放課後とゲーム
背中にビッショリと汗が吹き出て、ワイシャツが肌に張り付き不快感を覚える頃。ようやく、雷夢の家が見えはじめた。
家の敷地に入るため、花の装飾がされた黒い鉄の柵の鍵を開ける。手前に押すと、ギィと音をたて柵は動いた。
雷夢から柵をこえ、玄関に通じる石畳の道に足を進める。
「あっ…………」
雷夢が短い声を上げた。何事かと思い雷夢が見ている方に目を向けた。そこには、赤い自転車が停めてあった。
あれ……確か、雷夢の妹さんの自転車だ。
再び雷夢に視線を戻すと雷夢は苦虫を潰したような顔をしていた。小声で「家にいるのかよ……」と呟く。
あまり、妹さんと仲が良くないみたい。
確かに妹さんは…………うん……失礼なのは承知だが、少々怖い。常に何かに対して怒っているかのように見える。
玄関の鍵を開け、扉を静かに出来る限りの音をたてずに開く。家の中に入り靴を脱ぎ、邪魔にならないように隅に靴を揃えて置いた。
雷夢が靴を収納棚にしまいながら、
「階段上るときは、気を付けろよ」
棚の扉を閉じると、階段の前に移動する。雷夢は、人差し指を口元近くに持ってくる。
「静かに登れ、あの馬鹿にバレたら気まずいからな」
雷夢に頷いて返事をしようとした。
「馬鹿って誰のこと?」
「うおっ!?」
「ひぃ!?」
背後から突如声がした。あまりに唐突で予想外だったから、二人して情けない声を上げてしまった。
恐る恐る雷夢が声のする背後に首をひねり、視線を移動させた。僕は身動きをとらずに石のように固まる。背後から針のように鋭い威圧感を感じた。
「な、なんだお前居たのか……」
「…………馬鹿って誰のこと?」
「…………………………………」
ドス黒いオーラが見えそうなほど背後の妹のさんの気配がビシビシ感じる。口調からも感じるが、機嫌が悪そうだ。
「誰 の こ と ?」
「……き、近所のぉ鶏」
雷夢…………住宅街に鶏なんかいないよ。
これじゃ、妹さんの事だと言っているようなものじゃないか。
フッと霧が晴れるように針のような鋭い威圧感が消えた。
「ふーん、あそこの鶏かぁ……」
妹さんは、そう言うとリビングの方に歩いていく音がした。体がすぅーと軽くなる。階段の上をぼぉと眺めた。
いるんだ…………、住宅街に鶏………。