放課後とゲーム
「よっしゃ、早々に学校出て帰るぞ!」
高らかにそう言うと雷夢は、自分の席に戻っていた。
放課後となったこの時間帯、クラスの人や、他の生徒も気が緩み蝉の鳴き声と混ざり合った声が少々耳障り。
悲鳴を上げずにすんだ背骨を片手でゆっくり擦る。
横目で何となく生徒が次々とくぐり抜け、クラスの人数が減っていくの眺めていた。
「もう行けるか?」
いつの間にか隣に見るからに軽そうな厚みのない鞄を肩に掛けた雷夢が立っていた。
「うん、行けるよ」
机に置かれていた半分チャックが開いた状態の鞄を掴み、完全にチャックの口を閉じた。鞄の持ち手を掴み、雷夢と共に教室を後にした。
片側に木が覆い繁り、蝉の鳴き声と気力すらも消し炭しそうな暑い日光を背に受けながら砂利道を進み、後門から学校の敷地を出る。
最近整備されたばかりの歩道を雷夢と肩を並べて歩く。雷夢と一緒に帰るのは久し振りだなぁ、と密かに思う。
何故なら、雷夢はサッカー部に所属しレギュラーに抜擢されているから、放課後は練習で急がしい。
…………あれ? 部活……雷夢……。
重大なことに今さら気づいた。
「いやいや、待って! 雷夢部活は?!」
急に立ち止まった僕につられるように雷夢の足も止まった。
そして、目を白黒さてた。
「え……さ、さぼり…………かな?」
「駄目でしょう!」
困ったような顔をして鞄を担いでいない方の手で無造作に後頭部を掻く。
「問題ないよ。たまには、ね」
「それで大丈夫?」
ニヤリと雷夢が笑う。
「女と間違われる顔立ちの方が大丈夫か、って聞きたいよ」
「それを言う?!」
顔立ちが女性よりの男の僕にとって深い傷なのに、わざわざ塩を刷り込んでくるとは……。
止まったままの足が自然と動き、歩み始めた。隣の雷夢も続くように歩く。延々と続くアスファルトの道をお互いを茶化し合いながら歩き、着々と雷夢の家に近づいてきた。