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第46章 ~団体戦~

 ヴルームによると、この授業はヴルームによって選ばれた六人の生徒の為の特別授業だという。剣術と槍術、その二つの科目からそれぞれ優秀な成績を収めている生徒を集めて行われる授業とのこと。

 ヴルーム曰く、不定期に彼の気まぐれに応じて実施されるらしい。


「『気まぐれ』って……そんなテキトーなことでいいの?」


 若干笑い混じりに、リオが漏らした。


「まあそう言うなリオ、ここにいる六人は全員、俺が選び抜いた『精鋭』だ。退屈はさせないぞ?」


 そこまで言うと、ヴルームはリオが持つ槍を指で指して、


「その槍、今日は思い切り振るわせてやる。何たってここには、大人顔負けの剣術の才能の持ち主がいるんだからな」


「!!」


 その言葉を聞いたロアは気づいた。

 ヴルームの台詞から考えて、どうやら彼は自分とリオを戦わせるつもりのようだった。


「ヴルーム先生、ロアとリオちゃんを戦わせるつもりみたいね」


 同じことを考えたのだろうか、後ろからアルニカがロアに耳打ちする。


「みたいだね」


 ロアは返した。


「さて、団体戦のルール説明を始めるぞ」


 再びヴルームが口を開き、六人の生徒達にルールの説明を始めた。その説明によれば、どうやらこれから行われるのは「勝ち抜き戦」。

 六人を三人一組の二つのチームに分けて、それぞれのチームから一人づつ戦い、勝敗が決したら負けた方は次の者と交代する。

 勝敗の基準は、「地面に膝をついたらその瞬間に負け」とのこと。ヴルーム自らが止めに入る可能性もあるらしい。

 三人全員が負けたら、そのチームは敗北。逆に負かしたチームは勝利となる。


 負けない限り、最初に出た者は相手チーム三人全員を相手にすることも可能な為、一人に相手チーム全員が負かされるということも起こりうる。


「……とまあ、こんな感じだ。じゃあ早速始めるぞ」


 まずは、ここにいる六人の生徒を三人一組に分けて、二つのグループを作る必要がある。

 ヴルームは修練場の中を見回して、初めてその事実に気が付いた。今ここにいる生徒は、男子が三人と女子が三人ということに。


「丁度いいな。よし、男子三人と女子三人でチームを作る、それぞれから一番手を決めろ」


 そう告げた。男子三人対女子三人では力の差もあり、不平等に感じるかも知れないが、特に誰も意義は唱えなかった。

 剣術が教育科目に取り入れられているセルドレア学院には、剣の勝負なら大の男さえ退けられる実力を持つ少女も少なくはない。

 喫茶店で強盗の男を退けたアルニカ、男子三人がかりでも敵わないという槍術の実力者のリオ。彼女たちがその良い例だろう。

 男子対女子だから不平等。そんな概念はこの学院には存在しないのだ。






「んじゃ最初は、誰が行く?」


 男子三人が集まっている中で、そう言ったのは「エカル」という少年。ロアのクラスメイトだ。

 専攻科目は剣術で、ロアには及ばないが、この特別授業に呼ばれるだけの腕はある。


「それじゃあ……」ロアがそこまで言いかけた時、


「僕が行きましょう」


 ロアの言葉を遮って、もう一人の少年が敬語で名乗り出た。

 短めの髪型と、銀の淵の眼鏡が印象的で、どこか知的な雰囲気を漂わせている少年。

 彼の名は「カリス」。専攻しているのはリオと同じ槍術だ。


「いいの? カリス」


 カリスの後ろ姿に、ロアは問いかける。

 一番に出ると名乗り出たのは、何か理由があってのことなのだろうか。


「ロア君は僕たちの大将です。出るなら一番最後でしょう」


 カリスはそう答えた。

 彼の言う通り、この三人の中で一番強いのは恐らくロアだろう。彼は槍を片手に、修練場の中央へと歩み寄りながら、


「まあ、リオさんが出てきた場合、完全に僕に勝ち目はないでしょうが……」


 カリスは弱気な台詞を漏らした。リオと一緒に槍術の授業を受けているカリスは、彼女の強さをよく知っているらしい。


「そんな弱気でどうすんだよカリス。気合いだ、気合い入れて頑張れ!!」


 エカルがカリスを激励した。


「はあ……」


 カリスは小さくため息をついて、人差し指で眼鏡に触れながら、


「まあ、僕が負けたら頼れるのは君だけですから。その時は頼みましたよ、ロア君」


 そう言い残して、彼は修練場の中央、戦いの場へと歩いて行った。


「……そりゃ一体どういう意味だよ」


 後ろからエカルの声が聞こえた気がしたが、カリスは無視した。


「男子チームからは、カリスだな」


 修練場の中央で、二人の生徒が向かい合う形で立っていた。男子チーム一番手のカリスと、女子チーム一番手のアルニカ。

 その脇にはヴルームが立っている。他の生徒達は、修練場の隅でその様子を見守っていた。


(とりあえず、リオさんが一番手ではなかったのは幸運でしたね……)


 目前に立っているアルニカと目を合わせて、カリスは思った。もしもリオが一番手だったら、負けは確定していただろう。

 しかし、油断はしては駄目だ。クラスメイトなので顔を合わせる機会は度々あったものの、カリスはアルニカの強さについては何も知らなかった。

 もしかしたら、彼女はリオよりも強いかも知れない。


「お手柔らかにね、カリス君」


 アルニカはそう言うと、ツインダガーを鞘から引き抜く。

 彼女は使い慣れた二本のダガーの刃を、カリスへと掲げた。


「こちらこそ、アルニカさん」


 カリスも槍を構えて、ひし形の槍頭をアルニカへと掲げる。


「カリス、アルニカ、二人とも準備はいいか?」


 ヴルームがカリスとアルニカに問うと、二人は口を揃えて「はい」と答えた。


「よし。それでは第一戦、カリス対アルニカ、始め!!」


 戦闘開始を示すヴルームの声、それと同時にカリスは地面を勢いよく蹴り、姿勢を低めつつアルニカへと走り寄る。


「!!」


 それに気付いたアルニカは、迎撃の構えに移った。






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