世界は私中心で回らない
昔は、自分が物語の主人公だと思ってた。
世界は自分中心に回っていて、何もかも自分の思い通りになると本気で思っていた。
けれど、年をとるのにつれて、様々な挫折や敗北を知って、私がこの物語の主人公ではないということに私は気づいてしまったんだ。
むしろ、私はこの世界のその他大勢でしかない。
世界は私の思い通りにはならないし、私自身のことでさえ、私の思い通りにはならない。
「ごめん、俺、お前をそんな目で見れない」
「…そっか、ごめんね」
彼はその言葉だけを言うと、私から離れていった。
私はその場に座り込み、振り返ることのない彼の背中をただただ見つめていた。
うん、そうだよ。世界は私の思い通りになってくれない。
だって、思い通りになってくれるのなら、彼は今頃私を抱きしめて、私の望んだ言葉を言ってくれるはずだった。
私は、この物語の主人公なんかに、なれない。
(主人公なんかにならなくてもいい、望んだ言葉を言ってくれなくてもいい、ただ、ただ一度だけ、後ろに振り向いてくれれば、私は少しだけ楽になれたのかもしれない)