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第17章 ~戦い~

 その時、ロアは何が起きたのかわからなかった。

 ラクルとカイルと共に薪割りをしていた時、いきなり遠方から大きな悲鳴がこだまし、何十人もの鎧に身を包んだ一団が村へと押し入り、家に火を放ち、そして村人を襲い始めた。


 ロアは暫く状況が理解できなかったが、

 ラクルの呟いた「アイツら……二日前のヤツらだ……!!」という言葉によって、全てを理解した。

 そう、あの一団こそがガルーフの言っていた一団なのだ。

 二日前にこのラータ村を襲い、家に火を放ち、畑を踏み荒らし、そして何十人もの村人の命を奪った一団なのだ。


 ロアの頭の中に、その光景が蘇る。

 先ほど見た、何の罪もないのに命を奪われていった数多の人々の墓標、そして、墓標の前で泣き崩れていた数えきれないほどの人々の姿。


「……くそっ……!!」


 ロアは歯を噛みしめる。彼の表情には、煮えたぎるような怒りが浮かんでいた。


「女子供、ジジイでも関係ない!! 一人残らず殺せ!! 根絶やしにするのだ!!」


 一団を率いているリーダーと思しき人物がそう怒鳴る。

 その男は周りの者がかぶっている物とは違う棘のような装飾のついた兜で顔を隠し、ボロボロの灰色のマントを纏っていた。


「……!! オイ、あのガキ共を殺れ!!」


 男が、手近にいた二人の部下へと命令する。その視線の先には、ロア達がいた。

 命令を受けた二人が、鞘から剣を抜き、ロア達の元へと歩み寄ってくる。


「!! ラクル、カイルを連れて逃げて!!」


 それに気づいたロアが、後ろにいたラクルへと告げる。


「え!? で、でもロアにいは……!?」


 ラクルは反論する。


「僕なら大丈夫、だから君は早く、安全な場所に!!」


 ロアは強めの口調でラクルへ命じた。この状況では、もはや議論をしている暇などなかったからだ。

 

「……わかった。行こう、カイル」


 ラクルはそう答えて、カイルの手を取り、駆けだした。それを横目で確認して、ロアは自分へと歩み寄ってくる二人の賊へと向き直る。


「大人しくしてろよガキ、すぐに済むから……」


 内の一人が剣を振り上げて、そう言いながらロアへと歩み寄る。


「なぁッ!!」


 その声と同時に、ロアの頭へと剣を振り下ろした。


「うぶッ!?」


 それと同時に、男の脇腹を凄まじい痛みが突き抜けた。「ご……ぼ……ッ!!」男は泡を吹きながら地面へと崩れ落ちた。


 男の剣はロアには当たらなかった。いや、当たるはずだったが、ロアが避けたのだ。

 そしてロアは、隙だらけになった男の側面へと周り、鎧が途切れた男の脇腹に向けて、肘を突き入れたのだ。


「……ガキ、少しはやるようだな」


 それを見たもう一人の賊の男が、ロアへと歩み寄る。

 ロアは、地面に落ちていた賊の男の剣をボールのように蹴り上げて、手に取った。彼は剣を構える。


「……? 貴様、それは一体何のつもりだ?」


 賊の男が言う。

 ロアの構えは、まるで賊の男を挑発しているようにも見えた。

 そもそもそれは「構え」と呼べるのか、ロアは攻撃してくれと言わんばかりに、両手を広げていた。


「そんなに死にたいなら、望み通りあの世へ送ってやる!!」


 男はロアに走り寄り、彼に剣を振るう。

 大振りの動作ではさっきのように隙を突かれると思い、男は小振りの動作でロアへと襲い掛かった。

 ロアは男の剣を受け止める。「ガキィィン……!!」と金属音が鳴り響く。

 男は即座に剣を弾き、今度は横から切りかかる。しかし、ロアはその攻撃も防いだ。


「この……ガキ……!!」


 男は何度もロアに切りかかるが、その剣がロアへ届くことはなかった。

 ロアは一瞬も表情を曇らせることなく、男の剣を受け流し、防いでいた。


 ロアと男では体格にも差がある、力の差だってある筈だ。

 だが、男が剣に込めた力は穴の開いた瓶に水を注ぐように全て受け流され、全くダメージになっていなかった。


「あの剣術……『アルヴァ・イーレ』か? あんなガキが、あのアルカドールの高等剣術を……」


 その戦いを見ていた賊のリーダーの男が、呟く。


「か…………ッ!!」


 二人目の男は、脇腹に剣の柄を突き入れられて、地面に伏した。


「……さあ、次は誰だ?」


 ロアはそう呟く。

 この小僧は只者ではない、賊の人間達はそう感じていた。ロアの周りに賊の人間達が集まり、彼に武器を向ける。


「お前達、手を出すな!!」


 その声が響く。賊の人間達を押しのけて、一人の男がロアの前へと出てくる。

 ボロボロのマントに、棘のような装飾が施された兜、賊のリーダーの男だ。


「このガキは、俺自らの手で葬り去る!!」


 そう言うと、男は纏っていたボロボロのマントを捨てる。


「いっ……!?」


 ロアの表情に、驚きが浮かんだ。その理由は、マントを捨てた男の姿。


 全身を鎧で固めていたのはいい、ロアが驚愕したのは、男の腕が四本もあったことだった。そして、男の両腰に二本ずつ、合計四本の剣が下げられていた。


「ハハハハハ!! どうした小僧、表情から余裕が消えたぞ!?」


 そう言うと、男は四本の腕で四本の剣を握り、鞘から引き抜く。


「……望むところだ!!」


 ロアも、剣を構えた。







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