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セイラの弱点

「そういえば、伍長のタックネームを決めてなかったな。学校の時にはどうだったんだ?」


 訓練を前にセイラのタックネームを決めていなかったことを思い出したシンノスケ。


「いえ、飛行兵学校の学生にはタックネームはありませんでした」

「そうか。まあ、本配備になったら改めてタックネームを決めるだろうから、研修期間中は好きに名乗っていいぞ」


 セイラは振り返ってシンノスケを見た。


「それでしたら中尉が決めてくれませんか?」

「俺が?伍長のタックネームを決めるのか?」


 突然のお願いに面食らうシンノスケ。


「はい、是非お願いします」


 確かに、上官が部下のタックネームを決めることはよくあることだが、それをセイラから頼まれるとは思っていなかった。


 意表を突かれたシンノスケは考え込む。

 シンノスケが所属する外人部隊のデビル中隊の隊員のタックネームは悪魔や魔物の名前が殆どだ。

 因みに、中隊長のブルーム大尉のタックネームはデーモンで、大尉の妻であり、大尉の機の後席でナビゲーターを務めるアリア・ブルーム中尉のタックネームはウィッチで、シンノスケはジョーカー。

 他にもガーゴイルやバンパイア等がいるが、それを踏まえて思案してみる。


「そうだなあ、・・・セイラ・・・セラ・・・セイレーンとか」


 セイラの名から思いついたセイレーン。

 船乗りを海の底に誘い込む魔女の名だ。

 途端にセイラの表情が明るくなる。


「セイレーン!素敵ですっ!私のタックネーム、セイレーンでいいですか?」


 嬉しそうな笑みを浮かべるセイラに気圧されるシンノスケ。


「あっ、ああ。伍長が気に入ったならいいんじゃないか」


 半ば適当に考えたタックネームだが、セイラが気に入ったのなら問題ない。

 こうして、セイラのタックネームがセイレーンに決まった。

 


 タックネームも決まり、整備員と連携しながら始動前の点検を進めるセイラ。

 

「電源、よし。各種計器・・・よし。えっと・・無線よし」


 1つ1つ慎重にチェックしていく。

 シンノスケも後席から確認しているが、その手順については問題ない。  

 学校でしっかりと学んできたのだろう。


「エンジン始動しまーすっ!」


 整備員の合図に従ってエンジンを始動させる。


「エンジン・・・よし」


 一通りの手順を済ませ、機体を滑走路の脇まで移動させてフラップや尾翼の動作確認を終えて離陸の準備が整った。


「伍長、いや、セイレーン。訓練を始めよう」

「了解しました。デビル03、セイレーンから管制塔。離陸準備が整いました」

『こちら管制塔、了解しました。ランウェイオープン。滑走路への進入を許可します』


 滑走路に進入したRF-98Tが離陸位置につく。


「デビル03、離陸許可を求めます」

『デビル03、セイレーン、了解しました。クリアードフォーテイクオフ』

「了解しました!」


 セイラはスロットルレバーを押し込んで機体を加速させる。

 十分に加速して機首上げ、RF98-Tはフワリと浮き上がった。


「上げ角よし、ギアアップ・・・」


 声を上げながら手順を進めるセイラ。

 機体はグングン上昇してゆく。

 

「・・・高度8千まで上がりました。訓練空域に向かいます」

「了解」


 本日は南東の海上にある訓練空域での基本的な飛行訓練の予定だ。

 飛行兵学校の資料には目を通したが、実際に見てみないことには始まらない。


 訓練を始め、先ずは初歩的な飛行から徐々に難易度を上げてみるが、セイラはどれもそつなく熟していく。

 当然といえば当然なのだが、実際に確認しておく必要がある。


 基本から応用までひと通りの飛行を確認したが、問題はない。


(慎重で正確だし、手順も滑らかだ。優秀な成績というのも納得だ)


 それならば、次の課題は弱点の見極めと克服だ。


「よし、伍長の実力はだいたい分かった。次の訓練に入る」

「了解しました!」

「それでは、高機動旋回、徐々にでいいから伍長の限界だと思うところまでGをかけてみろ」


 いきなりの高G訓練。

 セイラは気が滅入ってきた。

 昨日のような失態があったのだから当然だが、初日から苦手な課題だ。


「りょっ、了解しました!」


 機体を加速させながら旋回に入る。

 緩やかな旋回から操縦桿を引いて旋回半径を小さくして徐々にGを掛けてゆく。


「クッ・・・フッ・・・」


 段々とキツくなってきて、視界が狭くなってくる。

 思わずスロットルを緩めて操縦桿を戻してしまう。


「プハッ!・・・ハァ、ハァ。・・・すみません」


 自分でもメーターを見ていたが、実戦では、この程度のGに耐えられなければ生き残れない。


「まだまだだな。もう一度だ」


 シンノスケの指示に今一度気合いを入れなおす。


「はいっ、了解しました!・・・クッ・・・フッ・・・フッ・・・」


 再び高G旋回に入る。

 全身が押しつぶされそうになり、視界が狭まる。


「・・・グッ・・・もう少・・・あっ!」


 途端に視界が暗くなり、機体がバランスを崩す。


「・・・クッ!あっ・・・すっ、すみません!」


 意識消失の直前で慌てて機体を立て直す。

 これが限界だ。

 これ以上無理をすると本当に失神してしまう。


「まだまだこんなものではないぞ!ちゃんと飯を食っているのか?」

「はいっ!いえっ、あのっ、食べていません」

「えっ?食べてない?」

「はい、食べていません」

「何故?なんで食べてない?」

「あのっ、訓練の前に食事をすると吐いてしまう可能性があるので食べないようにしています」


 シンノスケは見落としていた。

 シンノスケが日課のランニングから戻った時、シンノスケの朝食が用意されており、セイラは訓練の準備を進めていたので、てっきりセイラは先に食事を済ませていたものだと思い込んでいたのだが、どうやらセイラはシンノスケの分の食事だけを用意して、自分は朝食を摂らなかったようだ。


「あ〜、訓練中断だ。一旦基地に戻ろう」

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