、僕、大日本帝国の南国公立高校で英語の担当をさせていただいております勝山実と申します。」

すると先生は、大きく腕を伸ばして僕に名刺を渡してきた。


あれ、おかしくない色々と…

僕の脳内では今、この状況はおかしいと言う自分と 自分がダメ人間だからだろう という自分とで戦いが巻き起こっていた。 しかしその戦いは5秒も経たないうちに引き分けとなった。


母「あのぉ、勝山先生ですよね、どうして、国立の先生が私立に来て三者面談をしているんですか?」

母が先に聞いてくれたのだ…

勝山「いやぁですね。この慶吾君の全国模試の受験場所の学校コード、うちの学校になっているんですよ。ですからね、僕がわざわざこちらまで足を運んで慶吾くんの三者面談をしに来たわけですよ。」


なんか最後の部分、言葉遣いおかしかったような…えっ?

理由それだけ…

いや、普通ミスってたら、ベネ○セが間違いを調査して修正するんじゃない?

勝山「もちろん、ちゃんと担任の正見先生の許可も頂きましたよ。」


そう言って勝山は許可証を見せる。


ってこれ、血文字じゃねーか。

勝山が僕らに見せた許可証は、おそらく担任の血液で大きく”許可”と書かれた文字だった。

一体どんな脅迫の仕方をしたんだろう。


勝山「では、はじめに慶吾君の成績を見ていきたいと思いまーす。」

すると勝山は僕の成績を親にも見えるように広げて見せた。

やはり、すごく悪かった。

というか、前受けたときよりも格段に悪く

点数表示の棒グラフも真下へ下っていた。



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