第三十五話 戦争② ★
【side:キャメロン(第一軍中将)】
ベネディクト君、すんごい煽るじゃん。そんなに言っちゃったら…あーあ、お猿さん達が怒っちゃった。
敵が動き出してから各自持ち場につくんだよね。ってことはすぐ移動しないと。
「《瞬間移陣》」
はい到着っ。あれが私の相手ーーアスカム家ね。まずは油断せず、相手の力を調べよっかな。
「《天界陣》」
私の職業は陣聖、全てのスキルは魔法陣によって生成される。《天界陣》は探知系スキルで、《俯瞰把握》の上位互換。上空視点から索敵・魔力感知をすることができるの。
それで見た感じ、前の方にいるのは本当にただのお猿さんだね。ボス猿さんは後ろの方、か。
今回陛下からアスカム家は生かす必要なしって聞いてるし、サクサクやっちゃうか。
とりあえずはお猿さんの数を減らそうかな。こういう時には…っと。
「《星火連陣》」
お猿さん達を囲って、半球状に大量の魔法陣を展開。そこから火弾を大量に射出する。
「防御陣形、急げ!」
「魔法盾を展開しろ!」
「間に合わな…ギャァァァ」
「グハアッ!」
「死にたくないぃ」
うーん、思ったより死んじゃった。でもこれ以上手加減するのも…っと!
「《陣歩》」
足元に極小の魔法陣を展開しながら短距離転移を繰り返し、攻撃を避けていく。
《火矢》と《風矢》…結構な数飛んできたね。発射元は後ろの方ーーボス猿さん達かな。
あの辺に50人くらいまともなのが固まってるね。
お猿さん達も《星火連陣》の展開範囲外から向かってきてるし、ちょっと面倒だな。
うん、後ろの50人ちょっと以外は削っちゃおうか。
《陣歩》でチクチク攻撃を避けながらお猿さん達のド真ん中に移動して…
「《爆環陣》」
私の足元に小さめの魔法陣が浮き出、それがどんどん大きくなっていく。その大きくなっていく過程で円周上に爆発が巻き起こる。
ドン、ドォン、ドドォン…と、どんどん大きくなっていく爆発と一緒に、ギャーギャーとお猿さんが叫びながら死んでいく。
だいたいこれで4分の1位は削れたかな?…って、いやいや、なんで攻撃が続いてくるのさ!
味方が居ようがお構い無しかね。全くロクでもない奴らめ。
こりゃお猿さん達を一気に片付けなきゃ厄介だ。
「《蔓纏陣》」
地中から大量の根が生え、敵のお猿さん達に纏わりつく。
一旦動きを止めさせてもらえたし、このままトドメと行きますか。
「《無相殲滅陣》」
お猿さん達の足元に真っ黒の巨大な魔法陣が出現。5秒ほど廻り続けた魔法陣は、お猿さんと一緒に消滅した。
《無相殲滅陣》は魔法陣内の他魔法法則を反転させた上で、存在する全てをこの世界から剥離する大規模殲滅魔法。持っていかれるSPと発動までのタイムラグを考えなければとっても便利なんだけど、如何せんその2つが足枷すぎるんだよね。
正直こういう雑魚相手なら動きを止めて使えば良いしその後の戦闘も対してしんどくないから良いけど、ウチの将軍達相手には通じないかな。完全剥離できるのはレベル差50以上っていう縛り付きだから、それ以下だとダメージを与えるだけで終わっちゃうし。
てか数減らしすぎちゃったかな?ボス猿さん達すんごい怒ってるみたい。
さっきまで後ろの方でチクチク攻撃してきてたのに、もうこの場に残ってるのは私とボス猿さんたちだけ。
これで真っ向勝負ができそうだね。
「どんなインチキか知らんが、貴様のようなペテン師など魔法使いの風上にも置けん!その身を以てアスカムの力を思い知るが良い!!」
インチキ…ペテン師?あー、さてはお猿さん達が全滅しちゃったのが信じられないのか。
てか、言うだけ言ってこっちの言葉も待たずに攻撃し始めるのもいかがなものかと思うけどね。
次々に飛んでくる矢系統の魔法、使ってるのは20人くらいかなあ?
ずっとチクチクされるのもいい加減ウザいし、それしか芸がないなら退場してもらおっと。
「《多重展開:反射陣》」
回避をやめ、ボス猿さんたちの方へゆっくりと歩いていく。矢系魔法は降り続いているけど、その全ては身体に当たる寸前に《反射陣》によって跳ね返される。思った通り、攻撃魔法と防御魔法の切り替えが下手…というか魔法発動のスパンが長いから半分くらいはこれだけで脱落したみたい。
「《炎槍》」
「《氷槍》」
おっ、中々いいのが来たね。防御突破が込められた槍系の魔法は《反射陣》じゃ防げない。じゃあどうするか。
「《盾輪陣》」
跳ね返すんじゃなく、こっちも防御特化の魔法を使えば済む話。軌道から攻撃位置を予想し、そこに自動で展開していけば問題ない。
距離をとっていたボス猿さんたちは、遠距離攻撃では埒が明かないと気付いたのか距離を詰め始める。
最初に向かってきたのは5人。小手調べってところかな?
向かってくる5人のうち2人が飛び上がって、地・空からのクロスファイアを狙う感じだね。
「食らえ、《風刃》!」
「…《闇刃》」
上空2人は中距離魔法か。手数を増やしながら確実に当てる、良い使い方だ。
2人がこれなら、地上の3人は…
「《雷鎖》」
「《炎掌》」
「《氷爪》」
ま、近距離魔法だよね。流石魔法使いの名門、上手い連携で全ての攻撃が同じタイミングで命中するようにコントロールされている。こうなると一度で全てを対処するのは難しい…普通なら、の話だけど。
「《時緩陣》《解析陣》」
まずは上空に向けて《時緩陣》を展開して空中から放たれた魔法の着弾タイミングをずらす。
「《防連陣》《展域陣》《盾輪陣》」
《防連陣》によって《盾輪陣》を縦横に連結し、それを《展域陣》によって二重に拡張する。
これで地上3人の攻撃は防御成功。残る上空からの攻撃は、《解析陣》によって構築を分析して全く同じ魔法を撃ち返す、《演習陣》で相殺。
完璧に連携した魔法を防がれた5人は動揺を隠しきれない様子だ。
さてさて、反撃と行こうか。《陣歩》で5人とぐっと距離を詰める。
魔法使いの弱点ーーそれは当然、近接戦だ。でも私は第一軍中将。あの理不尽ゴリラ大将の相手をしてるから、近接戦は他の魔法使いより得意なんだよね。
「《魔装陣》《陣撃》…これで楽に死なせてあげる!」
《魔装陣》は魔力消費と引替えに自らの身体能力を上昇させる。それに加えて《陣撃》で一撃の威力を大幅に増加。
まず地上の3人。1人にアッパーをかましながら跳び、2人の頭を掴んで地面に叩きつける。
それだけで3人の身体は弾け飛ぶ。
空中に居る2人はそれを見て逃げようとするけど…逃がすわけないじゃんね。
頭を叩きつけたままのーー逆立ちの姿勢から腕の力だけで飛び上がり、上空の2人に追いついたところで身体を回転させて蹴りを入れる。
これで5人…残りは20人くらいかな。《陣歩》で一気に距離を詰め、同じ要領で残ったやつらを消していく。
当然魔法は飛んでくるけど、その全てを《陣撃》で相殺する。
残り7人になったところでボス猿さんが前に出てきた。
「ま、待ってくれ!降参だ…命だけは助けてくれ!」
「降参?もう?」
「貴様…いや、貴方様のような凄まじい力を持つお方がいらっしゃるとは知らなかったのです!どうか、どうかお助け下さい!」
「うーん、降参ねぇ。どうしよっかな」
残った7人の中にはいないね。やっぱり辺境軍団か。
陛下に無礼を働いたというアスカム家のやつがいたらそいつは生かして国に連れていくつもりだった。これは陛下じゃなく、テオドールの命令だ。
でもこの中には居ない…って事は生かす価値なし、かな。
「決めた。私と1つゲームをしない?」
「ゲーム、ですか」
「うん。7人いる事だしさ、君らで殺しあってよ。それに生き残った1人だけ考えてあげる」
「なっ、誰がそのような事を…ガハッ!?」
反論しようとした男の胸を氷の槍が貫いた。もちろん、やったのは私じゃなく…
「お、お父…様…?」
「私の為に死ぬのだ、光栄に思うが良いッ!」
ボス猿さんの仕業。聞く感じここに居るのは子供達?でもボス猿さんと歳が近そうなオジサンもいるね…兄弟とかその辺かな?
「アシュトン、貴様ッ!」
「黙れ!兄たるお前にも容赦はせん!」
やっぱり当たってたか。しかし本当に殺し合いをするなんてね…。そんな事は出来ない!って言って歯向かってくると思ってたんだけど。
まあ見てる分には面白いからいいや。実力が近い分、見応えがある戦いだ。躊躇している奴は1人、また1人と脱落していく。
最後に残ったのはボス猿さんとそのお兄ちゃんの2人。この2人の実力は拮抗しているみたいで、かなり長いこと戦っている。
一瞬の隙をついてボス猿さんが《氷弾》を当て、お兄ちゃんの足を止める。
そこに《氷槍》を撃ち、トドメを刺した。
見事勝利したボス猿さんは目の端を光らせながら私の方を振り返る。
「ハァ、ハァ…これで、助けてもらえるんだろう…?」
「うん?考えるとは言ったけど、助けるなんて一言も言ってないよ?」
「そんな…そんなバカな!」
「私は事実を言ってるだけ。何か間違ってる?」
「甥を殺し、姪を殺し、子を殺し、更にはずっと一緒に生きてきた兄にまで手をかけたのだぞ!貴様は悪魔か!」
「悪魔、ね…まあ言ってることは分かるよ。人は誰しも愛している人がいる。それは他の何にも変え難いものだよね」
「何を…!」
「でもさ…それを先に踏み躙ろうとしたのは君らだよ。陛下に…そして陛下が気にかけている民に危害を加えた。未遂に終わったとはいえ、許されることではないんだよ」
「それがどうした!結局は何も無かったではないか!」
「じゃあ今なんで戦争してるんだろうね?」
「それは…」
「戦争ってのはお互い大切なものへの気持ちを賭けて戦ってるんだ。どっちが重いかの勝負さ。それで言うと君の気持ちは随分と軽そうだ。私がもしさっきの君と同じ立場になったら真っ先に自分が死ぬ選択をするよ。それが出来ない…自分の命が大切なものの命より重いと思うような屑はーー死んで然るべきでしょ?」
「なっ…」
「そういう事で話は終わり。陛下に対する不敬、その身を以て償ってもらうよ……《天雷陣》」
天から降り注ぐ稲光。一瞬で目の前にいたボス猿さんは灰になった。
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