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燃える国

作者: 東京多摩

 その国は、燃えて消えてしまった。

 荘厳なる大理石の宮殿も、天に届かんばかりの塔も、百エーカーもある庭園も。

 大きな剥製を飾る博物館も、美しい音色のオルガンのある音楽堂も、建屋そのものがアートの美術館も。

 木々も、動物も、そして、人でさえも。

 すべて、赤く、青く、黄色く、色とりどりの炎を上げ、空へ真っ黒な煙を吐き出して燃えたのだった。

 最初に、その国が燃えているのに気が付いたのは、川を挟んだ隣国の貧しい農夫だった。

 深夜、切れている水瓶の水を求め外を歩き、川の水を汲みあげる最中、大きな音がしたと思うと国が燃えていた。

 息も絶え絶えにそう報告する農夫を、宿直の兵士達はただの酔っ払いの妄言だと相手にしなかった。

 ただ一人、その年に入隊したばかりの兵士が一人、事実確認の為派兵された。

 そして、ただ煌々と燃える国を、唖然として見たのだった。


 核の実験に失敗した。

 地球外生命体に焼かれた。

 神の試練として選ばれた。

 様々な風説、憶測、法螺話が横行しているが、今でも原因はわからない。

 あわせ国が、人が燃えた意味も。

 今でも、その国では芽吹いたばかりの木々を燃す、小さな炎が上がることがある。

 人々は、そんな火と火炎のみのその国をこう呼ぶのだった。

 燃える国と。

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