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雛子

頑張って書きますのでよろしくお願いします。

 頭が、重い。体の感覚がない。目を、開けようと思うのだけれど、思い通りにいかない。

 どうしたの、わたし。一体どうしちゃったの。


 カチャリ。キイ。


 ドアがひらく音がした。誰かがゆっくりと、こっちに近づいてくる。

 目が、やっと開いた。


「あら、起きたの」


 目の前にママの顔があった。見慣れたわたしの母親だ。少し戸惑ったような顔に、なんとか笑顔をつくっている。

 体を起こそうとしたけれども、わたしの体はちっともわたしの言うことをきかなかった。体どころか、口さえ思い通りに動かない。目が見えて、耳が聞こえるだけ……どうして?

 仕方なく視覚から情報を得る。目の前は真っ白な壁。いや、これは天井だ。わたしは仰向けになっているみたい。体は言うことをきかないけれど、感触は戻ってきた。わたしは布団の中にいる……ベッドの上にいるようだ。頭の下には固い枕の感触がある。

「ここはどこ」とママに聞きたい。けれど聞けない。思い通りにいかない。歯痒く思っていると、ママの方が仰向けに寝ているわたしを覗き込むようにして、口を開いた。


「気分はどう? 落ち着いた? 舞子まいこ


 え?


 聞き間違い? 今、ママなんて言ったの?


「お、目が覚めたか」

 わたしの動揺を男の人の声が遮った。これはパパの声だ。重く、強い足音がわたしの方へ近づいてきて、わたしのすぐ傍で止まり、パパが顔をだした。パパはママより落ち着いた顔をしていた。

「舞子、どうだ、気分は。どこも調子悪くないか」

「なんだかぼうっとしているみたい。今起きたばかりだから」

 ベッドの左にママ、右にパパだ。二人とも申し合わせたような優しい笑み。壊れものをいたわるように、細心の注意を払って、優しく笑っている。そんなふうに笑いながら、なぜ、わたしを舞子と呼ぶの?


 わたしは、雛子ひなこよ?


 それからお医者さんらしき男の人と、おなじく看護師さんと思われる女の人が部屋に入ってきて、ここが病院だと分かった。二人とも、わたしを「舞子ちゃん」と呼んだ。

 一体何がどうなっているのか、まるで理解できなくて、わたしはパニックを起こした。

 なぜわたしは病院にいるの? なぜ体が言うことをきかないの? なぜ思い通りに話せないの?


 そして、なぜみんなわたしを舞子と呼ぶの? 舞子はわたしの妹よ。双子の妹。ぜんぜん似ていなかったじゃない。なぜ間違えるの、わたしは雛子よ、雛子。


 わたしは心の中で何度も何度も叫んで訴えた。だけど、誰もわたしを雛子とは呼んでくれない。わかってくれない。


 一体、どうして。

 

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