第三十四話 戦争① ★
いつもありがとうございます!
【side:ノーマン(特級冒険者)】
「ノーマンよ、良くぞ来てくれた!」
「お久しぶりです、シーグローヴ公爵。相変わらずお元気そうで」
「儂はまだまだ現役よ!今回のような調子に乗った新参者が調子をこいたら成敗してやらねばならんからな!」
チッ、ジジイがいつまでもギャーギャーとうるせえな。こんなジジイ、俺様の気に触れれば1秒もかからず瞬殺してやるってのに。生かしてもらってるだけ有難いと思えや。
「仰る通りです。私も微力ではございますが閣下のお力になれるよう全力を尽くす所存です」
「うむ。貴様が本気で戦えば新興国家など敵では無いわ!ガッハッハッ」
金しかねえジジイが随分とまあ偉そうなこって。まあ、俺様からすれば金ヅルだからこうして付き合ってやってる訳だが。
今回の相手はなんだったか、なんちゃら帝国って名前だった気がすんな。できたばっかの雑魚国家が王国に喧嘩売るとは、相当頭の悪い王だろうな。
こっちは頭数だけで20万もいる。それに加えて俺様と同じ特級冒険者も何人か加わってるハズだ。ほんでもって普段は出てこねぇ白の死神も参戦してるんだろ?
ちっと相手が可哀想に思えてくるぜ…まあ手加減はしてやらねぇけどな。
俺様が相手の半分くらいを削り倒してもっと有名になる。そうすりゃこの先貰える金がどんどん増えてくってもんだ。
グヒッ、考えただけで涎が出そうだぜ。
「…しかしいつになったら姿を現すのだ、奴等め。まさか今更腰を抜かして逃げた訳ではあるまいな!」
「そうかもしれません。我等は20万の大軍、弱小国家が見れば腰を抜かしてしまうでしょう」
「む、貴様もそう思うか。まあ逃げたのならば攻め入るだけのことよ!」
「そうですな。我々が先陣を切って叩き潰してやりましょうぞ」
「ガッハッハッ!我が精兵と貴様がいれば中央軍団などおらんでも勝負をつけられるだろうな!」
バカめ。中央軍団を舐めすぎだぜ。テメーが精兵とかほざいてる雑魚共よりよっぽど強いっての。
「おい、そこのお前!奴等はまだおらんのか!」
公爵に指名されたのはまぁ弱そうな雑魚偵察兵。確かにもう5分もしないうちに開戦時刻になる。それなのに兵士の一人も見えねえってのは可笑しな話だ。
「はい、奴等は未だ姿を…あっ!ちょうど今見えました!その数…えー…その…」
「何だ!ハッキリ言わんか!」
「…およそ30人、です」
「はあ?」
やべぇ、思わず素で喋っちまった。30人だと?そんな訳ねぇだろうがよ。いくら雑魚でも30人って…辺境の集落でももう少しいるぜ。
「貴様、巫山戯ているのか!」
「い、いえ、本当です!本当に30人ほどしか居ないのです!」
「そんな馬鹿なことはあるまい!…いや、伏兵がおる可能性があるか。おい、周囲に伏兵は!」
「…確認できません。この周辺は開けておりますから、隠れる場所もないはずです」
「ならば本当に30人だと?ガッハッハッ!この戦争、始まる前に勝ちが決まってしまったぞ!」
公爵がそう言うとどっと笑いが起こる。そりゃそうだ、いくらなんでも戦争に30人は無いだろ。笑いを通り越して呆れちまうぜ。
「ならば我等はさっさと村人30人を蹴散らして奴等の都に攻め入ってやるぞ!」
「「「オウ!!!」」」
戦いを前にして勝鬨をあげようかという勢いだ。俺様も混じってやるか…
「オールストン王国の皆様、お初にお目にかかります。私、バルトムント帝国第六軍大将、ベネディクトと申します。開戦前のご挨拶をさせていただきます」
敵陣の方から声が響いてくる。拡声の魔道具だな。
それを聞いたジジイも拡声の魔道具をもって応じる。
「我はオールストン王国軍総大将、シーグローヴ公爵である!見たところ貴様等は30人程度。降伏するのであれば命だけは助けてやる!」
「勘違いをさせてしまったのなら申し訳ございません。オールストン王国の皆様程度にこれ以上人数を割く価値が無かっただけの事です…降伏などいたしませんよ」
「何をッ…!!」
「皆様の方こそ降伏するなら今のうちですが、よろしいのですか?」
「小僧が…全軍、突撃ィ!!」
「「「オォォォォォ!!!」」」
ったくジジイめ、これじゃあ舌戦に負けたようなもんじゃねえか。まあ雑魚にここまで虚仮にされて腹立つのは分かるけどよ。
纏まりごとでに少し間隔をあけて方陣を横並びに組んでいた20万の大軍が一気に30人目掛けて突撃する。
対する相手は各方陣に1人いるかいないか。こりゃあ俺が戦うことは無ぇ…と思っていたその時だった。
ドゴォッ!
各所で響く炸裂音と共に突っ込んで行った歩兵が吹き飛ばされた。
「な…何事だ!」
ジジイの動揺は尤もだろう。こっちからすれば1分もかからず終わらせるはずの戦いだった。
それがどうか、聞こえてくるのは歓声ではなく味方の悲鳴。
何が起こってやがる。そう思って俺の前にいる公爵の手勢達、その先頭に目を凝らすと…
「何…だ、アイツは…」
右手にグラディウス、左手に円盾を持つ髭もじゃのチビが1人で立ち塞がってるじゃねえか。
グラディウスを振るえばにその先10m位までの味方は両断され、円盾を突き出せば周辺にいる味方は放物線を描きながら吹き飛んでいく。
それだけじゃねえ。時折地面から土の槍が生えて味方を串刺しにしたり、デカい手が生えて潰したり…。
「ノーマン!彼奴を何とかしろ!!」
「言われなくても!」
あいつを止めねぇとやべえ。他の所を気にする余裕もなく、後方にある本陣から飛び出して一直線に向かう。
こう言うやべえ時に限って要らねぇモンが見えちまうもんだ。未だに味方を葬り続けているバケモンは一滴たりとも汗を流していないどころか、息も上がってねえ。
吹き飛んできた味方の雑魚を踏み台にして飛び上がり、バケモンに向かってスキルを発動する。
「《無拍掌》!!」
俺様の《無拍掌》は発動の瞬間に呼吸も鼓動も停止させ、全闘気を拳に乗せて撃ち出す一撃必殺のスキル。レベル70になって進化した職業:拳聖で習得したばかりの技だ。発動には緻密な体内コントロールが必要になるが、その分威力は絶大。これまで大量の雑魚と戦っていたからコイツは油断してるだろう。
「《聖盾転輪》」
チラリと俺様を見たバケモンは円盾を突き出し、聞いたこともねぇスキルを使ってきた。
俺様の《無拍掌》が円盾に当たる瞬間、円盾から光の盾が展開したように見える。
「っクソが!」
訳わかんねぇ光の盾で俺様の攻撃が消されちまった。円盾を少し引いたバケモンは、俺に向かって引いた円盾を突き出す。
嫌な予感ってのか分かんねぇが、背筋が凍るような気配を感じて咄嗟に《真金剛身》を発動させる。
そしてその判断は次の瞬間、正しかったと証明された。
俺様の周りにいた雑魚共は上半身が消し飛び、俺もかなり後方まで吹っ飛ばされた。
クソが……。あれは俺様の《無拍掌》だ。盾から出てきたって事を考えると、さっきの攻撃は吸収されちまったってことか。
あー…やべえ。聞いてねぇぞ、こんなバケモンがいるなんてよ!
ゆっくりと俺様の方へ歩いてくるそのバケモンは、5m程離れたところで止まって口を開いた。
「お主、中々やるではないか。何者だ?」
チッ、中々やるだと?上から目線なのが気に食わねぇ…!
いや待て、ここで話をするのはチャンスか?
「…俺はノーマン、特級冒険者だ」
「おお、特級か!道理で他の者より強い訳だ。しかし特級というのはこの程度ではあるまい?ほれ、さっさと奥義を使わんか」
この野郎、完全に俺様の事を舐めてやがる。まあ安心しろよ、今からその奥義ってやつをお見舞いしてやるから。だがそれにはまだ少しだけ時間が必要だ。
「せっかちなチビだな。テメェこそ何モンだ!」
「儂はバルトムント帝国第四軍少将、ウーゴじゃ。覚えんで良いぞ、どうせお主はここで死ぬからの」
こっちの挑発は気にも留めねぇってか。だがいい、丁度こっちの準備が整ったぜ!
思いっきり地面を蹴り、相手の間合いに入る。そして時間をかけて練りに練った闘気を拳に乗せ…
「喰らえや!《破道閃撃》ィ!!!」
俺様の使えるスキルの中で最高の破壊力と速度を誇る《破道閃撃》。残る全ての闘気を拳に集中させて放つ一撃は音速を超え、対象物を木端微塵に打ち砕く。
いきなり放った一撃に流石のバケモンも反応できるはずがなく、俺様の拳が身体に触れ…
「《零光刃》」
「ぐっ…ぎぃぁぁぁぁ!!」
痛ぇッ…!!腕が…肘の先が燃えるように痛ぇ!!!
当たった…当たったはずだった!なのに気付いたら俺様の腕…肘から先が消えてやがる!
何されたか分かんねぇ…やべぇ、ダメだ、一旦退いて立て直し…
「特級と言えどもこの程度…期待外れだ」
急に五感が研ぎ澄まされたような感覚。周りの動きが全てスローモーションに見え、バケモンがボソッと呟いた言葉も聞き取れる。
そして脳内に流れ始める過去の記憶。
いや、過去の記憶じゃねえな…ゴチャゴチャしすぎてる。ロクでもねぇ酒飲みのオヤジとどこにいるのかも解らねぇオフクロ。そいつらが元々の冒険者仲間と一緒に俺様に手を振ってやがる。
これなんて言うんだっけか…あー、分かんねぇ。でもこんなことしてる場合じゃねぇだろ。
あのバケモンからとりあえず逃げねぇと。
あ?なんで俺様の胴体…?つーか首から上ねぇし…
痛ってぇな…何で地面に倒れてんだ?
あぁ…首、切られちまったのか。それでもう死ぬって訳かよ…。
戦場の端で轟く雷鳴。
そうだ、白の死神なら、コイツに……
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