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訓練を終えて

 訓練予定を中断して基地に戻ってきたシンノスケ達。

 機体を降りたシンノスケはセイラに休憩するように伝えると、格納庫内にあるキッチンで簡単なサンドイッチをこしらえてフルーツジュースと一緒にセイラに差し出した。


「とりあえず、それを食べてから訓練再開だ」


 目の前に置かれた食事を見てキョトンとするセイラ。


「あのっ、食べた後だと・・・・」


 確かに食後間もない状態で激しい機動をしたり、身体に高いGを加えたりすれば胃の内容物が逆流して吐いてしまう可能性がある。

 その吐瀉物がマスクの中に詰まれば大惨事を巻き起こしてしまう。

 

 パイロットを養成するにあたり、飛行中の失神を防ぐために十分な栄養補給と、消化時間の確保について教養されるのだが、それでも飛行前に食事を摂らないというパイロットは多い。

 多くのパイロットはそれでも問題ないのだが、セイラのように小柄なパイロットは少し事情が違う。


「伍長のような体格だとエネルギー不足で高いGに耐えられずに力が抜けてしまうことがあるんだ。他の皆がやっているからといって、その方法が自分に合うとは限らない。ものは試しだ、この食事を食べたら消化のために休憩して、午後にもう一度飛んでみよう」


 教官にそう言われれば従うのみだ。

 セイラはシンノスケが作ったバターもマーガリンも塗らずに具材を挟んだだけのサンドイッチをゆっくりと時間を掛けて食べた。


 その後、しっかりと休憩を取り、日が暮れる前に再び離陸して訓練空域に向かう。


「それではもう一度、自分の限界だと思うところまで振り回してみろ」

「了解しました!」


 緩やかに旋回を始め、徐々にGを掛けていく。


「・・・クッ・・・フッ・・」


 まだ耐えられる。

 更に旋回半径を小さくするが大丈夫。

 セイラの限界が来る前にコックピット内に機体の耐G警報が鳴り始める。

 機体を捻り込ませて急降下。

 一気にマイナスGに持ち込んだ後に引き起こして水平飛行に戻る。

 自分としてはかなりキツい機動をした筈だが、どうにか耐えられた。


「・・・ハァ・・ハァ・・・あの、どうでしょうか?」


 恐る恐る後席のシンノスケに尋ねてみる。


「・・・あ〜、今のは俺も結構キツかった。飛行技術はともかく、今の機動に耐えられるなら実戦部隊でも問題ないだろう」

「本当ですか、ありがとうございます!」

「あくまでも、G耐性だけだぞ。空戦技能はまだまだこれからだ」

「はい、よろしくお願いします!」


 こうして初日の本格訓練は1つの課題をクリアして終了した。



 訓練を終えて自室に戻ったセイラは訓練内容のレポートを書き終えると、便箋を取り出して両親への手紙をしたためる。


【拝啓、ご両親様。

 飛行学校を卒業した私は前線基地に配属されての半年間の研修に入りました。

 お父さんもお母さんも私が軍人に、空軍のパイロットになることは反対でしたが、私は大好きな皆を、綺麗な大空を守るこの仕事に就きたいとの思いを叶えるために、ここで頑張りたいと思います。


 これから半年間、私の訓練を担当してくれるのは、基地のエースパイロット達から一目置かれる程のパイロットです。

 なんと、外人部隊の中尉さんなんですよ!

 外人部隊の隊員というと恐いイメージでしたが、中尉は見た目は少し恐いけど、とっても優しい人です。

 訓練学校を卒業した私はまだまだヒヨコで、一人前に飛ぶことはできないけど・・・ヒヨコは大人になっても飛べないか。

 ここで鍛えられて一人前のパイロットになりたいと思います。 


 今日から本格的な訓練が始まりましたが、正直いうと、この手紙を書いている今はクタクタで、今にも眠りに落ちそうです。

 明日は中尉の仕事の都合で訓練はありませんが、見学させてくれるそうなので、しっかりと学習したいと思います。 


 ごめんなさい、眠さの限界なので、今日のところはここまでです。

 今度、休暇をもらったら家に帰りますので、その時にはお母さんの特製野菜ゴロゴロシチューが食べたいです。

 それではオヤスミナサイ。

 お父さんとお母さんの可愛い娘、セイラより。


 追伸、今日の訓練の後に中尉が写真を撮ってくれましたので同封します。

 これから半年間、私の愛機になる訓練機のコックピットに乗る私です】


 セイラはペンを置くとベッドに倒れ込み、深い眠りについた。


 明日はシンノスケがスクランブル待機で、セイラも待機所に同行する予定だ。

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