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空軍中尉シンノスケ・カシムラ

職業選択の自由シリーズの新作です。

航空アクションですが、作者は飛行機好きなだけで航空力学等の知識もありませんので、細かいことは気にせずに気軽に読んでいただければ幸いです。

本作に登場する航空機は全て架空のものですが、現代の第2世代から第3世代の戦闘機の性能のものとなります。

因みに、登場人物名が私の他の作品とまる被りしていますが、ただの使い回しで、他の作品との関連はありません。

『・・・カイルWHQ(西部防空司令部)よりデビル02、状況を送れ。カシムラ中尉、ジョーカー!』

「デビル02からWHQ。現在ルドマン連邦戦闘機からの攻撃を受けている。敵の数は4。国際空域での通告なしの攻撃に対して正当防衛により2機は落としたが、残りの2機を振り切れない」

『こちらもレーダーで確認している。警告!さらに4機の編隊が近づいている。警戒されたし。アロー中隊所属のアロー21の編隊3機が応援に向かっているが間に合いそうにない』

「・・・了解。どうにか切り抜ける」


 これはとある世界の大空で繰り広げられる物語。


 カイル民主共和国はアーリエ大陸南端に位置している。

 農業と工業が発達し、東方と南方には資源豊富な海が広がる豊かな国だ。


 周辺国に目を向ければ、北方に隣接するアザリア民国とは同盟国として良好な関係を築いているものの、西のゼルモ山脈とその裾野に広がる大森林を隔てた先にあるルドマン連邦とは緊張関係にあり、国境付近での小競り合いが後を絶たない状況にある。

 両国共に戦争状態であるとの宣言はしていないものの、事実上の交戦状態にあるのが現状だ。



 カイル西部の防空を担うのはカイル空軍西方航空旅団。

 その最前線に位置する空軍基地エアベース23には攻撃戦闘機隊2個中隊、防空戦闘機隊2個中隊、輸送中隊、強行偵察小隊等の各飛行隊の他に、外国人志願兵によって編成された外国人部隊航空隊1個中隊14機が配備されている。

 

 カイル民主共和国における外国人部隊とは、所謂金で雇われた非正規部隊とは違い、カイル民主共和国の法と軍規により認められた準正規軍扱いの部隊だ。

 とはいえ、金で雇われて危険な任務を請け負っていることに違いはなく、基本的な給与体系は最低以下であり、正規軍の新兵にも劣る。

 しかしながら、軍から下命された任務やそれに伴う実績に対して支払われる報酬が彼等の主な収入源であり、その実力によっては収入が正規軍士官を大きく上回る隊員も珍しくない。


 隊員達はその収入をもって自らの装備を整え、困難な任務に挑む。

 当然ながら、航空機は高額であり、個人の収入で購入できるものではないが、外人部隊の隊員の装備購入に対しては、その実績に応じて軍からの補助が支払われる仕組みであり、隊員達は自らの腕と実績、そして命を天秤に掛けて日々を生き抜いているのだ。



 その外人部隊の副隊長を務めるのはシンノスケ・カシムラ中尉、作戦時のコールサイン『デビル02』、タックネーム『ジョーカー』。

 この日も軍本部から日常的に依頼される哨戒任務を請け負って領空や国際空域の警戒飛行を行っていたところでルドマン空軍の戦闘機から攻撃を受けたのである。


 戦争状態ではないとはいえ、両国の緩衝地域であるゼルモ山脈と大森林地帯や、南方の海の保有権を巡る空軍や海軍同士の小競り合いは日常茶飯事であり、そこでは常に命がけの戦いが繰り返されているのだ。


 つまり、シンノスケが敵機と空中戦を繰り広げるのも普段と変わらぬ日常に過ぎないのである。


「このままでは囲まれてしまうな。敵の増援が到着するまでに残りの2機を処理して離脱するしかない」


 敵機を振り切っての離脱を諦めたシンノスケは軽く息を吐き出すと、スロットルレバーを押し込んで機体を加速させると共に高機動旋回に入った。

 

 シンノスケが駆る機体である『ZF-A1制空戦闘機』はカイル空軍の制式採用機ではない。

 ある軍事大国の航空機メーカーが開発した試作実験機の中の1機であり、同国軍及びメーカーとカイル空軍装備部門の契約により試験と実戦データ収集を目的に供給された機体だ。

 強力な2基のエンジンと特徴的な前進翼を有するZF-A1は高機動戦闘を得意とするシンノスケとの相性が抜群であり、この機体でシンノスケは多大なる戦果を挙げると共に供給元を満足させるだけの実戦データを収集して提供している。


 追跡していた2機の敵機はZF-A1の急激な旋回に対応できず、シンノスケに容易く背後を取られると、1機は短射程ミサイルにより、もう1機は機銃により撃墜された。


「デビル02よりWHQ。残りの2機を撃墜した。増援が到着する前に離脱する。後はアロー21に任せる」

『こちらWHQ了解。後はアロー21が引き継・・・あ〜、その必要は無くなった。敵増援は反転した』

「了解。残弾も心許ない。本機はこれで警戒任務を切り上げて帰投する」

『了解。念のため、アロー21が周辺空域の警戒に入る。本日の中尉の実績は記録、報告の上で速やかに報酬を支払うので了解されたし』

「了解、よろしく頼む。以上!」


 シンノスケは機体を反転させると帰還の途についた。


 

 途中、アロー21の編隊とすれ違いながら、ZF-A1はエアベース23の管制空域に入る。


『エアベース23管制塔よりデビル02。現在滑走路は空いていますが、30分以内に着陸してください。それを過ぎると輸送機3機の離陸予定がありますので着陸は後回しになります』


 管制塔からの通信を受けたシンノスケはコックピット内で肩を竦めて笑う。

 30分以内と言われても、現在地からなら15分で着陸できる。

 失敗してゴーアラウンドしても30分までは掛からない。


(セシリア中尉は相変わらず真面目だな)

「了解。待つのは嫌だから20分以内に着陸します」

「よろしくお願いします。・・・あっ、それから基地司令から伝言です。カシムラ中尉は帰還したら基地司令の下に出頭してくださいとのことです」

「ホーランド准将が?・・・了解したと伝えてください」


 新たな任務だろうか?

 だとしても作戦本部を通さずに基地司令からの直接下命は珍しい。


 少しばかり嫌な予感を感じながら基地司令室に出頭したシンノスケ。


「中尉に1つ任務を依頼したい。期間は6ヶ月間、報酬は月に2万レトだ」

「6ヶ月?期間任務ですか?他の基地への派遣でも?」

 

 2万レトとは軍の下士官の基本給程度。

 任務の内容によってだが、その報酬が高いのか、安いのか判断がつき辛い。


 訝しげな表情を浮かべるシンノスケを見たホーランド准将はニヤリと笑う。

 

「いや、派遣任務ではない。中尉には明後日に当基地に配属される飛行研修生の育成を頼みたい」

「はっ?」


 突然の予想外の任務にシンノスケは絶句した。

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― 新着の感想 ―
第2世代戦闘機と言うとF105やMig21くらいまでで、 第3世代戦闘機と言うとF4やMig25くらいなので、 双発の前進翼はオーパーツすぎる^^。 機体名がオリジナルなためか技術レベルを判断し難いの…
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