スキル・スロット・ギャンブル
『いいかぁカケル。ギャンブルはクソだ』
そう言い残した親父はギャンブルで多額の借金を残しあの世へ飛んだ。母親は、パチンコに狂って男と寝て金を貰いそれをパチンコに還元する生活を送っており帰ってこない。
『なぁ、カケル!一万でいいから貸してくんね?頼む頼む!絶対当たるレースがあってさ、百倍にして返すから。な?な!いいだろ?』
小学校からの付き合いの友人が競馬にハマり、金を貸してくれとせがむ様になった。
……やっと親父の借金を返せるアテが出来た次の日だったっけ。俺の人生ギャンブルに呪われてんだなって確信した。……親父の借金は一つだけじゃなかった。つまり、俺が見ていた物は氷山の一角だったと言う事だ。
生涯働いても返せない。自己破産したって、何をするにしたって。やる気が無くなってしまった。全てがどうでもいい。人に振り回されてばかりのクソみたいな人生だった。
最後ぐらいはせめて、自分で終わらせようとホームセンターでロープを買った。そしてそれを首に掛け、乗っていた椅子を蹴る。途端に一瞬の浮遊感の後。
少し遅れて意識が落ちた。
『──に似てるかな?それとも僕だろうか』
『どうかな。どちらかと言うと私っぽいけど』
何だ?煩いな。俺の死体を発見した時の反応にしては違う様な気がするが、そこは気にしないでおこう。
『にしても可愛いな。食べちゃいたいぐらいだ』
目の前にいるこの男は、死体に興奮する特殊性癖の持ち主らしい。身体は何故か動かないが、興奮して顔が赤い男の顔が見える。必死に仰け反ったり抵抗しようと言う気はあっても体が言う事を聞かない。男の距離が一段と近づいて俺が貞操を諦めた時。
『近いわよ、ほらお母さんですよ〜』
もう一人、今度は女が男を退けると。俺を軽々と持ち上げ、赤ちゃんプレイを始めた。淡々と言ってはいるが、何を言っているのか俺自身分かっていない。
そもそも、俺は死んだ筈だ。
縄を掛けて首を絞めたあの感覚も、未だに脳にこびりついている。なのに、今俺はお母さんを名乗る女にあやされた後、下の世話をされている。もしかしたら上手く死ねなくて、精神的な病があると判断されてそういう施設か病院に来てしまったのかもしれない。だとしたら二人は医師か看護師か分からないが、下手に抵抗しない方が……いやしようにも出来ない。
ああ、そうか。動き回られると困るから固定されているのか。そう一人納得した。
あれから数年が経った。暫くは泣いたら飯が出る王様みたいな待遇を送っていたが、漸く言葉を喋られる様になって自由に歩く事を許可された。
それで此処が何処なのか調べるにあたり、驚愕の事実が明らかになった。
まず、俺の体が縮んでいた。と言うか、元の身体では無かった。鏡に見慣れた疲れ切った顔の成人男性の姿はそこには無く、ある程度整った顔の子供が代わりに映っていた。……恐らくだが、これは転生と言う物なのかもしれない。非現実的だが、死んだ筈の人間が再び生き返るのはそうとし表現の仕様が無いと思う。
それだけでも驚きなのに、もう一つ驚きをこの世界は俺に与えてくれた。この世界は、俺がいた世界とは別の世界らしい。俗に言う異世界転生をしてしまったらしい。剣と魔法のファンタジー世界に。
そして、沢山の魔物が待ち受け宝箱もあるダンジョン。そしてそれに対抗する神から与えられたスキル。それを使って攻略して賃金を得る冒険者がこの世界では定番の職業らしい。それに漏れず、今の俺の父親と母親も冒険者だったらしくどうやら俺もそうならなきゃいけない様だ。正直、冒険者として成り上がるのは運ゲーと聞いているので、あまり気が進まない。
スキルは六歳の時に神殿で神父づてに教えられるらしく、それによって冒険者になるかならないかの選択をするらしい。
で、問題の俺のスキルはと言うと。
【スキル・スロット・ギャンブル】
魔物からドロップする魔石を消費し、スロットを回し止まった面によって魔法スキル、もしくは剣術スキル及びそれ以外の適当なスキルがランダムで発動する。その発動は誰にも邪魔する事が出来ない。
ギャンブルじゃん。
どうやら、二度目の世界でも俺はギャンブルに呪われるのは変わらず。いや寧ろ悪化してる様だ。我が身に火の粉が降りかかってきてるからな。
そして今日。俺は冒険者として初めてのダンジョン攻略をする。このスキルがクソだと言う事を証明して、真っ当な職業に就こうと思う。パン屋さんとか薬屋さんが良いです。どうにかクソスキルであります様に!




