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第9章 ~胸中~

「では彼らを……行かせたのですか!?」


 アルカドール城の一室に、その声が響く。

 声の主は若い男性、そして彼が声を向けていた相手は、


「ユリス様!!」


 アルカドール王国女王、ユリス。彼女は16歳の若さにして王位を継いだ少女だ。

 窓から眺めていた三日月から、男性の方へ視線を移す。シャラン、と彼女の首飾りが音を鳴らす。


「彼らしかいなかったのです、ロディアス……」


「し、しかし……!! 彼らはまだ三人とも14歳の子供ですよ!? あんな年端もいかない子供達に……」


 そこまで話して、男性は言葉を詰まらせる。

 この男の名はロディアス。アルカドール騎士団団長。ユリスの教育係であり、そして友人でもある。

 自分より年下の少女に敬語で話しているのも、立場上の理由からだ。


「ロディアス、ロアはただの子供ではありません」


 確かに知っていた。ロアが大人顔負けの天才的な剣術の持ち主だということも、彼が14歳の若さにして、高等剣術「アルヴァ・イーレ」を習得しているということも。

 しかし、剣術の腕があるからといって、闇の根源を断つ役割を負わせるのは、彼に世界の命運を背負わせるのは、あまりにも荷が重すぎるのではないだろうか。


「それに、ロアには仲間がいます。アルニカ、そしてルーノ……彼らはきっと、ロアを助けてくれます」


 アルニカ、ルーノ。ロディアスは彼らが幼かったころから二人を知っていた。

 アルニカは、優しさと強さを兼ね備えた少女で、他人のために自分が痛い思いをすることを決して厭わない子だった。

 ルーノはへそ曲がりだったが、ロアとアルニカとは種族の違いという壁を超えた仲だった。

 彼ら三人は、幼い頃から一緒にいた。三人で剣術の稽古に励んでいたこともあった。おそらくロア達は、自分には理解できない絆を持っているのだろう。


 ユリスは続ける。


「もしもの時の為に、イルトを彼らと同行させることに決めました」


「イルトを……!?」


 その名は、ロディアスはよく知っていた。ロディアスと同じく、ユリスに仕える獣人族の少年である。

 イルトは強い、彼はきっと、ロディアスとも互角に戦えるだろう。


「イルトが共にいれば、ロア達は大丈夫でしょう。そしてロディアス、私達にも成すべきことがあります」


「それは?」


 ユリスは再び、窓に視線を向ける。


「このアルカドール王国を……完全に復興することです」


 数十年前の大戦で、この国は弱っていた。兵が減り、民の心には戦争の傷跡が深く刻まれている。

 戦争で親や住む場所を失った子供も大勢いるのだ。


 もしも再び戦争が繰り返されるようなことがあれば、この国は滅ぶことになるだろう。その為にも、一刻も早くこの国を復興し、そして闇の根源を断たなくてはならない。


「(ロア……)」


 ユリスは心の中で、この国の、そしてこの世界の命運を託した少年の名を呼んだ。

 彼もきっと、どこかで三日月を眺めているのだろう。彼女は心中で、続ける。


「(……幼い頃、初めて会った時から思っていました。貴方こそが、きっと……)」






――――――――――――――――――――――――――――――――――







【キャラクター紹介 05】 “ロディアス”



【種族】人間

【性別】男

【年齢】35歳

【髪色】ココア・ブラウン



 アルカドール王国騎士団団長。

 ユリスの教育係として、イルトと共に彼女に仕えている。

 アルカドール王国騎士団団長の名に恥じない強さを持ち、使用する武器は主に長剣だが、弓や槍の扱いも得意とする。






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