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第45章 ~特別授業~

「……あれ?」


 学院の剣術修練場に足を踏み入れると同時に、ロアはその声を漏らした。


「どうしたの?」


 後ろにいたアルニカがロアに問いかけたが、修練場の様子を見た瞬間、「……あれ?」と、彼女もロアと同じ声を発した。

 その理由は、修練場の中にいた人物が余りにも少なかったからだ。両手の指で数えられる程の人数しかいない。

 剣術を専攻している生徒だけでも数十人いる。さらに槍術と合同となれば、この修練場には数えきれない程の生徒達がいても不思議ではない。

 ……四人、修練場にいるのは四人だ、男子生徒と女子生徒がそれぞれ二人づついて、ロアとアルニカを含め、全部で六人になる。


 場所を間違えたかと思ったが、この修練場はいつも授業で来ている場所。間違えたくても間違えられない。

 さらに、修練場にいる四人の少年少女達は皆、ロアとアルニカのクラスメートだ。

 皆、各々の武器を手にしている。その中には、二人がよく知る少女もいた。


 遅刻居眠り常習犯こと、リオだ。そして彼女の手には、その身長よりも長い槍が握られている。

 どうやら、あの槍がリオの武器のようだ。


「あ、やっと来た。ロア、アニー」


 リオが二人に声をかけた。


「リオちゃん、何でこんなに人が少ないの?」


「わかんない。ひょっとして皆サボるつもりかな?」


 冗談交じりにリオは答えた。


「いやいやリオ、流石にそれはないでしょ?」


 ロアが答える。

 学院の生徒達は皆、基本的に真面目な者ばかりだ。(リオやイワンを除けばだが)集団で授業をサボることなどまずないだろう。


「むー、わかってるよう。じゃあ何でこれしかいないっての?」


 リオは槍を床に立てるようにし、銀色に輝く槍頭を修練場の天井へ向ける。

 そうすると、彼女の槍が一層長く見えた。

 リオは身長155センチ前後で、ロアとアルニカより数センチ程高い。そこから見ても、あの槍の長さはゆうに200センチを超えるだろう。


 本当に、こんなに長い槍を使いこなすことが出来るのだろうか、とロアは思った。


 背後からの扉を開く音、修練場にいた生徒達は視線を扉へと向ける。

 扉を開けて入って来たのは、青い毛並をした犬型獣人族の教師、ヴルームだった。


「……全員揃っているな」


 修練場の中を見回して、そう呟く。


「よし、剣術の授業を始めるぞ。全員黒板の前に集まれ」


 生徒達に声をかけると、ヴルームは壁にかけられた黒板へと歩み寄り、白いチョークを手に取る。

 手に取った白いチョークで、黒板に何かの文字を書き始めた。

 ロア達を含む六人の生徒達は、黒板の近くへと歩み寄る。


「ヴルーム先生」


 後ろから、アルニカが話しかけた。

 ヴルームは書いていた手を止め、オレンジの髪の少女を振り返る。


「何だ? アルニカ」


「あの、何だか今日は、いつもより人が少ない気がするんですけど……?」


 普段の剣術の授業は30人ほどの生徒がいるのに、今日は六人だけ。

 実際、「いつもより人が少ない」程度の数ではないだろう。


「もしかしてヴルーム先生、集団ボイコットされちゃったんじゃないですかあ?」


「馬鹿言うなリオ、生徒からボイコットされるような教師になった覚えはない」


 少々真面目気味に、ヴルームは答えた。

 怒らせれば怖いものの、ヴルームは生徒達からとても評判の良い教師だ。

 生徒が悩みを抱えていたら親身になって相談の相手になってくれるし、学習でわからないことがあれば丁寧に教えてくれる。

 自分よりも生徒のことを第一に考える思考の持ち主で、「教師の鑑」と呼ばれるほど。


 普通に考えれば、彼がボイコットされるような要素は一切ない筈だ。


 ヴルームは教師であり、さらにアルカドール王国騎士団の副団長。団長のロディアスとは同い年で、幼なじみだ。

 その剣術の腕はロディアスと肩を並べる程で、ロアを超える「アルヴァ・イーレ」の達人なのだ。


「ああそうか。そういえばまだ説明していなかったな」


 ヴルームはチョークを置き、目の前の六人の生徒達に、


「『合同授業』と銘打ったが、今日の剣術の授業はお前達六人だけ『特別授業』だ」


「ぼ、僕達だけ!?」ロアが返す。「と、特別授業!?」続いて、リオが返した。


 お前達六人だけ、そして特別授業。これら二つの言葉に、何やらただならぬ物を感じた。

 もしや、これから行うのは成績が芳しくない生徒の為に行う、言うなれば補講のような役割を持つ授業ということだろうか。


 いや、ロアとアルニカは剣術の成績は極めて優秀だ。リオはロア達と違って槍術だが、彼女も優秀な成績だと聞く。(他の科目は遅刻と居眠りのしすぎで落第寸前だが)

 それに、ここにいる他の三人の生徒も剣術の成績は悪くはなかった筈だ。

 では一体、どういうことなのだろうか? 


「まあそう騒ぐな、とりあえず俺の話を聞け」


 ざわめく生徒たちにそう告げて、ヴルームは再びチョークを手に取り、黒板に書き始めた。

 数秒後、ヴルームはチョークを置くとロア達の方を振り返り、トントン、と黒板を叩きながら、


「今日の剣術の授業の内容は、これだ」


 黒板に書かれていた内容は、


「三対三の団体戦……?」


 アルニカが、黒板に書かれた内容を読み上げた。







―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






【キャラクター紹介 13】“ヴルーム”



【種族】獣人族

【種別】犬

【性別】男

【年齢】35歳

【毛色】スカイブルー



 空色の毛並みを持つ犬型獣人族の男性。セルドレア学院の教師で、ロア達のクラス担任。

 教師という職業に誇りと信念を持っており、ロア達だけでなく、生徒からの信頼は厚い。

 担当科目は剣術とアスヴァン史で、遅刻や居眠りを繰り返すリオに手を焼いている。

 教師であると同時にアルカドール王国騎士団の副団長であり、ロディアスやイルトと同じくユリスに仕える身である。

 中でも団長のロディアスとは幼い頃からの仲で、共に「第一次アスヴァン大戦」を乗り越えた戦友。

 ロアを凌ぐ、「アルヴァ・イーレ」の達人。






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