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やってきた飛行研修生

 シンノスケが訓練教官を引き受けて2日後。

 本日いよいよ飛行研修生が着任する。


 研修生が訓練に使用する機体も昨日のうちに格納庫に搬入された。

 RF-98T高等練習機。

 カイル空軍において実戦配備されていた制空戦闘機RF-98の複座練習機バージョンで、元となったRF-98は後継機への更新が進み、徐々に数を減らしているが、その性能は未だ一線級であり、実戦を退いた機体が練習機に改修されて戦闘機を目指す飛行兵の訓練や、各基地に配備されて訓練や基地間の連絡等に用いられている。


 研修生が使用する機体も、もともとエアベース23に配備されていた7機の中の1機で、この機体は研修期間が終了するまでの間は研修生の専用機として運用される予定だ。


 研修生の着任は午前9時の予定。

 シンノスケ自身は昨夜からの夜間哨戒任務を熟した後であり、基地に戻って来たのが午前2時で、報告やら諸々の片付けを済ませてベッドに入ったのが午前4時過ぎ。


 休むのがどれほど遅くなっても習慣的に午前5時30分には目を覚ましてしまうシンノスケだが、それでもまだボンヤリとしており、格納庫の隅にある簡易キッチンでコーヒーを淹れて漫然と過ごしていた。


 現在時刻は午前8時40分。

 普段は緊急時に備えて飛行服姿のシンノスケだが、研修生の着任ともあればケジメをつける必要があるので制服を着用している。

 正規軍の紺色の制服とは違い、黒を基調とした制服は外国人部隊専用の制服だ。

    

 コーヒーを飲みながら新聞を読むシンノスケ。

 任務を引き受けた際にうっかり研修生の情報を聞きそびれてしまったため、どんな人物が来るのか全く分からない。

 2時間程前に中型輸送機1機が到着したから、件の研修生は無事に着任したのだろう。

 シンノスケが住む格納庫にまもなくやってくるかと思っていたその矢先に格納庫のインターホンが鳴った。



 着任した研修生を出迎えるべく扉を開けたシンノスケは予想外の事態に思わず石化する。

 そこに立っていたのはキャリーケースを携えた年齢18、9歳程度の小柄な少女。

 予定されていた研修生は士官学校ではなく、飛行兵学校卒業だから、16歳で兵学校に入学して初期過程卒業まで2年間、順当にきたならば目の前の少女は18歳の筈だ。


「カシムラ中尉でしょうか?私は本日からこちらでお世話になるセイラ・スタア伍長です。よろしくお願いします!」


 空軍下士官の制服にベレー帽を被り、セイラ・スタアと名乗ったその少女は姿勢を正すとシンノスケに対して挙手の敬礼をする。


「あっ、ああ。カイル空軍外国人部隊所属のシンノスケ・カシムラ中尉だ」


 思わず姿勢を正して答礼するシンノスケだが、徐々に冷静さを取り戻す。


「こちらこそよろしく頼む。・・・って、しまった!てっきり男が来るものだと思ってここに居室を用意してしまった。急いで女性兵の宿舎の手配を・・・」


 慌てるシンノスケに対してセイラは首を振る。


「あっ、大丈夫です。こちらに住まわせてください」

「しかし、居室は個室を用意したし、生活に必要な最低限の設備はあるが、基本的に俺と2人での生活だぞ?」

「問題ありません。その方が研修に専念できます。それに、基地司令からも『中尉は優秀だが、生活面はズボラだから覚悟していけ』って言われてますし」

「ホーランドの親父め、覚悟って、そういうことじゃないんだよ・・・」


 肩を落とすシンノスケだが、こうなっては仕方ない。

 セイラもそれを希望していることだし、取り敢えず用意しておいた居室に案内することにした。

 馴染めなければ改めて女性用宿舎を手配すればいいだけだ。



 居室に案内して、3時間の身辺整理の時間を与えたシンノスケはその間にセイラが持参した資料に軽く目を通す。

 兵学校の成績は、同期生23人中6位。 

 まあ、優良な成績といっていいだろう。

 この資料を参考に明日からの訓練計画を立案しなければならないが、取り敢えずは後回しだ。


 シンノスケは内線電話の受話器を取ると基地の司令部に連絡する。


「デビル中隊のカシムラです。出動準備をお願いします。出動機はRF-98T、武装はフル装備で。離陸予定時刻は1230。訓練を兼ねた哨戒飛行です」


 離陸準備の手配をしたシンノスケはセイラを連れて一先ず飛んでみることにした。

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