表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

★温度差




 三月なのに寒さが残る今、大学の受験も一段落し、桃色の、小さな花を咲かせている梅の木が目立つ、人気がない公園の中、俺はいた。

 今日は大好きな彼、準一(じゅんいち)と久しぶりのデートの待ち合わせだ。

「さっむ、さむ、さっむぅううううっ!!」

 約束の時刻よりも五分も遅れてきた彼は、時間に遅れたことを気にして走ってきたのだと思ったら、いくらか、『寒い』を連発し、俺の背中から腕を回し、抱きついてきた。

 後ろから抱きついてきた彼の最初のひと言は、「待たせてごめん」じゃなくて……。

「ああ、あったかい」

 だった。

 俺のこと、湯たんぽ代わりくらいにしか思ってないのか?

「おい!」

「ん?」

「ん? じゃねぇ! 俺はお前の暖房器具じゃないんだぞ?」

「そりゃそうだろう。俺の恋人だ」

 ケロッとした顔で当然のように言う彼。

 だったら……なんで、久しぶりのデートなのに……こんな、暖房器具扱いをされなきゃなんねぇの?

 こいつはいつもそうだ。

 俺のことを、いったいなんだと思ってやがるんだよっ!!

 今だって、腕に包まれて、ドキドキしてるのは俺だけで……だけど、こいつはそうじゃなくって……。

 ムカつく!

 自分の中で、怒りがふつふつとわき上がってくるのを感じる。

「マイペースなのもいい加減にしっ、んうぅっ!?」

 顔を上げ、怒鳴る俺を中断させたのは、彼の、薄い唇だった。

「怒った顔も可愛いけど、そうやって赤くした顔も可愛いっ!!」

 リップ音と共に唇が離れ、彼は静かにそう言った。

「っつ!!」

 俺は――ああ、ダメだ。頭の中が真っ白で、怒りも忘れてしまった。

「あ~、あったけ~~~~、裕真(ゆうま)かわいいっ!!」

 スリスリ、スリスリ。

 うなじのところに頬ずりされて、俺は為す術なく、熱くなる顔を俯けた。

 ……一生、彼には敵わない。

 認めるのはムカつくから、俺は彼の腕の中で、そう思った。




 **END**

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ