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第2話 食事

「はい。スパイスシチュー。

 あと、ジャガイモとソーセージの炒め物にザワークラウト。

 いつ帰るかわかんなかったから、手の込んだものは作れなくて……。」


 しょんぼりとした表情で、ミナトは皿を差し出した。

 炒られたスパイスの香りが鼻をくすぐる。


 満足そうな笑みを見せ、レオンハルトはミナトに労いの言葉をかけた。


「いや、このシチューはいつ食べても大当たりだ。

 流石は得意料理だけあるな。」


 ミナトの表情がはにかむようなものに変わる。

 そんな彼女の様子を楽しむような微笑みを、レオンハルトもまた見せていた。


 レオンハルトがシチューを口に含むと、その芳香が鼻を駆け抜け、さわやかな香ばしさでいっぱいになった。

 同時に舌と喉は適度に加減された辛味と、計算された旨味で刺激され、得も言われぬ幸福感に包まれる。

 具材のニンジン、ジャガイモ、角切りの豚バラ肉などなども、スパイスによる味付けで本来の味に膨らみが加わり、食感と味の両方でさらに味覚を刺激する。


 スパイスのせいだろう。気づけばレオンハルトの額には汗が浮かんでいた。

 それを見たミナトは、レオンハルトへ手拭いを差し出す。


「ありがとう。

 このシチューを食べると、代謝が上がるのがよく解る。」


 汗を拭き終えたレオンハルトが笑いながら言った。

 そのままパンの籠に手を伸ばし、黒パンを二つほど手元の皿に取り分ける。

 続けて付け合わせを、同じ皿へと盛り付けた。


 塩と胡椒でシンプルに味付けしたジャガイモとソーセージの炒め物。

 程よい酸味のザワークラウト。


 どれ一つとっても、数ヶ月前には味わう事の出来なかった味覚の競演。

 レオンハルトはその幸せを、文字通りに噛みしめていた。


 満足そうに食事を続けるレオンハルトを見たミナトは、安堵のため息をついて、棚の中からポルトワインを取り出した。


「レオン。お酒、付き合うよ?」


 二つのグラスの脚を指で挟んで、優しい声をかけるミナト。

 ひとしきり食事を終えたレオンハルトは、そんな彼女へと手を差し出し、グラスを一つ受け取った。


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