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第7章 ~旅立ちの朝~

 夜が明けた朝、アルカドール城の玉座の間。

 玉座に腰掛けたユリスと、彼女に向き合う位置に立つロアとアルニカ、そしてルーノ。

 三人は肩掛けカバンをさげていて、ロアとルーノは剣、アルニカは二本の短剣、ツインダガーをそれぞれ皮製の鞘に収め、腰に下げていた。

 どれも、各々が使い慣れた武器である。


「……それではロア、アルニカ、ルーノ、本当によろしいのですね?」


 王座から立ち上がり、ユリスが三人に問う。三人はなにも言わず、小さく頷いた。

 ロアは昨日の、ユリスからの申し出を受けることに決めた。その旨を今、ユリスに伝え終えた所なのだ。


「……わかりました。アルカドールの女王として、出来る限りの助けはいたします」


 ユリスは三人の元へ歩み寄りながら、


「ロア、あなたにこれを……」


 ユリスは右手に何かを握っていた。ロアは手のひらを差し出す。

 シャラン、という音と共に、何かのペンダントがロアの手の上に落ちる。

 手にとってみると、銀色のチェーンの先に小さな無色透明の水晶がついていた。


「これは?」

 

 ロアはユリスに問う。


「王族の力が込められた、魔の力を感じる石です。闇の力を感じると、つまり『魔族』が近づいたりすると、その石は紫色の光を発します」


 つまり、この石を持っていれば、王族のように魔族の力を感じることが可能になるということだろう。

 ロアは、ペンダントを首から下げた。ユリスは続ける。


「あなた方には、まず最初にベイルークの塔へ向かって頂きます」


「ベイルークの塔?」


 その地名に、ルーノが疑問を抱いた。


「今となっては、もはや廃墟のあの塔になにがあるんだ?」


 そう、「ベイルークの塔」とはアルカドール王国の南に位置する塔で、以前は魔法使いが住んでいたと言われている。

 しかし、いつしかその魔法使いは塔を捨て、別地へ移っていった。以来、誰も塔を訪れることはなく、数十年に渡って放置されていた。


「……あの塔から、魔族の力を感じるのです。それも一際大きな力を」


 その言葉に、アルニカがある可能性を見出した。


「ということは、もしかしたらその塔に『魔族』の根源が……?」


 ユリスはアルニカの目を見て頷き、


「可能性はあります」


「魔族」の根源がわからない以上、可能性があるのならあたっておくべきだろう。

地理についての知識があったルーノは、


「ベイルークの塔なら、ここから二日はかかるな……」


「え、そんなに遠いの?」


 ユリスは、


「塔へ向かう途中に、ラータ村という小さな村があります。食糧や水はそこで補給できるでしょう」


「ラータ村か……」


 ロアがそう呟く、ロアはこの地名に覚えがあった。


「ロア、知ってるの?」


「うん。前に果物屋の仕事で仕入れに行ったことがあるんだ」


 宿もあったし、あの村なら休憩場所に最適だろう。ロアはそう思った。


「それからもう一つ、ラータ村に『イルト』という兎の獣人族の子がいます。彼と合流してください」


 その名前は、三人とも聞いたことがなかった。


「その人は誰ですか?」アルニカが問い返す。


「私の側近の子です。彼をあなた方と同行させます、彼にもそのことはすでに伝えました」


「どんな人?」


 ロアが、「イルト」という人物についての特徴を聞く、

 ユリスによると、彼はルーノと同じ兎型の獣人族で、毛並の色は白。両手首に金色の腕輪をはめていて、水色の水晶のペンダントをつけているという。

 ユリスの側近ということだけあって、剣の腕はそれなりにあるとのことだ。


「それじゃあ、その人と合流すればいいんだね?」


「はい、彼ならきっと、あなたたちの力となってくれるでしょう」


 そう言うと、ユリスは両手を合わせて、


「それではロア、アルニカ、ルーノ、旅の無事を祈ります」


「わかった。それじゃあ行くよユリス」


 ロアはユリスに背を向け、玉座の間の扉へと足を進める。アルニカとルーノも、彼に続いた。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――






【キャラクター紹介 04】“ユリス”


【種族】人間

【性別】女

【年齢】16歳

【髪色】ハニーゴールド


 アルカドール王国現君主。16歳という若さでありながら国を治める立場にある。長く伸ばした美しい金髪と、宝石のように澄んだ瞳が印象的。

 その「国民第一」の政治方針は国民から多大な支持を受けており、子供達や大人、種族関係なく幅広い年代から信望を集めており、その信頼は厚い。

 女王という立場であるために、少女でありながら剣術の腕はかなりのものだが、彼女自身が戦いを好まない性格故か、彼女が戦う所を見たことのある人は少ない。

 王族の人間だけが扱える、代々引き継がれてきた聖剣の継承者である。






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