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第二十一話 支部長② ★ 

いつもありがとうございます!

【side:アルバン(冒険者ギルドアリリオ辺境伯領支部長)】


  馬車は嫌いだ。ケツが痛くなるし、そもそもこの狭い箱に長時間閉じ込められるのが苦痛でたまらない。馬車に乗るくらいなら普通に馬に乗ってた方がマシだ。

  

  「もう、支部長。そんなに嫌そうな顔しないでくださいよ」


  俺に話しかけてきたのは向かいに座るメガネをかけた女。


  「言っただろ、ヘレナ。俺は馬車なんか乗りたくねえって」


  「しょうがないじゃないですか。私達は使者なんですから。我慢してください」


  「そもそもなんで使者なんか…」


  「そのくだりももう散々やったじゃないですか。私達が例の国から一番近い支部だったんですから」 


  「ハァ…めんどくせぇ。ただでさえデスクワークは嫌いだってのによ。ヘレナ、ヨゼフ、交渉系はお前らに任せるからな」


  「じゃあ支部長は何するんですか」


  「俺はハンコを押す係だろうが。責任者に仕事をさせるんじゃねえ」


  「いやいや、責任者だからこそですよ…」 


  このうるさいガキはヨゼフ。ウチの支部で事務をやってる。まだ21のガキだが、書類仕事は一番早ぇから連れてきた。

  そもそもこんな面倒な事になったのはバルトムント帝国とかいう訳の分からん国のせいだ。ウチにいきなり来て建国しましたなんぞほざきやがって。上に連絡したらすぐに使者として向かい、国を見定めて支部設置の交渉を行えとか言われちまった。まあ、情報収集して来いって事だよな…面倒くせぇ。


  馬車に揺られて4時間くらい経った頃。急に馬車の扉がノックされた。


  「何だ!」


  馬車の窓を開けると横を走る1人の冒険者が話しかけてくる。


  「アルバンさん、見えたぞ!多分…いや間違いない、あれが帝国だ!とんでもねぇ国かもしれねぇ!」


  「とんでもねぇって、何がだ!」


  「窓から見てくれ!」


  そう言われて窓から顔を出し、前方を見ると…


  「なん…だ、こりゃあ…」


  黒い城壁。だが、デカすぎる。遠目でもそのデカさが伝わってくる。こんな高さの城壁見た事ねぇ。更にそれよりも高く、多数ある塔。


  「どうしたんですか、支部長?」


  「…お前ら、気ぃ引き締めろ。どうやらやべぇ国に来ちまったみたいだ」


  「え?」


  「…窓から顔出して先を見てみろ」


  俺が言うと窓から顔を出す2人。そしてすぐに顔を引っ込めた。俺の方を真剣な眼差しで見つめる。


  「あれ、城壁ですよね?」


  「あぁ、そうだろうな」


  「あんなに巨大な城壁、見た事ありますか?」


  「無ぇ。ついでにあんなに塔が多くあるのも見た事ねぇ」


  「支部長、あの国はいつから…」


  「いつからあったのか、か?俺も気になってた所だ。1ヶ月前にクーヴェ森林地帯に行った時は間違いなく無かった。てことは、この1ヶ月の間に出来たんだろうな」


  「そんな事が可能なんですか?」


  「不可能だ、普通はな。普通の城壁ですら完成まで最低でも1年はかかる。だがあれはそれ以上の規模だ。どういうカラクリなんだか…」


  やべぇな。はっきり言って今すぐ引き返したい気分だ。未知って言葉は冒険者としてワクワクするが、それと同時に警戒すべきことでもある。

  それでも今回は使者だから引き返す訳にはいかない。まあ、常識的な相手なら使者を蔑ろにする事は無いだろうが…。


  悶々としている内に馬車の速度は下がり、やがて停止する。

  馬車の扉が開き、外で馬車を警護していた冒険者に下りるよう促される。


  渋々外へ出ると、さっき馬車の中から見た城壁が目の前に。俺の後から降りてきた2人の息を飲む音が聞こえる。

  そりゃそうだ。近くで見るとその巨大さが際立つ。思っていたよりも遥かに重厚な壁。城壁の上と尖塔に大量配備されている兵器の数々。それも見た事ねぇやつばかりだ。

  近付いて気づいた事だが、この城壁、かなり考えて造られている。尖塔の配置が特に厄介だ。()()()()()。俺は心の中の警戒レベルを最大限引き上げる。


  城壁に気を取られていて、前方に人がいることに気付いていなかった。

  城門の前でじっと俺たちを待っているそいつらを見た瞬間…


  「ッッ!?」


  俺は背中の大剣に手を掛けるのを必死に我慢した。俺の元冒険者としての勘が告げている…()()()、と。それは警護に当たっていた冒険者たちも同じようで、皆が冷や汗をかいている。

  今回同行を依頼したのはアリリオ辺境伯領を拠点とする二級冒険者パーティ【銀狼(シルバーウルフ)】と、三級冒険者パーティ【火の踊り子(ファイヤーダンサー)】。どちらも支部の中では指折りの実力派集団で、前回森林で行った大規模なモンスター討伐作戦にも参加していた。

  

  「アルバンさん…ヤバくねぇか?」


  視線は5()()から逸らさず、話しかけてきたのは【銀狼(シルバーウルフ)】のリーダー。俺と同じ大剣使いのコイツも、武器に手が行かないように抑えている。


  「落ち着け…って言っても無理だろうが、敵意は感じねぇ。こっちが仕掛けなければ何もしてこないだろうよ」


  敵意…というか感情が全く読めねぇ、白い仮面を着けた5人。武器は見当たらないが、確実に兵士ではある。鎧を纏ってるからな。

  しかし城門に超ド級のやべぇ奴が5人とはな、参ったぜ。コイツらは軍の中でもかなり上位の存在だろう。一般兵がこれ程の力を持ってる訳が無い。

  空気がピリつく中、5人の後ろから一人の男が現れた。双剣を背負い、片眼鏡(モノクル)をかけているその男は一見穏やかに見えるが。

  

  ヤバすぎる。


  白仮面の5人の更に上を行く強さなのがすぐに分かった。息が詰まる程の存在感(オーラ)。こうして相対しているだけで意識が飛びそうだ。ヘレナは顔を真っ青にして、膝を着いている。


  「おや、失礼。少々警戒し過ぎたようです」


  片眼鏡の男がそう言うと、先程まで溢れ出ていた存在感(オーラ)が霧散する。チッ、白々しいぜ。少々警戒なんてもんじゃねぇだろうが。


  「冒険者ギルドの皆様、ようこそいらっしゃいました。私は陛下より皆様をご案内するよう命じられております、ベネディクトと申します。以後お見知り置きを」


  俺達が使者だとわかってやがったのか。それに陛下からって事はかなり皇帝に近い身分の人間だな。軍の総大将って所か?


  「俺…いや私は冒険者ギルドアリリオ辺境伯領支部長、アルバンです。仰る通り、冒険者ギルドより使者として参りました」


  「アルバン殿ですね。他の方々は護衛ですか?」


  「護衛の冒険者パーティが2つと、俺の補佐が2人です」


  「なるほど、畏まりました。申し訳ありませんが、念の為身分を確認させていただいても?」


  「構いません。全員、ギルドカードを用意しろ」


  「あぁ、ギルドカードは不要です。我が国では効力がありませんので、()()


  「…では、どのように身分確認を?」


  「こちらの石にお1人ずつ手を触れてください。害のあるものでは無い事は保証します」


  そう言うと、後ろにいた白仮面が拳2つ分くらいの琥珀色の石を持つ。

  言われた通りに俺たち全員が手を触れるが、特に何かが起きた様子は無い。これだけで身分確認なんか出来るのか?…いや、未知のマジックアイテムの可能性があるな。


  「ご協力ありがとうございます。それでは皆様を迎賓館にご案内します。私が先導しますので、着いてきてください」


  馬車の俺たちを歩いて先導するのか?と思っていると、突如ベネディクトとかいう男の横に黒い穴が。その中から現れた()()にまたしても驚愕する。


  「バカな…この大きさ…まさか、女神の風狼(フェンリル)…」


  俺の思わず漏れた独り言にその場にいた全員が目を剥く。


  「なっ…!?アルバンさん、こんな時に冗談を…」


  「冗談じゃねぇ。まあ俺も実物を見るのは初めてだから、断言は出来ねぇが…」


  その姿は地下迷宮(ダンジョン)の深層にいると言い伝えられている女神の風狼(フェンリル)に酷似していた。いや、だがそんな筈ねぇ。ただの馬鹿デケェ狼だろう。というかそう思うことにしよう…


  驚く俺達を気に留める様子もなく()に跨ったベネディクト。

  


  「おい、準備しろ!俺達も出発するぞ!」


  相手を待たせる訳には行かない。馬車に乗り込み、ベネディクトについていく。


  「大丈夫かヘレナ?」


  「すみません…。あまりの存在感に息ができなくて」


  「僕も危なかったです…」


  「あれはしょうがねえ、正真正銘バケモンだ。…お前ら、マジで粗相には気をつけろよ」


  「気をつけろって…支部長が1番危なっかしいですよ」


  「あぁ?俺?」


  「自覚が無いところもヤバいですよ」


  「分かってるっての。しかし、本当にとんでもねぇ奴らだ。俺達が束になったとして、白仮面1人か2人を相手するのがやっとだろうな」


  「それほどですか…」


  「あぁ…は…?」


  ぼんやりと窓の外を眺めながら話していると、目を疑う光景がそこにあった。


  「どうしたんで…す…」


  不思議そうな顔をしたヘレナも話し途中で口を噤んだ。

  

  ()()だ。まさか、この規模で二重城壁だと?それに、さっきの城壁より更に高ぇ。ハァ…マジでもう帰りてぇな。

  今度は止まることなく城壁を通過すると、街が広がっていた。今まで見たどんな都市よりも一つ一つの家がデカくて綺麗だ。全部の家が芸術品みてぇだな。それに道も綺麗に整備されている。その証拠に、馬車で走っていても振動をほとんど感じない。

  


  「凄い…」


  ヨゼフは街並を見て目を輝かせている。まぁ無理もない、これ程綺麗な街は世界中どこを探しても無いだろう。まあ街ってより、帝国の中心だから帝都と言った方が良いかもしれないが。


  「支部長」 


  ヘレナの方を向くと、何故か冷や汗を流していた。まださっきのを引き摺ってんのか?



  「…民が、いません…。1人も見当たらないんです。こんなに家があるっていうのに…」


  「はぁ?そんな訳…」


  そこで俺が抱いていた違和感に気付く。それは()。普通、国の中心部であれば人で溢れかえり、賑わっているもんだ。それなのに、馬の蹄と車輪の音しか聞こえねぇ。確かに窓の外に民衆の姿はない。なんつー不気味な国だ。  

  最初の城門から数分、目的地に到着したらしく馬車は止まった。

  扉を開いて馬車から下りる。目の前にある明らかに豪華な建物も気になるが、それよりも目を離せない物が。俺は心の中で今日何度目か分からない溜息をつく。

  


  なんだよ、このクソでけぇ城は。

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