二人の影
青々とした草原に緩やかな風が吹き、草木を揺らす。身の丈ほどある揺れる緑の波を掻き分けて、透きとおるような白い肌を持つ一人の少女が歩いている。肩まである稲穂の黄金色に近い茶髪と薄い水色の胸からくるぶしまで一枚の布で出来たワンピースの端をユラユラとリズミカルに揺らした。
少女の黒く、遠くを見据える瞳。けれど、どこか哀愁が漂う。
その瞳の先には夜のように暗い色をした癖っ毛のある髪を持つ少年がいた。少年は、ジッと空を見つめる。
少女は、薄いピンク色の唇を震わせた。
「仁さん、そこにいたのですね」
仁と呼ばれた、その少年は身動ぎひとつしない。人形ではないかと、他人が見ればそう錯覚してしまうほど少年は動かなかった。
しかし、少女は知っていた。それが、人形ではないことを。
少女は身の丈ほどある草原から抜け出て、仁の側に立ち止まる。仁の横顔をちらりと見た。そして、すぐに仁が見ている空に視線を向けた。
空は深い青色に掌を向けても隠しきれないほどの大きな月と、一周り小さな月が二つ浮かんでいた。
「そろそろ時間だ」
仁の言葉に釣られて、再び少女は仁の横顔を見る。仁はもう空を見てはいない。ただ、真っ直ぐに正面を捉えていた。
そして、仁は少女に背を向けて歩き始めた。その背に向け、少女は。
「……本当に間違っていませんよね?」
少女の問いかけに仁は歩めを止める。けれども、振り向くことはない。
「何も知らない彼を……!」
「シオン」
仁は少女の声を遮った。
シオンと呼ばれた少女は、ハッとしてばつが悪そうに顔を俯かる。
「……ごめんなさい」
仁に聞こえるかどうか分からないほど小さく震えた声で謝罪する。
それ以上、仁もシオンも口を開くことはなかった。
二人の影がユラリと揺れた。
さてはて、仁とシオン。
この二人は何者でしょうかね?
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