殺されクラブ
移ろう気持ち、縺れる足先。
ふらふらと、ゆらゆらと
殺されてゆく、殺されてゆく、殺されてゆく、
殺されてゆけ。
窓際の席のあの子は全治二ヶ月の怪我をした。
入院したらしい。学校には来ていない。
いつものように、窮屈で退屈な学校と言う縦社会かつ弱肉強食なのに危機感や焦燥感がまるでない和やかにして殺気に満ちた場所で、僕は空想を巡らせる。
あの子は今きっとギプスをしているだろう。
足なのか手なのか知らないけど、仮に手だったとする。
あの子にとって殺人は容易なもので、快楽に繋がり、空腹を満たす唯一の手段だとすると、隣の席に座る僕を殺しに来るかもしれない。
そうなると片手は使えないから、もう片方の手だけでナイフを握りしめ、空虚な目をして僕の方に、ゆらゆらやってくるのだ。
いきなり刺したりはせず、「お前は死んどけ」などと言う適当な台詞を吐いた後無表情に無感情に突き刺してくる。
僕はそれをよけると、吃驚して混乱し、ナイフを奪って教室の隅になげる。
それを見たクラスメイト達は我に返り、奴らの自分本意な本性が明らかにされる。
つまり一目散に、友達など捨てて逃げ去るのだ。
これで完全なる一対一になり、武器を持ってない同士の潰し合いと言うわけだ。
僕はここまで空想を繰り広げたときにふと思いついて、立ち上がり、黒板に文字を書く。
「殺される為に、ナイフを持ってこい」
小さく小さく書かれた文字は、ホームルーム前の騒然とした教室にいるクラスメイト達には気付かれず、先生にもきっと気付かれない。
それでいいだろう。上等だ。
少なくとも脳内であの子に殺されたんだし、現実世界で殺されるなんて御免なのだから。
僕はまた席に着き、今度は誰にも聞こえないような小さな小さな声で呟く。
「殺されないように生きるにはどうすればいいと思う?」
もちろんクラスメイトの中の誰にも聞こえていない。
平穏な世界で生きるこの少年少女達には僕は殺されないだろうし、僕も殺さない。
現在に限って言えば、だけれど。
殺されないように生きるにはどうすればいいと思う?
空想に浸る、現実には影響しない。
なんだか壊れ気味です。