表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/34

第3話 寝室

 シャワーを浴び終えた二人は、めいめいベッドに腰かけた。


 シーツにはかなりの皺が寄っている。

 いったん床に入って、ひとしきり愛を交わし終えたところなのだろう。


 髪を丁寧に拭っているミナトに、レオンハルトが話しかけた。


「本当に色々と世話になっているな……。

 今までは考えもしなかったことが立て続けだ。」


 体を拭き終えたレオンハルトは素裸になり、シーツの中に入る。

 ミナトもタオルを床に落とし、こちらも素裸でシーツに潜り込んだ。


 そのまま彼女はレオンハルトに語りかけた。


「でも、ほら。前にも言ったよね?

『こんな程度じゃお礼にならない』って。

 確かにお礼とかそう言うのはもう通り越しちゃってるけど、やっぱりレオンに悦んでもらえるなら、あたしもとっても嬉しいから。」


「そうか……。」


 ランプの灯りを細め、部屋を暗くするレオンハルト。

 月明かりがカーテンの隙間から差し込むのが解る。


 ミナトがレオンハルトの胸にしなだれかかってきた。


「えっと……。」


 もごもごと口ごもるミナトを見て、レオンハルトは首を傾げた。


「どうした?」


 ミナトのしなやかな栗色の髪を優しく撫でながら、レオンハルトは尋ねる。

 ややあって、ミナトはおずおずとした口調で彼に言った。


「あのさ……あなたの子供の頃の話を聞きたいの。

 色々とイヤなコトばかりだったんだろうから、無理にとは言わないよ?

 でも……できれば、あなたのことできるだけ知っておきたいから……。」


 弱々しくなっていく語尾を聞き、レオンハルトは苦笑する。

 上目遣いに表情を窺っているミナトに、彼は静かに答えた。


「そうだな。君には知っておいてもらいたいこともある。

 だが、今ここで話すには長くなってしまうからな。

 幸い明日は学術院全体で休みになる。

 ひと眠りしたところで、ゆっくり話そう。」


「ホントにいいの……?」


 再びミナトがおずおずと尋ね返す。

 レオンハルトは苦笑の表情を崩すことなく、再び口を開いた。


「構わんさ。

 それに父さんにも聞いてもらいたいということも多分にある。」


「お義父さんに?」


「ああ。確かに憎しみはなくなった。

 だが、苦労させられたことに対しての恨みはそれなりに残っている。

 少しは当て付けておかないと、全部が全部終わらせるわけにはいかんのでね。」


 それだけ言うと、レオンハルトはミナトと唇を重ね、そのまま枕に頭を預けた。

 ミナトも苦笑いをして、シーツを肩まで引き寄せる。


 ゆっくりと更けていく夏の夜。

 月明かりが煌々と帝都を照らしていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ